ベルガモットの空言

小春佳代

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玉座

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私の心を取り囲む世界は
私が侵おかされている
中毒の集合体でできている

その中毒ひとつひとつはまるで
私の体の何百倍もある
パステルカラーのクッション

色と色が敷き詰められた空間で
小さな私は
おしりからあっちで跳ね
うつ伏せでこっちで跳ね
様々な中毒のクッションに保護されている



ふと見上げると
この淡い世界の一番高い位置で
玉座に君臨しているのは
紛れも無いあなただ

あなたは時折
私にとっての恵の雨のような言葉を降らせ

何の躊躇ためらいもなく
想像の及ばない遥か彼方の国に雲隠れ

待ちわび過ぎた頃に
長い階段を降りて来て私の手に口づけをする

あぁ、私の王様
途方もないほど自覚のない王様

私、あなたに多くは頼らないって
決めたんですよ?



外の世界では今日もまた
頭を使って
気を遣って
体を酷使する仕事のルーティーン

内の世界では「ただいま」と同時に
中毒のクッションへダイブ

安定的な素晴らしさにもだえ転がりながら
今日を気持ち良く終えるために
浅い吐息と共に目を閉じる

あぁ、こんなにこんなに最高なのに
クッションだけに心が占められている時間は
感覚的に淡雪の存在時間と
さして変わらないのではないか

外の世界では雪がちらつき始め

内の世界では頭上にちらつく玉座は永遠に消えない
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