39 / 56
悪役令嬢、怒る
しおりを挟む
「きみ、誰に手をあげてるの?」
冷ややかなカイル様の声に、メイソンの悲鳴が重なる。
脂汗も出てるし、本気で折れるのでは?
「女性にあげるような手はいらないよね?折ってもいいね?」
「イダダダダダダ。やめっ、やめろっ!折っていいわけがあるかっ!」
「えー、でもきっときみのお父上も折っていいと言うと思うよ」
あー。確かに。
メイソンの父親である騎士団長のワイアット侯爵なら、腕どころか首を折りそう。
いや、まぁ、首折ったら死んじゃうけどね。
騎士団長は、息子だからと甘い処罰はしない。
むしろ、息子にこそ死ぬほど厳しい。
よくまぁ、あんな超絶真面目で素晴らしい人から、メイソンみたいなのが生まれたわよね。
ラノベにはほとんど出てはこなかったけど、奥様もメイソンを甘やかすタイプの人じゃなかったはず。
もちろん、ラノベ通りとは限らないけど。
「痛いっ!折れる!折れる!やめろっ!」
「人に物を頼む態度じゃないなぁ」
「やめっ・・・やめてくださいっ!」
ギリギリと、締め上げられた腕が、あと少し力を入れたらボキリと行きそうなところで、メイソンの泣きが入った。
カイルがポイっとメイソンの腕を離すと、メイソンはその場にうずくまった。
「言っとくけど、次はないよ」
「くそッ」
「反省してないなら、今から折っても良いんだよ?」
「お、覚えてろっ!」
負け犬の捨て台詞を吐いて、メイソンが逃げていく。
どこのチンピラだ、アンタは。
この場に残っているのは、私とカイル、それからシシリー様にマリアンヌ様。
そしてエイミとかいうヒロインもどき。
そのヒロインもどきは、カイルのことをうっとりした目で見ていた。
「かぁっこいい~!カイルさまぁ。私、エイミって言いますぅ」
「・・・シア。怪我してない?」
「大丈・・・」
「あのぉ!お茶でもご一緒しませんかぁ?」
バシッ!
「触るなっ!」
カイルが、ヒロインもどきの伸ばしてきた手を叩き落とす。
「いたぁい!ひどいですぅ、カイル様ぁ。ほら真っ赤になっちゃいました。責任とって医務室に連れてってください」
「貴女、先ほどから誰の許可を得てカイル様のお名前を呼んでいますの?」
「え?あっ!悪役令嬢のアナスタシアっ!」
悪役令嬢ね。
転生者の方だったか。
「公爵令嬢であるアナスタシア様のお名前を、勝手に呼び捨てで呼ぶだなんて!」
「あなた、誰ですか?カイル様ぁ。早く連れてってください~」
「私の大切な婚約者に触れないで下さい!」
今度はカイルに伸ばされた手を、私が叩く。
ふざけないで。
カイルは私のなんだから!
冷ややかなカイル様の声に、メイソンの悲鳴が重なる。
脂汗も出てるし、本気で折れるのでは?
「女性にあげるような手はいらないよね?折ってもいいね?」
「イダダダダダダ。やめっ、やめろっ!折っていいわけがあるかっ!」
「えー、でもきっときみのお父上も折っていいと言うと思うよ」
あー。確かに。
メイソンの父親である騎士団長のワイアット侯爵なら、腕どころか首を折りそう。
いや、まぁ、首折ったら死んじゃうけどね。
騎士団長は、息子だからと甘い処罰はしない。
むしろ、息子にこそ死ぬほど厳しい。
よくまぁ、あんな超絶真面目で素晴らしい人から、メイソンみたいなのが生まれたわよね。
ラノベにはほとんど出てはこなかったけど、奥様もメイソンを甘やかすタイプの人じゃなかったはず。
もちろん、ラノベ通りとは限らないけど。
「痛いっ!折れる!折れる!やめろっ!」
「人に物を頼む態度じゃないなぁ」
「やめっ・・・やめてくださいっ!」
ギリギリと、締め上げられた腕が、あと少し力を入れたらボキリと行きそうなところで、メイソンの泣きが入った。
カイルがポイっとメイソンの腕を離すと、メイソンはその場にうずくまった。
「言っとくけど、次はないよ」
「くそッ」
「反省してないなら、今から折っても良いんだよ?」
「お、覚えてろっ!」
負け犬の捨て台詞を吐いて、メイソンが逃げていく。
どこのチンピラだ、アンタは。
この場に残っているのは、私とカイル、それからシシリー様にマリアンヌ様。
そしてエイミとかいうヒロインもどき。
そのヒロインもどきは、カイルのことをうっとりした目で見ていた。
「かぁっこいい~!カイルさまぁ。私、エイミって言いますぅ」
「・・・シア。怪我してない?」
「大丈・・・」
「あのぉ!お茶でもご一緒しませんかぁ?」
バシッ!
「触るなっ!」
カイルが、ヒロインもどきの伸ばしてきた手を叩き落とす。
「いたぁい!ひどいですぅ、カイル様ぁ。ほら真っ赤になっちゃいました。責任とって医務室に連れてってください」
「貴女、先ほどから誰の許可を得てカイル様のお名前を呼んでいますの?」
「え?あっ!悪役令嬢のアナスタシアっ!」
悪役令嬢ね。
転生者の方だったか。
「公爵令嬢であるアナスタシア様のお名前を、勝手に呼び捨てで呼ぶだなんて!」
「あなた、誰ですか?カイル様ぁ。早く連れてってください~」
「私の大切な婚約者に触れないで下さい!」
今度はカイルに伸ばされた手を、私が叩く。
ふざけないで。
カイルは私のなんだから!
566
お気に入りに追加
640
あなたにおすすめの小説
気配消し令嬢の失敗
かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。
15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。
※王子は曾祖母コンです。
※ユリアは悪役令嬢ではありません。
※タグを少し修正しました。
初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン
虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
悪役令嬢と転生ヒロイン
みおな
恋愛
「こ、これは・・・!」
鏡の中の自分の顔に、言葉をなくした。
そこに映っていたのは、青紫色の髪に瞳をした、年齢でいえば十三歳ほどの少女。
乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』に出てくるヒロイン、そのものの姿だった。
乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』は、平民の娘であるヒロインが、攻略対象である王太子や宰相の息子たちと交流を深め、彼らと結ばれるのを目指すという極々ありがちな乙女ゲームである。
ありふれた乙女ゲームは、キャラ画に人気が高まり、続編として小説やアニメとなった。
その小説版では、ヒロインは伯爵家の令嬢となり、攻略対象たちには婚約者が現れた。
この時点で、すでに乙女ゲームの枠を超えていると、ファンの間で騒然となった。
改めて、鏡の中の姿を見る。
どう見ても、ヒロインの見た目だ。アニメでもゲームでも見たから間違いない。
問題は、そこではない。
着ているのがどう見ても平民の服ではなく、ドレスだということ。
これはもしかして、小説版に転生?
皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~
桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」
ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言?
◆本編◆
婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。
物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。
そして攻略者達の後日談の三部作です。
◆番外編◆
番外編を随時更新しています。
全てタイトルの人物が主役となっています。
ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。
なろう様にも掲載中です。
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる