上 下
33 / 56

ヒロイン、戸惑う

しおりを挟む
 何故か私のいるテーブルに来られた王太子殿下。

 私のいるテーブルには、アナスタシア様のお兄様であるジュリアン・アデライン様や、その婚約者のエリザベス・スカイラー侯爵令嬢様がいらっしゃるし、マリアンヌ・シンプソン侯爵令嬢様もいるからかしら。

 そう思っていたのだけど、色々と学園での勉強のことや、聞いて来られる。

 いえ。
別に嫌ではないのだけど、公爵令息様や侯爵令嬢様たちを差しおいて、私とばかりお話していていいのかしら。

 だけどダミアン王太子殿下はお話上手で、お話していてとても楽しい。

 そんな時、突然後ろで悲鳴が聞こえて・・・

 バシャ!

 私のドレスに茶色いシミが出来た。

「ご、ごめんなさい」

「!」

 謝罪されたけど、王太子殿下は火傷を心配してくださったけど、そんなことより。

 このドレスは、王家の離宮で行われるお茶会に参加できるようなドレスを仕立てられない私に、アナスタシア様が用意して下さったドレスなのに!

 アナスタシア様は、本当に女神のように慈悲深いお方。

 学園のクラス分けは成績順なので、Aクラスにも私のように下位の貴族令嬢も半数くらいいる。

 むしろ下位の貴族の方が、良い嫁ぎ先を見つけるためや、卒業後の就職のために勉強を頑張る傾向にある。

 学園を良い成績で卒業できれば、文官や王宮勤めとかが出来る可能性が上がるもの。

 王太子殿下に手を引かれ、使用人の方に案内していただいて、離宮内にある建物に入る。

 お茶会は庭園で行っていたのだけど、庭園に程近い部屋に案内された。

「王太子殿下。どちらのドレスをお選びになりますか?」

 え?王太子殿下ドレスを着るの?

 真っ青な青空のようなドレスと、私の髪より淡いピンク色のドレス。

「こちらの青いドレスを」

「かしこまりました。それでは、扉の外でお待ちください」

 使用人の方が頭を下げると、王太子殿下はそのまま部屋を出て行かれた。

 え?
私が着替えるの?

 確かに紅茶のシミの付いたドレスを着たままではいられないけど、でも・・・

「紅茶のシミ、取れるでしょうか?」

 私の着替えを手伝ってくれる使用人の方に尋ねると、申し訳なさそうに首を振られた。

「やってみますが、淡い色のドレスなので難しいかと思われます。お嬢様のご指示後に汚れた部分を処理して、平民の方への寄付になると思われます」

 アナスタシア様は、高位貴族としての義務として孤児院への訪問や寄付をされている。

 本当に素晴らしい方。
アナスタシア様ほど、王太子妃王妃に相応しい方はいないと思う。

 ローレンス公爵令息様がいらっしゃるから、そんなこと口には出来ないけど。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

気配消し令嬢の失敗

かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。 15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。 ※王子は曾祖母コンです。 ※ユリアは悪役令嬢ではありません。 ※タグを少し修正しました。 初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

悪役令嬢と転生ヒロイン

みおな
恋愛
「こ、これは・・・!」  鏡の中の自分の顔に、言葉をなくした。 そこに映っていたのは、青紫色の髪に瞳をした、年齢でいえば十三歳ほどの少女。  乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』に出てくるヒロイン、そのものの姿だった。  乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』は、平民の娘であるヒロインが、攻略対象である王太子や宰相の息子たちと交流を深め、彼らと結ばれるのを目指すという極々ありがちな乙女ゲームである。  ありふれた乙女ゲームは、キャラ画に人気が高まり、続編として小説やアニメとなった。  その小説版では、ヒロインは伯爵家の令嬢となり、攻略対象たちには婚約者が現れた。  この時点で、すでに乙女ゲームの枠を超えていると、ファンの間で騒然となった。  改めて、鏡の中の姿を見る。 どう見ても、ヒロインの見た目だ。アニメでもゲームでも見たから間違いない。  問題は、そこではない。 着ているのがどう見ても平民の服ではなく、ドレスだということ。  これはもしかして、小説版に転生?  

皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~

桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」 ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言? ◆本編◆ 婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。 物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。 そして攻略者達の後日談の三部作です。 ◆番外編◆ 番外編を随時更新しています。 全てタイトルの人物が主役となっています。 ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。 なろう様にも掲載中です。

悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。

倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。 でも、ヒロイン(転生者)がひどい!   彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉ シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり! 私は私の望むままに生きます!! 本編+番外編3作で、40000文字くらいです。 ⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ

奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。  スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな

処理中です...