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最終章

あなたが何者であっても

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 私は、何をどう言えば良いのか分からず、ただイヴァン様を見つめることしか出来なかった。

 魔法結界の張られた王宮に、突然現れた子供。
 転移魔法の形跡は見られず、明らかに『普通』ではない少年。

 それを受け入れてくれたのは、魔法師長であり、国王になるべく国に戻ったアルフレッド陛下だった。

 自分は貴族ではないから、王女の私には相応しくない。

 イヴァン様は、そうおっしゃっているのね。

 ふふっ。
変なの。最初は、私がイヴァン様に相応しくないって話だったはずなのに。

 嫉妬することで、嫌われるんじゃないかって不安だったはずなのに。

 また殺されるのではと不安だったはずなのに。

 いつの間にか、不安なのはイヴァン様になってる。

 自分が何者かわからないんだもの。不安なの、当たり前よね。

 魔法師長様やアルフレッド陛下には、イヴァン様が国に害をなすんじゃないかって懸念はなかったのかしら。

 私は・・・

「自分が、誰かをこんなに好きになるなんて思わなかった。今まで誰かに惹かれたことも、執着したこともなかったから。だって僕は人間じゃないかもしれない。そんな僕に好かれても、一緒にはなれない。だけど、レティのことだけは駄目なんだ。君が欲しくて仕方がないんだ」

「イヴァン様」

「ごめん。分かってる。自分でも無茶苦茶だって」

 そうね。
貴族でないのなら、王女の降嫁先には相応しくない。

 イヴァン様が魔物や人に害なす存在だとは思えないけど、危険がある限りファンブルク王国では暮らせない。

「学園を卒業するまでで良い。もう少しだけレティのそばにいさせて欲しい」

「その後は、サウスクラウド王国に戻られるのですか?」

「サウスクラウド王国には戻らない。元々、成人したら国を出るって決めてたんだ。婚約とか申し込みが出てくるから・・・」

 ああ。
貴族でないことも、何者か分からないことも、魔法師長様やアルフレッド陛下しかご存知ないのね。

 だから、婚約の申し込みが来そうだからファンブルク王国へ来られた。

「学園を卒業したら・・・」

「うん」

「一緒に他の国を旅しましょうか」

「え?」

 私が過去に殺されてきたことも、そのことに誰かの思惑があることも、全部イヴァン様にお話しよう。

 だって、私がこの人と離れたくないんだもの。

 この人が何者であっても、好きなんだもの。

「私はイヴァン様が何者であっても、あなたのことをお慕いしております。ただ王女として降嫁することはできませんから、王籍から抜いて貰わなければなりませんけど。平民同士なら、どこへでも行けますわ。贅沢はできないでしょうけど」

 魔法も少しは使えるようになったし、冒険者になれたりするかしら。
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