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最終章

婚約者ごっこは終わりでは?

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 チェリー様・・・もうチェリーさんでいいわよね。
 彼女が去って、学園には平穏が訪れた。

 彼女の愚行を見て、しかも結末まで知ったご令嬢たちは、学業と自分の将来に真面目に向き合い始めた。

 令息たちの目に留まるように自分磨きをするようになり、イヴァン様にすり寄るような行為は全くなくなった。

「ふふっ。災い転じて福をなすというやつですね」

「なに、それ」

「自分に降りかかった災いを、見方や立場を変えることで上手く活用して、自分の役に立つようにすることです。チェリーさんのことは面倒でしたけど、こうしてイヴァン様の学園生活は穏やかなものになりましたから、良かったなと思いまして」

 これで、私と婚約者のフリなんかしなくても、イヴァン様はのびのびと学園生活を送れるわ。

 そう続けたら、イヴァン様はどこか不服そうなお顔をされた。

「僕と婚約者してるの、そんなに嫌?」

「え?」

 嫌だなんて、私そんなこと言ってないわ。

 確かにイヴァン様はちょっと腹黒というか意地悪なところがあるけれど、私の周囲はラウルお兄様をはじめとして年上の方ばかりだから、同い年のイヴァン様とご一緒するのは楽しいわ。

 イヴァン様は、私が王女だからといって取り繕わない。平気で意地悪も言うの。

 でも、本当はとても優しい。

 私とアルフレッド陛下の婚約のことだって、本当は無視しても良かったのに、ジュリエッタ様との仲介をしてくださり、支えになって下さった。

 あの頃・・・
恋を知らない私は、アルフレッド陛下の手を取ることが出来なかった。

 ジュリエッタ妃殿下のように、愛妾になってでもアルフレッド陛下のそばにいたいと思えなかった。

 廃嫡されてでもキャス様と結ばれたいと願った、アズリル殿下のような愛を知らなかった。

 お父様やお母様、過去の公爵家のお父様たち、使用人のみんな、ラナやキャス様。
 好きな人たちはたくさんいる。

 だけど、この人でなければという、恋愛の好きを私はまだ知らない。

 イヴァン様のことは、魔法の先生として尊敬もしてるし好意も持ってるわ。

 だから嫌だなんて思ってない。

「前に聞いたよね。僕が他の令嬢をエスコートしても平気かって。あの答えって今聞いてもいい?」

 フロランス様のエスコートをお願いしようと思ったら、確かにそう聞かれたわ。

 あの時は、フロランス様から丁寧なご辞退をいただいて、リリアナお義姉様がロイド様にさせるっておっしゃったから、イヴァン様には私のエスコートをしていただいた。

 あの時、私は・・・

 イヴァン様が他のご令嬢の手を取り、微笑んでいるのを想像して、胸の奥がモヤっとしたの。




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