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やり直しの人生

そもそもの間違い

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「答え・・・合わせ?」

「そう。まずは名乗りましょうか?私はレティーナ・ファンブルク。王太子殿下であるラウルお兄様の五歳年下の妹よ。一応言っておくけど、養女とかではなく、血は繋がっているわ」

 ダウニー様の知っている乙女ゲームでは、存在しなかったらしいけど。

「そんな・・・バグ?」

「それがそもそもの間違いなのよ?気付いているかしら?」

「間違い?」

 転生ヒロインって、本当にラノベ通りに頭の中がお花畑なの?
 バグとか以前に、この世界が乙女ゲームそのものなわけがないじゃない。

 攻略対象と結ばれました。ハッピーエンドです。で終わった乙女ゲームの、その後は?

 学園が舞台なら、たった一年、長くても三年の攻略でしょ?
 この先、それの何倍何十倍もの時間を共に過ごしていくのよ?

 魅了魔法で攻略しても、離れたら薄れていく力だというのなら、仕事で離れたりすれば気持ちは薄れていくのじゃなくて?

「貴女、ここを物語の世界だとでも勘違いしているのではなくて?」

 さすがにみんなの前で、乙女ゲームの世界とかは言えないわ。
 私までおかしくなったと思われてしまうもの。

「ここにいる全員、もちろん貴女もだけど、この世界で生きているのよ?悪いことをすれば裁かれるし、思い通りにならないこともあるわ。失敗したからやり直しなんてボタンはないの」

「私・・・は、ヒロインで・・・」

「みんな自分の物語の主人公よ。貴女だけじゃないわ」

 大体、ヒロインだからって、何もかも自分の思い通りになると思っていることがおかしいのよ。

 そういう考え方って、乙女ゲームあるあるなのかしら。

「自分が主人公だからって、何もかも思い通りになるわけがないでしょう?だって、みんな台本通りの決まった台詞を言っているのではないのよ?」

「・・・」

「ねぇ、魅了魔法で思い通りにしても、離れたら力は薄れていくらしいけど、それでこの先どうしていくつもりだったの?離縁?仮面夫婦?確かに貴族は政略結婚が主だわ。でも、貴女はそれを良しとしていないんじゃなくて?」

 政略結婚でも、お互い信頼関係は築く努力はするわ。
 まぁ、最初の旦那様みたいな屑もいるけれど。

 ああ。あれは本当に屑だったわ。
政略結婚ってあんなハズレを引くこともあるってことだから、前世の自由恋愛を望むダウニー様の気持ちも分かるわ。

 でも、いわゆる『平民』だった前世と違って、この世界の私たちには責任があるの。

 その責任を負うからこそ、綺麗な服を着て、美味しいご飯を食べて、人に傅かれて暮らしていけるのよ。

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