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やり直しの人生

身分社会

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「僕もお供しよう」

 そう言って笑ったアルフレッド陛下は、それはそれはとてもお顔をされていた。

 なんていうのかしら。黒い笑みっていうの?何か企んでます的な笑み。

 それを素敵だと思ってしまうあたり、私も心が歪んでしまったのかしら。

 でも、仕方ないわよね?
四度よ。その環境で精一杯生きようと頑張っていたのに、四度も理不尽に殺されたの。

 綺麗で素直な心のままでは居られないわ。

 私とアルフレッド陛下が近付いてくるのを、お兄様たちが気付く。

 まぁ!お兄様の嫌そうなお顔。
そんなに私に、彼らに接触して欲しくないのね。

 お気持ちは分かるわ。
だってダウニー様が、うっとりとした顔でアルフレッド陛下を見てるもの。

 アルフレッド陛下は、とても整ったお顔をされているものね。
 しかも現在十八歳の陛下は、周囲の『子供』と違って、とても頼り甲斐のあるわ。

 ダウニー様が転生者で、それなりの年齢で転生したのなら、間違いなくアルフレッド陛下に惹かれるはずよ。

「レティー・・・」

「あのっ!はじめまして、私アンジュ・ダウニーって言いますっ!」

 お兄様の呼びかけに被せるように、ダウニー様がアルフレッド陛下の前へと歩み出る。

 肉食系女子なのかしら?
でも、ちょうどよかったわ。これなら、私がどうこうしなくても、陛下への不敬だけで処罰できそうね。

「ダウニー嬢!下がれ、不敬だ!」

「ダウニー様、身分の高い方に勝手に話しかけては駄目だとあれほど・・・誠に申し訳ございません」

 お兄様が叱責し、クレスト様が謝罪される。

 クレスト様は、アルフレッド陛下のことをご存知なのね。

 ラグドール様やナルシス様は、ご存じないみたいだけど。
 当然、ダウニー様が知っているわけないわよね。

 もっとも、知ってても変わらなかった気もするけれど。

「リリアナ様もラウル様も、どうしてそんなこと言うんですか?挨拶って大事だと思います!」

 ダウニー様の言うこと、前世の感覚でいうなら、わからなくもない。
 前世なら、身分の下の者から挨拶はしていたもの。

 でもね。
貴族の世界は違うの。よく言うじゃない。郷に入れば郷に従えって。

 男爵家という貴族の娘に転生したのなら、それに従うべきなの。

 貴族の世界って、身分社会なのよ?
勝手に相手の名前を呼んではいけない。許されるまでは家名に様付けが当然。

 勝手に名前で呼んでも許されるのは、国王陛下くらいよ。
 王族とはいえ、私やお兄様でも相手の許可なくお名前で呼んだりしないわ。

 上の身分の者の許しなく、勝手に発言してはいけない。

 私やアルフレッド陛下の身分を知らなかったとしても、お兄様やクレスト様の叱責を無視するなんて、ね。

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