42 / 144
四度目の人生
聖女の力
しおりを挟む
私がフィリアさんに言ったことは、事実かどうかは分からない。
私もレティーナの日記にそう書かれていたから言っただけだし、レティーナも司教様たちから聞いただけのようだから。
だけど、大半の聖女はそれを信じている。
信じているからこそ、私に直接的ないじめが今の時点ではないのだ。
もっとも、目の前の王太子のように信じていない人間も多くいるわけで・・・
「おい、フィリア!何を間に受けてるんだ」
「や、やめて!聖女でなくなったらどうしてくれるの!」
「だからそんなのは、まやかしだろう」
「殿下が信じないのは殿下の自由だけど、私は無理なのっ!」
そりゃそうよね。
だって、力を失うのはフィリアさんであって、王太子殿下じゃないもの。
でも・・・
「駄目ですよ、フィリアさん。教会は来る人を拒んではいけません。たとえ、それが罪を犯した人であろうとも、神はその御手を広げて受け入れて下さるのですから」
「え、あ、わ、私は、別に拒んだわけでは・・・その・・・」
「私に、弁解なさる必要はありません。さぁ、掃除を早く終えましょう?お祈りの時間に遅れてしまいますから」
教会は、来る人を拒んではいけない。
それも、司教様たちからの教えである、そうだ。
まぁ、懺悔に来る人とかを、お前は悪いことをしたから来るな!っていうのはおかしな話だものね。
だから私も、いきなりやって来て私を怒鳴りつけた王太子とやらに「帰れ」とは言わなかった。
心情は別として。
別に私が平民だから言えなかった、というわけではない。
目の前の王太子様はご存知ないようだけど、この国で聖女の地位というのは王族と並ぶほどのものらしい。
フィリアさんのように、微々たる力でも、神の加護を与えられているということで、王女と同じくらいの地位があるのだ。
王家と教会。
対等の権力を持っていると言われている。
もっとも、神に仕える教会は権力にこだわることがないから、王家と敵対することがない、というだけである。
つまりは、筆頭聖女である私は、たとえ平民といえど王太子殿下である目の前の男と対等で、貴様呼ばわりされる覚えはないということだ。
だけど、馬鹿に何を言ったところで、逆ギレされるのがオチである。
私は、王太子殿下の存在をないものとして、窓の掃除に戻った。
私に対して思うところはあれど、聖女の力の意味を、王太子よりは理解しているフィリアさんも、黙々と掃除を始める。
結果。
「え?おい、フィリア?おい・・・クソッ!覚えてろよ!」
という、チンピラまがいの捨て台詞を吐いて、王太子は出て行ったのだった。
私もレティーナの日記にそう書かれていたから言っただけだし、レティーナも司教様たちから聞いただけのようだから。
だけど、大半の聖女はそれを信じている。
信じているからこそ、私に直接的ないじめが今の時点ではないのだ。
もっとも、目の前の王太子のように信じていない人間も多くいるわけで・・・
「おい、フィリア!何を間に受けてるんだ」
「や、やめて!聖女でなくなったらどうしてくれるの!」
「だからそんなのは、まやかしだろう」
「殿下が信じないのは殿下の自由だけど、私は無理なのっ!」
そりゃそうよね。
だって、力を失うのはフィリアさんであって、王太子殿下じゃないもの。
でも・・・
「駄目ですよ、フィリアさん。教会は来る人を拒んではいけません。たとえ、それが罪を犯した人であろうとも、神はその御手を広げて受け入れて下さるのですから」
「え、あ、わ、私は、別に拒んだわけでは・・・その・・・」
「私に、弁解なさる必要はありません。さぁ、掃除を早く終えましょう?お祈りの時間に遅れてしまいますから」
教会は、来る人を拒んではいけない。
それも、司教様たちからの教えである、そうだ。
まぁ、懺悔に来る人とかを、お前は悪いことをしたから来るな!っていうのはおかしな話だものね。
だから私も、いきなりやって来て私を怒鳴りつけた王太子とやらに「帰れ」とは言わなかった。
心情は別として。
別に私が平民だから言えなかった、というわけではない。
目の前の王太子様はご存知ないようだけど、この国で聖女の地位というのは王族と並ぶほどのものらしい。
フィリアさんのように、微々たる力でも、神の加護を与えられているということで、王女と同じくらいの地位があるのだ。
王家と教会。
対等の権力を持っていると言われている。
もっとも、神に仕える教会は権力にこだわることがないから、王家と敵対することがない、というだけである。
つまりは、筆頭聖女である私は、たとえ平民といえど王太子殿下である目の前の男と対等で、貴様呼ばわりされる覚えはないということだ。
だけど、馬鹿に何を言ったところで、逆ギレされるのがオチである。
私は、王太子殿下の存在をないものとして、窓の掃除に戻った。
私に対して思うところはあれど、聖女の力の意味を、王太子よりは理解しているフィリアさんも、黙々と掃除を始める。
結果。
「え?おい、フィリア?おい・・・クソッ!覚えてろよ!」
という、チンピラまがいの捨て台詞を吐いて、王太子は出て行ったのだった。
18
お気に入りに追加
496
あなたにおすすめの小説
虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!
前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!
雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。
【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない
かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、
それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。
しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、
結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。
3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか?
聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか?
そもそも、なぜ死に戻ることになったのか?
そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか…
色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、
そんなエレナの逆転勝利物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる