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三度目の人生
準備
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今回の夜会は、王家主催だから王宮で開かれる。
侍女の姿をさせたキャス様を連れて、ロッテンマイヤー公爵家の控え室へと向かう。
そこでドレスの着付けをし、メイクを補正して、殿下のお迎えを待つという手段だ。
キャス様を連れてくる関係上、侍女はシャロンしか連れて来れなかった。
ただ、シャロンがとても優秀だったから、私が手出しする暇もなく、キャス様の準備は整った。
というか、何か手伝おうとしたら「お嬢様は座っていてください」とシャロンに言われ、キャス様にまで「レティーナ様のお手を煩わすくらいなら、自分でやります!」とまで言われたので、大人しく座っているしかなかった。
いや。私だって、メイクくらいならできるのに。
さすがに、コルセットするようなドレスの着付けは無理だけど。
「キャス様は殿下のお隣で、微笑まれているだけでかまわないのです。全て、殿下にお任せすれば」
「は、はい。ちょ、ちょっと緊張しちゃいまして」
笑顔が強張っているキャス様の手を握る。
「私はそばにいることは出来ません。私との婚約を破棄して、キャス様を婚約者にするのですから。婚約解消の書類には、私も殿下もサインしてありますが、正妃殿下がどう動かれるかわかりません。お父様に念のためにここで待機しているように言われていますから」
私との婚約がなくなり、平民の少女を妃にするということは、アズリル殿下が王太子の座から引き摺り下ろされるということ。
この夜会には当然、側妃様も、側妃様の子供である第二王子殿下も参加する。
第二王子殿下の婚約者は、侯爵家のご令嬢。
お母様の話だと、少々気の弱いところはある方らしいけど、頑張り屋だと聞いた。
それに、第二王子殿下はしっかりとした方だ。
側妃様もいるし、王太子妃、未来の王妃として頑張ってくれるだろう。
アズリル殿下が、王太子の座から引き摺り下ろされることに関して、全く気付いてないことは問題だけど、公務はちゃんと出来る方だ。
彼にとっては、真実の愛の相手が平民だった。それだけのことなんだろう。
貴族にとっての結婚が、恋愛でないことを理解していない時点で、彼は貴族として失格である。
だけど、選んだ相手がキャス様ということだけは、褒めてもいい。
そう思ったから、お父様もお母様も、殿下とキャス様の婚約を後押しすることにしたのだ。
王太子でなくなっても、王族であることには変わりない。
彼のこれからすることは、正しいことではないけれど、そこはお父様たちが上手く王籍剥奪は回避してくれるだろう。
侍女の姿をさせたキャス様を連れて、ロッテンマイヤー公爵家の控え室へと向かう。
そこでドレスの着付けをし、メイクを補正して、殿下のお迎えを待つという手段だ。
キャス様を連れてくる関係上、侍女はシャロンしか連れて来れなかった。
ただ、シャロンがとても優秀だったから、私が手出しする暇もなく、キャス様の準備は整った。
というか、何か手伝おうとしたら「お嬢様は座っていてください」とシャロンに言われ、キャス様にまで「レティーナ様のお手を煩わすくらいなら、自分でやります!」とまで言われたので、大人しく座っているしかなかった。
いや。私だって、メイクくらいならできるのに。
さすがに、コルセットするようなドレスの着付けは無理だけど。
「キャス様は殿下のお隣で、微笑まれているだけでかまわないのです。全て、殿下にお任せすれば」
「は、はい。ちょ、ちょっと緊張しちゃいまして」
笑顔が強張っているキャス様の手を握る。
「私はそばにいることは出来ません。私との婚約を破棄して、キャス様を婚約者にするのですから。婚約解消の書類には、私も殿下もサインしてありますが、正妃殿下がどう動かれるかわかりません。お父様に念のためにここで待機しているように言われていますから」
私との婚約がなくなり、平民の少女を妃にするということは、アズリル殿下が王太子の座から引き摺り下ろされるということ。
この夜会には当然、側妃様も、側妃様の子供である第二王子殿下も参加する。
第二王子殿下の婚約者は、侯爵家のご令嬢。
お母様の話だと、少々気の弱いところはある方らしいけど、頑張り屋だと聞いた。
それに、第二王子殿下はしっかりとした方だ。
側妃様もいるし、王太子妃、未来の王妃として頑張ってくれるだろう。
アズリル殿下が、王太子の座から引き摺り下ろされることに関して、全く気付いてないことは問題だけど、公務はちゃんと出来る方だ。
彼にとっては、真実の愛の相手が平民だった。それだけのことなんだろう。
貴族にとっての結婚が、恋愛でないことを理解していない時点で、彼は貴族として失格である。
だけど、選んだ相手がキャス様ということだけは、褒めてもいい。
そう思ったから、お父様もお母様も、殿下とキャス様の婚約を後押しすることにしたのだ。
王太子でなくなっても、王族であることには変わりない。
彼のこれからすることは、正しいことではないけれど、そこはお父様たちが上手く王籍剥奪は回避してくれるだろう。
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