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二度目の人生

異変

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 二枚のハンカチは、無事に王子に贈られた。

 その結果、妹は第二王子の婚約者となったそうだ。

 もちろん、王子が妹本人に惹かれて婚約したのだろうが、あの刺繍がきっかけになったのは間違いないと思う。

 何故なら、あれ以来、私の元には大量のハンカチや小物、ドレスが持ち込まれるようになったからだ。

 どうやらあの刺繍を見た王妃殿下や、王太子殿下の婚約者様から、是非自分のドレスにも刺繍して欲しいなど言われたらしい。

 父たちは、大喜びしたらしい。
第二王子の婚約者になれた上に、王太子殿下の婚約者や王妃殿下の覚えが良くなれば、伯爵家は安泰だと。

 だけど、その刺繍を私がしていることを知っている侍女たちは、その表情を曇らせていた。

 そう。
父たちはしか見えていない。

 刺繍をしているのが妹でないとバレたら?王族を騙したことになることを理解していない。

 第二王子だけなら「どうしてもうまく出来なくて」と、平謝りすれば許されたかもしれない。

 さすがに、刺繍だけで婚約者にしたわけではないだろうし。

 だけど、王妃殿下まで関わってくると、そうはいかない。

 これ、詰んだかもしれないな。

 そんなことを思いながら、刺繍針を動かす。

 どちらにせよ、私に選択肢はない。
それに、せっかく手に入れた有意義な時間だ。それを自ら手放すつもりもない。

 王妃殿下のドレスは、生地も最高級品だ。
 汚さないために床に布を敷き、トルソーを持ち込んだ。

 十日間、食事と睡眠以外の全ての時間を刺繍に注ぎ込んだ。

 そして、出来上がったドレスを王妃殿下へと献上して一ヶ月後、それは起きるべくして起きた。

 サロメが王宮にて、王太子殿下の婚約者様に一緒に刺繍をしようと誘われ、そのあまりにも拙い刺繍に、疑いを持たれたのだ。

 これは、サロメだけが悪いわけではない。
 父たちの考えが浅はかなのだ。

 サロメが刺繍をうまく出来ないことで、私を代役に立てたまではよしとしよう。

 だが、その刺繍で婚約者になれた時点で、せめて王子だけにでも、刺繍は他人の手によるものだと明かすべきだったのだ。

 先妻の子供である私が刺したのだと言わなくて良い。
 使用人に手伝わせたと言えば良かったのだ。

 それを怠ったせいで、結局は王族を騙したことになった。

 その日、私はいつも通りにハンカチに刺繍を刺していた。

 部屋の外が騒がしいな、と思っていると、いきなりパターン!と扉が開いた。

 そこには、柔らかな金髪に、エメラルドの瞳の少女、サロメが私を睨みつけ立っていた。
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