88 / 101
悪役令嬢と魔族
しおりを挟む
「ぐ、ぐぁぁぁぁぁぁ?」
悲鳴をあげて、目の前の空間が引きつれ、1人の男と・・・腕が現れた。
シキが私を背中に庇い、その惨状から距離を取る。
胸から生えた腕に、その体から黒い靄が溢れ出ている。
ふぅん。魔族って血が出るわけじゃないんだ。あれって、瘴気とかってやつなのかな。
血が出ているわけじゃないからか、胸から腕が出ているというのに嫌悪感がわかない。
まぁ、本人?はものすごい悲鳴をあげているが。ということは、アレは誰か他の人の腕なわけね。
『あらあら、人間風情などと品のないことをいう低俗は、悲鳴も品がないですわねぇ』
『き、貴様っ!ルーチェ!』
聞こえてきた声は、明るい女性の声で、どうやらルーチェ様という名前らしい。
『一体、誰の許可を得て、こんな愚行をなさったのかしら?魔王陛下は大層お怒りよ』
『ぐっ・・・』
『ごめんなさいね?私たちは人間にその姿を見せることはできないの』
「その人は構わないんですか?」
『ええ。この塵は処分するから、構わないと陛下の許可は得ているわ。本当に・・・この異空間にまで来ることができる存在を見下せるなんて、馬鹿にも程があるわ』
魔族は人間に姿を見せることはできないらしい。だから、姿を隠していたみたいだけど、このルーチェ様という魔族の攻撃で姿を隠しておけなくなったということみたい。
というか、どうやら魔族側で処分?してくれるということなのかな?
私は確かに怒っているけど、別に魔族側と対抗するつもりはない。人間側に手を出したりしなければ。
『これの処分は私たちで行うわ。構わないかしら?』
「よろしくお願いします」
『本当によく出来たお嬢さんだこと。自分の力量もわかっていない馬鹿とは違うわね。ああ、そうだわ。これ!魔王陛下からお詫びにって預かったの』
胸から突き出ていた腕の下側、お腹のあたりから、もう1本腕が伸びてきた。
途端、悲鳴が響き渡る。
『ぎゃあああああ!』
『うるさいわね。えいっ』
『☆○*€$〆!!』
なんだか口は動いてるけど、全く言語にならなくなったわ。静かになったのはいいけど、胸とお腹から腕が伸びてるのって、すっごくシュールだと思うの。だって、シキが全然発言しないもの。
「シキ、大丈夫?」
「・・・俺は何のために精霊の力を得たんだろうと・・・」
「私のためでしょう?ありがとう、シキ。大好きよ」
突然のことに、呆然としちゃったのね。でも、シキは私を守るために頑張ろうって思ってくれてたの、ちゃんとわかってるから。
『ラブラブねー。でも、私もそろそろ帰るから、これ受け取ってくれる?』
ルーチェ様に言われて、私はお腹から伸びた腕に握られていた小さな宝玉を受け取った。
濃い紫色に輝く、握り拳大の宝玉ー
「これは?」
『それは、魔族の王である陛下の力を込めた宝玉。その玉の色が失われるまでなら魔族の力を行使出来る。1度に放出すれば、ミチェランティス程度なら崩壊させられるわよ』
「!」
なんてものをくれるんだ。そんなの持ってたら、国に謀反の意があると思われちゃうじゃない。
『あー、大丈夫よ?その男の中に取り込めるわよ。精霊の加護も得てるみたいだし、体に害はないわ』
「私では駄目なのですか?」
『貴女、聖なる神の力が強すぎるのよね。その男にも神の力を感じるけど・・・死とか渾沌を司ってるんじゃないかな。魔族の力と反発しないみたいだからね』
シキは死の神タナトス様の力と魂を宿しているから、魔族の力と反発しないってこと?
シキの体に異常をきたさないなら構わないけど・・・
シキは私から宝玉を受け取ると、そのまま手のひらで握り込む。宝玉は、溶け入るようにシキの掌の中に消えていった。
「シキ、大丈夫なの?」
「大丈夫です。何も感じないですし。力が増えたような気すらしません」
『力が増えたわけじゃないからね。あくまでも、一時的に使えるモノでしかないから。使いたい時に、念じれば、使いたいだけ使えるわよ。色が失われるまでならね』
「わかりました」
シキがうなづくと、胸とお腹から伸びた腕は、満足そうに手を振った。
腕が満足そうというのも、変な話だけど・・・
『じゃあ、私は帰るわね。迷惑かけちゃったけど、悪く思わないでね』
「いえ。お気遣いありがとうございます、ルーチェ様。魔王陛下様にも宝玉のお礼お伝え下さいませ」
『本当、女神の愛し子でなければ連れ帰りたいくらい・・・冗談よ、冗談。嫉妬深い男は嫌われるわよ?ふふっ。じゃあね』
シキを揶揄った後、腕に貫かれた男ごと、ルーチェ様の気配は空間から消えた。そういえば、男の名前も知らないままだったわ。別にどうでもいいけど。
私とシキは、お互い顔を合わせると、笑い合って異空間からの転移を行った。
悲鳴をあげて、目の前の空間が引きつれ、1人の男と・・・腕が現れた。
シキが私を背中に庇い、その惨状から距離を取る。
胸から生えた腕に、その体から黒い靄が溢れ出ている。
ふぅん。魔族って血が出るわけじゃないんだ。あれって、瘴気とかってやつなのかな。
血が出ているわけじゃないからか、胸から腕が出ているというのに嫌悪感がわかない。
まぁ、本人?はものすごい悲鳴をあげているが。ということは、アレは誰か他の人の腕なわけね。
『あらあら、人間風情などと品のないことをいう低俗は、悲鳴も品がないですわねぇ』
『き、貴様っ!ルーチェ!』
聞こえてきた声は、明るい女性の声で、どうやらルーチェ様という名前らしい。
『一体、誰の許可を得て、こんな愚行をなさったのかしら?魔王陛下は大層お怒りよ』
『ぐっ・・・』
『ごめんなさいね?私たちは人間にその姿を見せることはできないの』
「その人は構わないんですか?」
『ええ。この塵は処分するから、構わないと陛下の許可は得ているわ。本当に・・・この異空間にまで来ることができる存在を見下せるなんて、馬鹿にも程があるわ』
魔族は人間に姿を見せることはできないらしい。だから、姿を隠していたみたいだけど、このルーチェ様という魔族の攻撃で姿を隠しておけなくなったということみたい。
というか、どうやら魔族側で処分?してくれるということなのかな?
私は確かに怒っているけど、別に魔族側と対抗するつもりはない。人間側に手を出したりしなければ。
『これの処分は私たちで行うわ。構わないかしら?』
「よろしくお願いします」
『本当によく出来たお嬢さんだこと。自分の力量もわかっていない馬鹿とは違うわね。ああ、そうだわ。これ!魔王陛下からお詫びにって預かったの』
胸から突き出ていた腕の下側、お腹のあたりから、もう1本腕が伸びてきた。
途端、悲鳴が響き渡る。
『ぎゃあああああ!』
『うるさいわね。えいっ』
『☆○*€$〆!!』
なんだか口は動いてるけど、全く言語にならなくなったわ。静かになったのはいいけど、胸とお腹から腕が伸びてるのって、すっごくシュールだと思うの。だって、シキが全然発言しないもの。
「シキ、大丈夫?」
「・・・俺は何のために精霊の力を得たんだろうと・・・」
「私のためでしょう?ありがとう、シキ。大好きよ」
突然のことに、呆然としちゃったのね。でも、シキは私を守るために頑張ろうって思ってくれてたの、ちゃんとわかってるから。
『ラブラブねー。でも、私もそろそろ帰るから、これ受け取ってくれる?』
ルーチェ様に言われて、私はお腹から伸びた腕に握られていた小さな宝玉を受け取った。
濃い紫色に輝く、握り拳大の宝玉ー
「これは?」
『それは、魔族の王である陛下の力を込めた宝玉。その玉の色が失われるまでなら魔族の力を行使出来る。1度に放出すれば、ミチェランティス程度なら崩壊させられるわよ』
「!」
なんてものをくれるんだ。そんなの持ってたら、国に謀反の意があると思われちゃうじゃない。
『あー、大丈夫よ?その男の中に取り込めるわよ。精霊の加護も得てるみたいだし、体に害はないわ』
「私では駄目なのですか?」
『貴女、聖なる神の力が強すぎるのよね。その男にも神の力を感じるけど・・・死とか渾沌を司ってるんじゃないかな。魔族の力と反発しないみたいだからね』
シキは死の神タナトス様の力と魂を宿しているから、魔族の力と反発しないってこと?
シキの体に異常をきたさないなら構わないけど・・・
シキは私から宝玉を受け取ると、そのまま手のひらで握り込む。宝玉は、溶け入るようにシキの掌の中に消えていった。
「シキ、大丈夫なの?」
「大丈夫です。何も感じないですし。力が増えたような気すらしません」
『力が増えたわけじゃないからね。あくまでも、一時的に使えるモノでしかないから。使いたい時に、念じれば、使いたいだけ使えるわよ。色が失われるまでならね』
「わかりました」
シキがうなづくと、胸とお腹から伸びた腕は、満足そうに手を振った。
腕が満足そうというのも、変な話だけど・・・
『じゃあ、私は帰るわね。迷惑かけちゃったけど、悪く思わないでね』
「いえ。お気遣いありがとうございます、ルーチェ様。魔王陛下様にも宝玉のお礼お伝え下さいませ」
『本当、女神の愛し子でなければ連れ帰りたいくらい・・・冗談よ、冗談。嫉妬深い男は嫌われるわよ?ふふっ。じゃあね』
シキを揶揄った後、腕に貫かれた男ごと、ルーチェ様の気配は空間から消えた。そういえば、男の名前も知らないままだったわ。別にどうでもいいけど。
私とシキは、お互い顔を合わせると、笑い合って異空間からの転移を行った。
17
お気に入りに追加
537
あなたにおすすめの小説
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
転生先は王子様
五珠 izumi
恋愛
「次に生まれ変わるなら、男と女どっちですか!」
私は花野 香、幼なじみと結婚して10年が過ぎた。
最近、夫は外に女の人がいるみたい。
そんなある日、子どもの時から毎年行っていたお寺のお祭りの帰り道、私は余命宣告を受ける。来てくれたお礼にプレゼントをあげると言われ突然、来世の設定が始まった。
そこで決めたのは金髪、緑から赤に変わる瞳で声優ばりの声を持った16歳の王子様。
もう、浮気されたくない、だから男を選んだのに、転生した私は、彼女が13人もいる王子様だった。
その上、乳兄弟のランディは、なにかと距離が近すぎる!王子なんだけど、心は女の私はドキドキしてしまいます。
新しい人生で今度こそ幸せを掴もうとする私と、追いかけて転生してきた夫とのお話し。
※不妊の話が少しだけ入ります。苦手な方はご注意ください。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~
薄味メロン
恋愛
HOTランキング 1位 (2019.9.18)
お気に入り4000人突破しました。
次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。
だが、誰も知らなかった。
「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」
「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」
メアリが、追放の準備を整えていたことに。
転生令嬢はのんびりしたい!〜その愛はお断りします〜
咲宮
恋愛
私はオルティアナ公爵家に生まれた長女、アイシアと申します。
実は前世持ちでいわゆる転生令嬢なんです。前世でもかなりいいところのお嬢様でした。今回でもお嬢様、これまたいいところの!前世はなんだかんだ忙しかったので、今回はのんびりライフを楽しもう!…そう思っていたのに。
どうして貴方まで同じ世界に転生してるの?
しかも王子ってどういうこと!?
お願いだから私ののんびりライフを邪魔しないで!
その愛はお断りしますから!
※更新が不定期です。
※誤字脱字の指摘や感想、よろしければお願いします。
※完結から結構経ちましたが、番外編を始めます!
モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~
古里@10/25シーモア発売『王子に婚約
恋愛
前世コミュ障で話し下手な私はゲームの世界に転生できた。しかし、ヒロインにしてほしいと神様に祈ったのに、なんとモブにすらなれなかった。こうなったら仕方がない。せめてゲームの世界が見れるように一生懸命勉強して私は最難関の王立学園に入学した。ヒロインの聖女と王太子、多くのイケメンが出てくるけれど、所詮モブにもなれない私はお呼びではない。コミュ障は相変わらずだし、でも、折角神様がくれたチャンスだ。今世は絶対に恋に生きるのだ。でも色々やろうとするんだけれど、全てから回り、全然うまくいかない。挙句の果てに私が悪役令嬢だと判ってしまった。
でも、聖女は虐めていないわよ。えええ?、反逆者に私の命が狙われるている?ちょっと、それは断罪されてた後じゃないの? そこに剣構えた人が待ち構えているんだけど・・・・まだ死にたくないわよ・・・・。
果たして主人公は生き残れるのか? 恋はかなえられるのか?
ハッピーエンド目指して頑張ります。
小説家になろう、カクヨムでも掲載中です。
もしもし、王子様が困ってますけど?〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる