上 下
13 / 55

家出

しおりを挟む
「そんなことが・・・かしこまりました。ザギ様、どうかシアン様をよろしくお願いします」

 フラウに、自分の気持ちも素直に明かした。
 ザギにそうした方がいいと言われたからだ。

 残す彼女には、何もかも話しておく方がいいと言われたのだ。心配させないためにも、と。

 そうまで言われると、思ったことを話さないわけにはいかない。

 だから、正直に話した。

 魔王様の再婚について聞いた時、どう思ったか。どう考えたか。

 そしてそれを聞いたフラウは、快く?家出の準備をしてくれた。

「連絡したい時は、これに魔力を流してね。そしたら、僕に連絡が来るようになってるから」

 ザギがフラウに、手のひらサイズの何かを渡している。

「ザギ、なぁに?それ」

「これに魔力を流すと、対になった器具が光るようになってるんだ。僕の種族なら、離れてても僕に連絡がとれる。せっかくの家出だからね。ちゃんと陛下たちには見てもらわなきゃね」

 ザギの言ってることはわからなかったけど、フラウが頷いてたから、大丈夫なのかな、と思う。

「手紙、書けた?じゃ、行こうか。猫ちゃんは姫様が抱いててね」

「うん。じゃあ、フラウ行ってくるね」

「はい、姫様。お帰りをお待ちしております」

「家出なのに、変なの」

 私がそう言って笑うと、フラウもそうですね、と笑った。

 家出だというのに、私はその辺に遊びに行くような気持ちでミィを抱き上げた。

「じゃ、行くよ」

「ミィ、良い子にしててね」

「みゃあ」

 ミィの頭を撫でると、おとなしく私の腕の中で丸くなった。

 ザギは私を抱き上げると、窓を大きく開けて窓枠に足をかける。

 そのまま外に出ると、ザギの背中にコウモリのような羽が広がった。

「羽!」

魔王城ここで転移魔法を使うと、魔王様やメフィストに察知されちゃうからね。少し距離を取ってから転移しよう。さて、どこへ行きたい?」

「ザギのお家に行くんじゃないの?」

「それじゃすぐ見つかっちゃうでしょ?せめて一日は心配させないとね。で、どこ行きたい?」

 ザギのお屋敷に行くものばかりだと思っていたから・・・

 行きたいところ、か。

「人間の国に行ってみたい。離れた場所から見るだけでもいいから」

「オッケー。じゃあ、姫様のお母様の育った国に行ってみようか。近くまで転移で飛ぶね。あ。人間に魔族ってバレないようにね。あの国は魔王妃様が魔王様に嫁いだこともあって、あんまり魔族に友好的じゃないんだ」

「分かった。バレないようにする」

「良い子」

 しばらく空を飛んだ後、ザギは転移魔法を発動した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

【古代召喚魔法】を悪霊だとよばれ魔法学園を追放されました。でもエルフの王女に溺愛されて幸せです。だから邪魔する奴らは排除していいよね?

里海慧
ファンタジー
「レオ・グライス。君は呪いの悪霊を呼び寄せ、危険極まりない! よって本日をもって退学に処す!!」  最終学年に上がったところで、魔法学園を退学になったレオ。  この世界では魔物が跋扈しており、危険から身を守るために魔法が発達している。  だが魔法が全く使えない者は、呪われた存在として忌み嫌われていた。  魔法が使えないレオは貴族だけが通う魔法学園で、はるか昔に失われた【古代召喚魔法】を必死に習得した。  しかし召喚魔法を見せても呪いの悪霊だと誤解され、危険人物と認定されてしまう。  学園を退学になり、家族からも見捨てられ居場所がなくなったレオは、ひとりで生きていく事を決意。  森の奥深くでエルフの王女シェリルを助けるが、深い傷を負ってしまう。だがシェリルに介抱されるうちに心を救われ、王女の護衛として雇ってもらう。  そしてシェリルの次期女王になるための試練をクリアするべく、お互いに想いを寄せながら、二人は外の世界へと飛び出していくのだった。  一方レオを追い出した者たちは、次期女王の試練で人間界にやってきたシェリルに何とか取り入ろうとする。  そして邪魔なレオを排除しようと画策するが、悪事は暴かれて一気に転落していくのだった。 ※きゅんきゅんするハイファンタジー、きゅんファン目指してます。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

召喚された聖女? いえ、商人です

kieiku
ファンタジー
ご依頼は魔物の回収……転送費用がかさみますので、買取でなく引取となりますがよろしいですか? あとお時間かかりますので、そのぶんの出張費もいただくことになります。

公爵家の半端者~悪役令嬢なんてやるよりも、隣国で冒険する方がいい~

石動なつめ
ファンタジー
半端者の公爵令嬢ベリル・ミスリルハンドは、王立学院の休日を利用して隣国のダンジョンに潜ったりと冒険者生活を満喫していた。 しかしある日、王様から『悪役令嬢役』を押し付けられる。何でも王妃様が最近悪役令嬢を主人公とした小説にはまっているのだとか。 冗談ではないと断りたいが権力には逆らえず、残念な演技力と棒読みで悪役令嬢役をこなしていく。 自分からは率先して何もする気はないベリルだったが、その『役』のせいでだんだんとおかしな状況になっていき……。 ※小説家になろうにも掲載しています。

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

処理中です...