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悪役令嬢の進む道

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 ソルが私をリアナと呼んでくれたあの日からー

 私は今まで以上に、ソルはもちろんのこと、シオンお兄様やフローラ様と親交を深めるように心がけた。

 学院に通うことはもう無理なので、王宮内でイリアスから魔術の講義も続けて受けた。
 ただ、リアナが言ったように私の中からは闇の聖女の力はなくなったようだ。

 そのことは、聖女であるフローラ様から聞いた。

 フローラ様は、私の中に闇の聖女の力があることに気付いていて、そのことでシオンお兄様に色々と進言したことを謝ってくれた。

 だけどもう、そのことも学院のことも、私にはこだわりがなくなっていた。

 アリスティア様はこまめに会いに来てくれるし、シオンお兄様の側近となるハロルドやイリアス、ジェイムズとも王宮でよく会うようになった。

 ソルは、基本的に私の側にいるけど、カイだったり新しくフローラ様の護衛になった影に任せたりするようになった。

 日々が穏やかに過ぎていく中、シオンお兄様は学院を卒業され、明日フローラ様と結婚式を挙げられる。

 ここ半年、フローラ様の婚姻のための準備に私まで大忙しだった。
 いや、なんで?
私だって、自分の結婚式が控えてるんだけど。

 そう。2人の結婚式の3ヶ月後に、私とソルは婚姻する。
 シオンお兄様は、闇の聖女の件も落ち着いたから婚姻はもっと先にとうるさかった。
 だけどフローラ様・・・いやフローラお姉様が学院をやめさせたことなどを言って、婚姻の後押しをしてくれた。

 別にこのまま王宮で住むのだし、いいじゃないと言うと、お姉様は苦笑いしながら、ソル様の妻になってしまうのが嫌なのよと言った。

 全くもう。自分はフローラ様を妻に迎えるんじゃない。
 私だって、シオンお兄様が私のことを好きだと思ってくれていることは分かっている。
 わかっているけど、私たちは兄妹。だから、シオンお兄様はリアナの気持ちに答えなかったのでしょう?

「明日からは、フローラ様お姉様と呼ぶようになるのね」

「嬉しいです。リアナ様」

「リアナって呼んでください。家族になるんですから」

「リアナ」

 フローラ様が満面の笑みで私の名を呼んでくれる。やっぱり、フローラ様って女神様みたい。綺麗で、可愛くて、私の大好きなヒロイン。

 私はー
『魔術王国の花の乙女』という乙女ゲームの世界に転生した。

 そこには、王太子をはじめとする攻略対象が存在していて、聖女となるヒロインがいた。

 異母兄である王太子に恋焦がれる悪役令嬢として転生した私は、断罪を避けるために異母兄や攻略対象を避け、そしてそんな中で隠れ攻略対象と恋に落ちることとなった。

 ソル・フィルズ。
孤児であり、暗殺者であった彼は、今は私のことをとろけるような瞳で見つめながら抱きしめている。

 私は、心の中に眠るリアナ・アイリーンと約束した通り、思ったことは相手に素直に伝え、不安を心に溜めないようにした。

 この先ー
もう一度リアナと会ったときに、叱責されないように、胸をはって生きていくと心に決めて。
 

 
 
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