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壊れた至宝《シオン視点》

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 大切な大切な異母妹。
彼女を失いたくなかった。たとえ、他の男の妻になったとしても、リアナが幸せに笑っていてくれるなら、それでいいと思ってた。

 聖女となった友人のフローラと婚約をした。聖女は国にとって有益な存在だ。
 聖女が拒否しない限り王太子妃となるのが常だ。フローラも他に漏れず王太子の婚約者となった。

 そのフローラが言う『闇の聖女』という存在。国を混沌に沈める存在だという。
 それが大切な異母妹の中にあるというのか。

 フローラからの助言に従い、リアナから全ての危険を遠ざけることとなった。
 学院に通うことを咎めたことで、リアナから大嫌いと言われてしまったが、リアナを守るためには仕方のないことだ。
 そう思って諦めた僕に、リアナは謝ってくれた。

 結局、リアナは学院を辞めることを決断し、イリアスから魔術の講義を受けることとなった。
 フローラやソルからも色々と学んでいるというリアナの異変に気づいたのは、ソルだった。

 リアナが笑わない。

 まさかと思った。リアナは感情豊かなほうだ。怒ったり拗ねたり、泣いたり、笑ったり。
 そのリアナが笑わない?

 部屋で読書中のリアナの顔を見て、僕は絶望した。

 リアナは全てを諦めたように、表情を変えることがなくなっていた。
 講義とリリウム公爵令嬢とのお茶会以外は、部屋からも出ないという。

 フローラと相談して、学院から帰ったら街へ買い物に行こうと誘った。
 何でもいい。リアナが興味を持ってくれれば。そう思ったから、危険が伴うとは分かっていたが誘ったのだ。

 だけど、リアナはうなづいてくれなかった。どんなに僕とフローラが誘っても、表情ひとつ変えずに断られた。

 笑わない。部屋から出ない。人と触れ合おうとしない。
 講義は受けるし、リリウム公爵令嬢とお茶会はするが、それはただの義務行動で、顔を洗ったりするというただの『行動』の1つに過ぎなかった。

 だから、それ以外の、僕やフローラからのお茶の誘いにはのらない。
 最近は、ソルからも距離をとっているようで、ソルの表情が暗い。
 元々、暗部の人間で表情豊かな方ではなかった。だが、リアナの婚約者になった頃から少しだが明るくなっていたのに。

 リアナを、闇の聖女にするわけにはいかない。

 だけど、笑わないリアナを見ていると、今のリアナは生きていると言えるのか、不安になる。

 僕たちは何を間違ったのだろう。
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