45 / 57
壊れた至宝《ソル視点》
しおりを挟む
リアナ様から笑顔が消えたー
部屋から出るのは、リリウム公爵令嬢が訪れた時と、図書室に本を取りに行くときのみ。
陛下や王妃様に呼ばれれば赴くが、シオン様やフローラ様がいくら誘っても、王宮から外に全く出ようとしなくなった。
そして、何より・・・
あの愛らしい笑顔が消えた。
口数は極端に減り、自室で静かに読書をする毎日。リリウム公爵令嬢とのお茶会では、多少は笑顔らしきものも見えるが、それはまるで淑女としての仮面のようで、あの花が咲いたような、誰もが焦がれたリアナ様ではなくなった。
リアナ様の中の、闇の聖女を覚醒させない。その願いのもとに決断したシオン様。
俺はそれを間違いだとは思っていない。リアナ様もそう思ったから、あの日シオン様に謝罪しだのだろう。
だけど、あの日からー
リアナ様はまるで全てを諦めたように、少しずつ壊れていった。
笑顔が少しずつ消え、話さなくなり、部屋からほとんど出なくなる。
フローラ様やシオン様に誘われても3回に1回はお茶の誘いも断り、1人でいたいからと俺からも離れようとする。
護衛だからと言っても、絶対に部屋から出ないからと言われる。
感情の全てを閉じてしまったようなリアナ様に、シオン様は学院から戻ったら街に買い物に行こうと誘いをかけた。
危険を避けるために学院に通わせることをやめさせたけれど、どうにかリアナ様に喜んで欲しくて、誘われたのだろう。
だが、リアナ様は固辞した。
フローラ様も一緒に行きましょう?と強く誘われていたが、リアナ様がうなづくことはなかった。
俺たちはー
何かを間違えたのだろうか。
闇の聖女として覚醒すれば、リアナ様はリアナ様でなくなってしまうという。
リアナ様としての心は消え、闇の聖女として世界を混沌へと導く存在になると。
もし、リアナ様の心が残っていたとしても、自分が壊していく世界を見て、きっとその優しい心を痛めてしまう。
王家として、世界を混沌に導くわけにはいかない。
そして、大切な妹姫を苦しませたくなどない。
だから、今できる最良の選択をしたはずなのに。
あと1年たてば、シオン様は聖女フローラ様と婚姻を結ばれる。
そうすれば、リアナ様と俺は婚姻し、リアナ様を手に入れようとする貴族たちも諦めざる得なくなる。
王家の場合、1度結ばれた婚姻は絶対だ。相手が病気や事故で亡くなった場合でも5年は再婚は認められないし、離縁は絶対にできない。
お互いの伴侶以外の相手は認められず、王家といえど、側室を持つことも認められていない。
つまり、婚姻さえすれば、リアナ様にはもう少し自由を与えて差し上げられるのだ。
あと1年。あと1年の我慢なのに。
だけど、あと1年もこのまま?リアナ様はこのままリアナ様でなくなってしまうのではないか。
俺を映さなくなった漆黒の瞳。俺は窓際に座るリアナ様を見上げたー
部屋から出るのは、リリウム公爵令嬢が訪れた時と、図書室に本を取りに行くときのみ。
陛下や王妃様に呼ばれれば赴くが、シオン様やフローラ様がいくら誘っても、王宮から外に全く出ようとしなくなった。
そして、何より・・・
あの愛らしい笑顔が消えた。
口数は極端に減り、自室で静かに読書をする毎日。リリウム公爵令嬢とのお茶会では、多少は笑顔らしきものも見えるが、それはまるで淑女としての仮面のようで、あの花が咲いたような、誰もが焦がれたリアナ様ではなくなった。
リアナ様の中の、闇の聖女を覚醒させない。その願いのもとに決断したシオン様。
俺はそれを間違いだとは思っていない。リアナ様もそう思ったから、あの日シオン様に謝罪しだのだろう。
だけど、あの日からー
リアナ様はまるで全てを諦めたように、少しずつ壊れていった。
笑顔が少しずつ消え、話さなくなり、部屋からほとんど出なくなる。
フローラ様やシオン様に誘われても3回に1回はお茶の誘いも断り、1人でいたいからと俺からも離れようとする。
護衛だからと言っても、絶対に部屋から出ないからと言われる。
感情の全てを閉じてしまったようなリアナ様に、シオン様は学院から戻ったら街に買い物に行こうと誘いをかけた。
危険を避けるために学院に通わせることをやめさせたけれど、どうにかリアナ様に喜んで欲しくて、誘われたのだろう。
だが、リアナ様は固辞した。
フローラ様も一緒に行きましょう?と強く誘われていたが、リアナ様がうなづくことはなかった。
俺たちはー
何かを間違えたのだろうか。
闇の聖女として覚醒すれば、リアナ様はリアナ様でなくなってしまうという。
リアナ様としての心は消え、闇の聖女として世界を混沌へと導く存在になると。
もし、リアナ様の心が残っていたとしても、自分が壊していく世界を見て、きっとその優しい心を痛めてしまう。
王家として、世界を混沌に導くわけにはいかない。
そして、大切な妹姫を苦しませたくなどない。
だから、今できる最良の選択をしたはずなのに。
あと1年たてば、シオン様は聖女フローラ様と婚姻を結ばれる。
そうすれば、リアナ様と俺は婚姻し、リアナ様を手に入れようとする貴族たちも諦めざる得なくなる。
王家の場合、1度結ばれた婚姻は絶対だ。相手が病気や事故で亡くなった場合でも5年は再婚は認められないし、離縁は絶対にできない。
お互いの伴侶以外の相手は認められず、王家といえど、側室を持つことも認められていない。
つまり、婚姻さえすれば、リアナ様にはもう少し自由を与えて差し上げられるのだ。
あと1年。あと1年の我慢なのに。
だけど、あと1年もこのまま?リアナ様はこのままリアナ様でなくなってしまうのではないか。
俺を映さなくなった漆黒の瞳。俺は窓際に座るリアナ様を見上げたー
28
お気に入りに追加
636
あなたにおすすめの小説
ヒロイン転生〜ざまあお断り!私はモブとして幸せになりたいのです〜
みおな
恋愛
乙女ゲーム『薔薇の乙女は月に恋われる』
薔薇の乙女と呼ばれるヒロインが、家族に虐げられながらも健気に頑張って生きていく中、攻略対象達と出会い、恋を深めていく話である。
私はこのゲームのヒロインが嫌いだ。家族に虐げられる?父親は放蕩していたが、母親はヒロインを育てるために父親の暴力にも耐えていたのに?
攻略対象と恋を深める?いやいや、婚約者のいる相手と何してるの?単なるビッチでしょ?それ。
なのに、事故で転生したと思ったら、ヒロイン転生?冗談じゃない!
こう言う場合、悪役令嬢に転生して、ヒロインにざまあするんじゃないの?なんで、事もあろうに嫌いなヒロインなのよ!
こうなったら、攻略対象や家族なんてどうでもいい!モブ扱いでお願いします。
未亡人となった側妃は、故郷に戻ることにした
星ふくろう
恋愛
カトリーナは帝国と王国の同盟により、先代国王の側室として王国にやって来た。
帝国皇女は正式な結婚式を挙げる前に夫を失ってしまう。
その後、義理の息子になる第二王子の正妃として命じられたが、王子は彼女を嫌い浮気相手を溺愛する。
数度の恥知らずな婚約破棄を言い渡された時、カトリーナは帝国に戻ろうと決めたのだった。
他の投稿サイトでも掲載しています。
使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後
有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。
だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。
それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。
王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!?
けれど、そこには……。
※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
どうぞ二人の愛を貫いてください。悪役令嬢の私は一抜けしますね。
kana
恋愛
私の目の前でブルブルと震えている、愛らく庇護欲をそそる令嬢の名前を呼んだ瞬間、頭の中でパチパチと火花が散ったかと思えば、突然前世の記憶が流れ込んできた。
前世で読んだ小説の登場人物に転生しちゃっていることに気付いたメイジェーン。
やばい!やばい!やばい!
確かに私の婚約者である王太子と親しすぎる男爵令嬢に物申したところで問題にはならないだろう。
だが!小説の中で悪役令嬢である私はここのままで行くと断罪されてしまう。
前世の記憶を思い出したことで冷静になると、私の努力も認めない、見向きもしない、笑顔も見せない、そして不貞を犯す⋯⋯そんな婚約者なら要らないよね!
うんうん!
要らない!要らない!
さっさと婚約解消して2人を応援するよ!
だから私に遠慮なく愛を貫いてくださいね。
※気を付けているのですが誤字脱字が多いです。長い目で見守ってください。
転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる
花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。
白紙にする約束だった婚約を破棄されました
あお
恋愛
幼い頃に王族の婚約者となり、人生を捧げされていたアマーリエは、白紙にすると約束されていた婚約が、婚姻予定の半年前になっても白紙にならないことに焦りを覚えていた。
その矢先、学園の卒業パーティで婚約者である第一王子から婚約破棄を宣言される。
破棄だの解消だの白紙だのは後の話し合いでどうにでもなる。まずは婚約がなくなることが先だと婚約破棄を了承したら、王子の浮気相手を虐めた罪で捕まりそうになるところを華麗に躱すアマーリエ。
恩を仇で返した第一王子には、自分の立場をよおく分かって貰わないといけないわね。
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる