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聖の聖女と闇の聖女
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結局、学院に戻ったのは1週間後だった。学院内で攫われたこともあり、急かされることもなかった。
どうやらシオン・・・お兄様と学院長とで話し合いが持たれたらしく、来年のシオンお兄様の卒業と共に、聖女であるフローラも卒業、そして私も一緒に卒業させられるらしい。
いやいやいや。1年で卒業って。
王太子妃になるフローラは、王太子妃教育が始まるので、学院に通うのが難しくなるという理由もある。
フローラに、ハロルド、それにお兄様がいないということで、警備に不安を感じたお兄様が学院側に押し切ったようだ。
ただし、最低限の試験をクリアすることが条件付けられた。
魔術の座学試験のクリア、実技試験のクリアである。ちなみに、貴族の淑女としての在り方や、普通の座学に関しては、王宮での専属の教師によって指導されているので、問題はない。
問題は、魔術の実技だ。
『花乙』の世界では、貴族には魔力があるとされている。
ちなみに、ヒロインであり聖女のフローラは聖の魔力持ちだ。
王家は光の魔力持ちで、王妃が何の魔力を持っていても、生まれてくる子供は光の魔力持ちとなる。つまり、シオンお兄様も私も光の魔力持ちということとなる。
確かに、私には光の魔力がある。さほど強力というわけでもないが。
問題は・・・もう1つの魔力だ。
この乙女ゲームの世界では、魔力は1人に1種類だ。なのに、私には魔力が2種類備わっている。おそらく、転生の影響だと思うのだが。
私が転生した後、学院に通うのを渋った理由の1つがこれである。
リリー嬢や、ソルとの婚約などですっかり忘れていたが、2つの魔力を持っていることなど知られるわけにはいかない。しかし、隠し切れるものだろうか。
「リアナ様?何か気がかりでも?」
フローラ様に問われ、私は慌てて首を振った。
今日は、フローラは王太子妃教育の打ち合わせに王宮に訪れていた。
打ち合わせ後に、私の部屋まで挨拶に来てくれたのだ。
「な、何でもないです。フローラ様、王太子妃教育は卒業後からですよね?打ち合わせ、早くないですか?」
「それが、卒業後早めに婚姻するために、少しずつやっていこうという話になって」
「え?婚姻早めるんですか?」
初めて聞いた。いや、文句はないけど。フローラをお姉様と呼ぶ日が来ることに文句なんかあるわけない。
「私もシオン様もどっちでもいいんだけど、陛下が他国の王族から求婚がきてるとかなんとか」
「初耳です。でも、そうですよね。フローラ様なら他国の王族にも望まれますよね」
「いえ、そうでなくて・・・」
フローラがなんだかほほえましそうに私を見るけど、私なにかおかしいこと言った?
でも、そうか。王太子妃教育、もう始めるんだ。
私も魔術の実技、どうにかしないと。しかし、隠し切れるだろうか。私が闇の魔力持ちで・・・闇の聖女と呼ばれる存在であることを。
どうやらシオン・・・お兄様と学院長とで話し合いが持たれたらしく、来年のシオンお兄様の卒業と共に、聖女であるフローラも卒業、そして私も一緒に卒業させられるらしい。
いやいやいや。1年で卒業って。
王太子妃になるフローラは、王太子妃教育が始まるので、学院に通うのが難しくなるという理由もある。
フローラに、ハロルド、それにお兄様がいないということで、警備に不安を感じたお兄様が学院側に押し切ったようだ。
ただし、最低限の試験をクリアすることが条件付けられた。
魔術の座学試験のクリア、実技試験のクリアである。ちなみに、貴族の淑女としての在り方や、普通の座学に関しては、王宮での専属の教師によって指導されているので、問題はない。
問題は、魔術の実技だ。
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王家は光の魔力持ちで、王妃が何の魔力を持っていても、生まれてくる子供は光の魔力持ちとなる。つまり、シオンお兄様も私も光の魔力持ちということとなる。
確かに、私には光の魔力がある。さほど強力というわけでもないが。
問題は・・・もう1つの魔力だ。
この乙女ゲームの世界では、魔力は1人に1種類だ。なのに、私には魔力が2種類備わっている。おそらく、転生の影響だと思うのだが。
私が転生した後、学院に通うのを渋った理由の1つがこれである。
リリー嬢や、ソルとの婚約などですっかり忘れていたが、2つの魔力を持っていることなど知られるわけにはいかない。しかし、隠し切れるものだろうか。
「リアナ様?何か気がかりでも?」
フローラ様に問われ、私は慌てて首を振った。
今日は、フローラは王太子妃教育の打ち合わせに王宮に訪れていた。
打ち合わせ後に、私の部屋まで挨拶に来てくれたのだ。
「な、何でもないです。フローラ様、王太子妃教育は卒業後からですよね?打ち合わせ、早くないですか?」
「それが、卒業後早めに婚姻するために、少しずつやっていこうという話になって」
「え?婚姻早めるんですか?」
初めて聞いた。いや、文句はないけど。フローラをお姉様と呼ぶ日が来ることに文句なんかあるわけない。
「私もシオン様もどっちでもいいんだけど、陛下が他国の王族から求婚がきてるとかなんとか」
「初耳です。でも、そうですよね。フローラ様なら他国の王族にも望まれますよね」
「いえ、そうでなくて・・・」
フローラがなんだかほほえましそうに私を見るけど、私なにかおかしいこと言った?
でも、そうか。王太子妃教育、もう始めるんだ。
私も魔術の実技、どうにかしないと。しかし、隠し切れるだろうか。私が闇の魔力持ちで・・・闇の聖女と呼ばれる存在であることを。
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