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夢と現と
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夢を見ていた。
ううん。夢だと思っているだけで、もしかしたらこれが現実なのかもしれない。
目の前には、私を憎々しげに睨むシオンにソル、ハロルド達がいて、フローラは憐れむような瞳で、私を見つめている。
「お前のような醜悪な人間と半分とはいえ血が繋がっているなどおぞましい」
「お兄様・・・」
「兄などと呼ばないでもらおう!聖女であるフローラを虐めるような妹などいないっ!!」
吐き捨てるようにシオンに言われ、私は息をのんだ。
違う。フローラを虐めたりしていない。そう言いたいのに、声が出ない。
私を睨むみんなの視線に、そのまま床にへたり込んだ。
やっぱり、みんなに大切にされてると思ってたあれが夢だったんだ。
私は聖女であるフローラを害する悪役で、みんなに嫌われてて・・・
胸が詰まって、涙が滲んでくる。
嬉しかったのに・・・
悪役令嬢になりたくないから、攻略対象とは距離を置こうって思ってたけど、でもそんな中で、シオンもフローラもみんな優しくしてくれて、本当は嬉しかったのに・・・
「やだよぅ。嫌いにならないで・・・」
「リアナ?」
聞こえてきた声に瞼を開けると、心配そうに私の顔を覗き込むシオンの瞳と目が合った。
ぼろぼろとこぼれ続ける涙を、シオンがそっと指先で拭う。
「リアナ、大丈夫かい?怖い夢でも見たの?」
優しく髪を撫でてくれるシオンに、私はベッドから身を起こして抱きついた。
「ふっ・・・ふぇぇぇぇん」
「僕の可愛いリアナ。泣かないで。怖かったね」
抱きしめて背中をさすってくれるシオンに、涙が止まらない。
「リアナ様、俺がもっと早く駆けつけていれば。申し訳ございません」
謝罪の言葉に、シオンの胸から顔を上げると、ソルがベッド脇で頭を下げていた。
その表情は、辛そうに顔を曇らせている。
「ソル・・・何でそんな顔するの?」
「俺がお側を離れなければ、あんな怖い思いをさせずに済んだのに」
「・・・?ソルが助けてくれたから、私、怪我しなかったの。ありがとう、ソル」
私がそう言うと、ソルは切なそうな、苦しそうな、そんな表情で私を見つめた。
「リアナ?もう大丈夫かな?涙は止まった?」
「はい。お兄様。ごめんなさい、怖い夢を見て・・・」
本当に、怖かった。
最初は自分は悪役令嬢なのだから、みんなに嫌われてるって理解しているつもりだったのに。
みんなに大切にされて。優しくされて。もう独りぼっちになるのが怖くなってたんだ。
「そう。どんな夢だったの?」
「・・・お兄様が・・・私なんか妹じゃないって・・・ソルもみんなも・・みんな、嫌いにならないでぇ・・・」
「ごめん!ごめんよ、リアナ!お願いだから泣かないでおくれ!怖い夢の話なんか聞いた僕が悪かった。リアナは僕の可愛い妹だよ。嫌いになったりしない!」
シオンが慌てて、私を抱きしめた。背中を撫でながら、私の旋毛に何度も口づけを落とす。
「嫌いに、ならない?」
「大好きだよ。僕の可愛い天使」
「ソルも、嫌いになったりしない?」
「もちろんです」
ソルはフローラを好きなはずだから、好きとは思われなくても、嫌われないなら・・・いいかな。
ゲームを作ってたときは気づかなかった。悪役令嬢ってこんなに苦しいものなんだ。
人に嫌われたり憎まれたりするのって、こんな辛いことなんだ。
私、みんなにもっと優しくできるよう頑張ろう。
ここは花乙の世界なのかもしれないけど、私はもうあんな風にみんなに嫌われたら生きていけない。
いや、実際、断罪されて処刑されちゃうけど、精神的な意味でももう無理だ。
私は心にそう強く決意すると、涙の残った顔で、シオンににっこりと微笑んだ。
ううん。夢だと思っているだけで、もしかしたらこれが現実なのかもしれない。
目の前には、私を憎々しげに睨むシオンにソル、ハロルド達がいて、フローラは憐れむような瞳で、私を見つめている。
「お前のような醜悪な人間と半分とはいえ血が繋がっているなどおぞましい」
「お兄様・・・」
「兄などと呼ばないでもらおう!聖女であるフローラを虐めるような妹などいないっ!!」
吐き捨てるようにシオンに言われ、私は息をのんだ。
違う。フローラを虐めたりしていない。そう言いたいのに、声が出ない。
私を睨むみんなの視線に、そのまま床にへたり込んだ。
やっぱり、みんなに大切にされてると思ってたあれが夢だったんだ。
私は聖女であるフローラを害する悪役で、みんなに嫌われてて・・・
胸が詰まって、涙が滲んでくる。
嬉しかったのに・・・
悪役令嬢になりたくないから、攻略対象とは距離を置こうって思ってたけど、でもそんな中で、シオンもフローラもみんな優しくしてくれて、本当は嬉しかったのに・・・
「やだよぅ。嫌いにならないで・・・」
「リアナ?」
聞こえてきた声に瞼を開けると、心配そうに私の顔を覗き込むシオンの瞳と目が合った。
ぼろぼろとこぼれ続ける涙を、シオンがそっと指先で拭う。
「リアナ、大丈夫かい?怖い夢でも見たの?」
優しく髪を撫でてくれるシオンに、私はベッドから身を起こして抱きついた。
「ふっ・・・ふぇぇぇぇん」
「僕の可愛いリアナ。泣かないで。怖かったね」
抱きしめて背中をさすってくれるシオンに、涙が止まらない。
「リアナ様、俺がもっと早く駆けつけていれば。申し訳ございません」
謝罪の言葉に、シオンの胸から顔を上げると、ソルがベッド脇で頭を下げていた。
その表情は、辛そうに顔を曇らせている。
「ソル・・・何でそんな顔するの?」
「俺がお側を離れなければ、あんな怖い思いをさせずに済んだのに」
「・・・?ソルが助けてくれたから、私、怪我しなかったの。ありがとう、ソル」
私がそう言うと、ソルは切なそうな、苦しそうな、そんな表情で私を見つめた。
「リアナ?もう大丈夫かな?涙は止まった?」
「はい。お兄様。ごめんなさい、怖い夢を見て・・・」
本当に、怖かった。
最初は自分は悪役令嬢なのだから、みんなに嫌われてるって理解しているつもりだったのに。
みんなに大切にされて。優しくされて。もう独りぼっちになるのが怖くなってたんだ。
「そう。どんな夢だったの?」
「・・・お兄様が・・・私なんか妹じゃないって・・・ソルもみんなも・・みんな、嫌いにならないでぇ・・・」
「ごめん!ごめんよ、リアナ!お願いだから泣かないでおくれ!怖い夢の話なんか聞いた僕が悪かった。リアナは僕の可愛い妹だよ。嫌いになったりしない!」
シオンが慌てて、私を抱きしめた。背中を撫でながら、私の旋毛に何度も口づけを落とす。
「嫌いに、ならない?」
「大好きだよ。僕の可愛い天使」
「ソルも、嫌いになったりしない?」
「もちろんです」
ソルはフローラを好きなはずだから、好きとは思われなくても、嫌われないなら・・・いいかな。
ゲームを作ってたときは気づかなかった。悪役令嬢ってこんなに苦しいものなんだ。
人に嫌われたり憎まれたりするのって、こんな辛いことなんだ。
私、みんなにもっと優しくできるよう頑張ろう。
ここは花乙の世界なのかもしれないけど、私はもうあんな風にみんなに嫌われたら生きていけない。
いや、実際、断罪されて処刑されちゃうけど、精神的な意味でももう無理だ。
私は心にそう強く決意すると、涙の残った顔で、シオンににっこりと微笑んだ。
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