乙女ゲームの正しい進め方

みおな

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「すごいですわね。まさか、紹介があるとは思いませんでした」

 普通の夜会や舞踏会なら、入場の際に名乗りというか紹介がある。

 でも学園の舞踏会でそれがあるとは思わなかったわ。

「社交界に出るための、予行練習みたいなものですもの」

 ジニア様の言葉に、なるほどと納得する。

「でも、その靴。歩きにくくはありませんの?」

「慣れですわ。アゼリア様にもお渡ししましたの。あ。ほら、見えましたわ」

 ジニア様は私の背が高くなっていることに驚いていて、私はこっそりと靴の底が厚いのだと教えてあげた。

 確かに厚底ブーツを知らない人から見たら、歩きにくそうに見えるでしょうね。

 慣れないと転んでしまうけど、前世ではこれを履いてめっちゃ踊ってる歌手がいたもの。

 アゼリア様が、トリヤ様にエスコートされてやって来た。

 アゼリア様は、トリヤ様の髪色の、赤のドレスなのね。
 デザインは可愛らしいのに、黒の刺繍が入っていて、大人びて見えるわ。

 ジニア様は、レモンイエローのドレスに、琥珀のネックレスとイヤリング。ドレスの刺繍と宝飾品がシーダ様色ね。

 シーダ様はお揃いのレモンイエローに、チーフが濃紅色。

 あとは、アスター様たちとエルム兄様ね。

 身分順に呼ばれてるから、アスター様とカトレア様は既に入場されてるはず。

 そういえば、子爵令嬢のデイジーももういるはずよね。
 誰のエスコートで来たのかしら?

 キョロキョロと、いえ視線だけよ?キョロキョロと周囲を見るなんて淑女として失格だからね?ヒロインの姿を探す。

 と。
入口付近で、ぎゃあきゃあと喚き散らす声が聞こえた。

「あ」

 紫色のドレス・・・なんか遠目にもリボンやフリルがゴテゴテと付いてるのが見えるけど、を着たデイジーがエルム兄様の隣に立つサフィニア様を突き飛ばそうとしていた。

 サフィニア様は、淡い水色から紫色にグラデーションしたドレスを着ていて、エルム兄様の色を纏っていても、そのセンスの差は歴然だ。

 そして、水色の礼服を着たエルム兄様のお顔が、怒りに満ちてるわ。

 ヤバい。ヤバい。
現在、エルム兄様はサフィニア様のことを溺愛と言っても過言でないくらい大切にしているのよ。

 そのサフィニア様を突き飛ばそうとするなんて!

 デイジーは本気で自分がヒロインで、この世界はヒロインのための世界だと思ってるの?

 もしここが乙女ゲームの世界だとしても、あなたは誰も攻略出来てないでしょうが。

 『花盗人の日記』は攻略がそうでなくても難しいのよ?





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