乙女ゲームの正しい進め方

みおな

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 その後、トリヤ様とアゼリア様は、二人きりでお話することとなった。

 といっても、やっぱり気になるので、王宮の庭園で会ってもらうことにした。
 ほら、もしトリヤ様がヒロインを選ぶって言ったら、アゼリア様を慰めないとね。

 もちろん、話が聞こえない場所で待機しているわけだけど。

「ねぇ、リズ。今回のことが片付いたら、その・・・来月にある舞踏会、一緒に出てくれない?」

 目の前で紅茶を飲みながら、シスルが珍しく思案しながら尋ねてきた。

 来月の舞踏会。
学園で年に一回行われる夜会の予行練習のようなものだ。

 基本的に学園生のみでパートナーを組むのだが、婚約者のいる者は要らぬ誤解や騒動を避けるために、欠席するか、婚約者を同伴することになっている。

「リズと僕では身長差もあるし、踊りにくいだろうけど」

「ふふっ、そうですね。木にしがみついたセミみたいに見えるでしょうか」

「リズは小柄なところも可愛いんだけど、周囲に変な目で見られるかもしれないから・・・」

 ああ。そっか。
珍しくシスルが歯切れが悪いと思ったら、私が馬鹿にされるかもしれないと思ったのね。

 王女である私を嘲笑する馬鹿は、まぁ少なくともヒロイン以外にはいないと思うけど、人の心の中までは分からないものね。

 もしかしたら公爵家嫡男のシスルと婚約した私のことを、憎いと思っている人もいるかもしれない。

 五歳も年下の子供。
身長も年齢も釣り合ってなくて、身分だけでシスルと婚約した王女。

 そんなところかしら?

 ま。私は気にしないけどね。
 シスルが私を好きでいてくれること、今はちゃんと分かっているもの。

「私でよろしければ、是非ご一緒させてください」

「本当にいいの?」

「ええ。そのかわり、私が学園生になった時は、シスル様がパートナーをしてくださいね?」

「もちろん!」

 シスルの顔に笑顔が浮かぶ。
私も、嬉しい。

 私とシスルはもう婚約者だから、お互い死に別れる以外は、この先もずっと一緒である。

 何年先も変わらない関係だけど、何年先もこんな風にそばにいたいって思える関係でありたい。

「アイリス様」

 話し終えたのか、アゼリア様が駆け寄ってくる。
 後ろから、トリヤも歩いてきていた。

「アゼリア様」

「アイリス様、ありがとうございます。お話する勇気を与えてくださったおかげで、トリヤ様のお気持ちを知ることができました」

「シスル、感謝する。俺は甘い考えをしていた。何が大切か、ちゃんと理解していなかった」

 あの表情だと、ヒロインではなくアゼリア様を選んだのだろう。

 さて。あのヒロインはどう出るのかしら?
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