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しおりを挟む「少し、お話を聞いてもらえますか。辺境伯の男性と、その婚約者の伯爵令嬢の話ですわ。その男性はとても婚約者のことを大切に思っていて、婚約者も彼のことをとてもお慕いしていました。二人は婚約し、お互いの家族との顔合わせをしました。家族もみんな受け入れてくれたのですが、彼の兄の五歳の娘だけが、伯爵令嬢を嫌ったのです。叔父のお嫁さんになるのは自分だとね」
「幼い子供にはよくあることですね」
アゼリア様の言葉に、私は頷いた。
「ええ。幼い子供の言うことです。伯爵令嬢もどんなに嫌われても文句なんて言えるわけがありません。彼も彼女に謝りながらも、幼い姪を宥め甘やかしていました。でも、彼と一緒にいたくても少女に邪魔をされ、ひどい言葉をぶつけられ、令嬢の表情は少しずつ暗いものになっていき、そして令嬢は自害してしまいました」
「!」
「令嬢を大切に思う家族は彼との婚約解消を求め、彼への想いと家族の優しさの板挟みになっていたのです。婚約者は、ショックのあまり、辺境伯家から離籍し、騎士として戦場に向かい戦死しました。アゼリア様。一体、誰が悪かったと思われますか?」
アゼリア様は、少し迷われた後「彼・・・でしょうか」と呟いた。
「そうですね。でも、私は思うのです。彼女も、嫌われたくないなどと言わずに、彼にもっと我儘を言えば良かったんじゃないでしょうか。姪ではなく、私といて欲しいと。そして、姪の両親も、娘を叱るべきだったんじゃないでしょうか。そして、アゼリア様の言う通り、彼も姪を拒絶するべきだったんです。どんなに泣かれても、嫌われても」
「みんな、それぞれが悪かったんですね」
「一番は彼かもしれませんが、彼女は立派な淑女だったから、彼は彼女の苦悩に気付いてなかったのかもしれません。言葉にしなければ伝わらないことってあると思います」
黙っていても理解ってもらいたいなんて、傲慢だと思う。
伯爵令嬢は、私を選ぶ前に婚約者に自分の気持ちを吐露するべきだったんだ。
「彼も、自分にとって何が大切なのかもっと考えるべきだったんです。たったひとつしか手元に残らないとして、何を望むのか。彼はその選択が出来なかったから、全ての人を不幸にしてしまったんです。婚約者も。婚約者の家族も。自分も。それから、兄夫婦も姪も」
姪はいつか自分の言動のせいで叔父も、その婚約者も死んでしまったことに気付く。
子供の可愛い我儘だと、何故寛容に出来なかったのだと言う人もいるだろう。
でも、彼の家族に好かれたいと願っていた令嬢にとって、好かれたい人に拒絶される辛さはどれほどのものだったのだろうか。
「幼い子供にはよくあることですね」
アゼリア様の言葉に、私は頷いた。
「ええ。幼い子供の言うことです。伯爵令嬢もどんなに嫌われても文句なんて言えるわけがありません。彼も彼女に謝りながらも、幼い姪を宥め甘やかしていました。でも、彼と一緒にいたくても少女に邪魔をされ、ひどい言葉をぶつけられ、令嬢の表情は少しずつ暗いものになっていき、そして令嬢は自害してしまいました」
「!」
「令嬢を大切に思う家族は彼との婚約解消を求め、彼への想いと家族の優しさの板挟みになっていたのです。婚約者は、ショックのあまり、辺境伯家から離籍し、騎士として戦場に向かい戦死しました。アゼリア様。一体、誰が悪かったと思われますか?」
アゼリア様は、少し迷われた後「彼・・・でしょうか」と呟いた。
「そうですね。でも、私は思うのです。彼女も、嫌われたくないなどと言わずに、彼にもっと我儘を言えば良かったんじゃないでしょうか。姪ではなく、私といて欲しいと。そして、姪の両親も、娘を叱るべきだったんじゃないでしょうか。そして、アゼリア様の言う通り、彼も姪を拒絶するべきだったんです。どんなに泣かれても、嫌われても」
「みんな、それぞれが悪かったんですね」
「一番は彼かもしれませんが、彼女は立派な淑女だったから、彼は彼女の苦悩に気付いてなかったのかもしれません。言葉にしなければ伝わらないことってあると思います」
黙っていても理解ってもらいたいなんて、傲慢だと思う。
伯爵令嬢は、私を選ぶ前に婚約者に自分の気持ちを吐露するべきだったんだ。
「彼も、自分にとって何が大切なのかもっと考えるべきだったんです。たったひとつしか手元に残らないとして、何を望むのか。彼はその選択が出来なかったから、全ての人を不幸にしてしまったんです。婚約者も。婚約者の家族も。自分も。それから、兄夫婦も姪も」
姪はいつか自分の言動のせいで叔父も、その婚約者も死んでしまったことに気付く。
子供の可愛い我儘だと、何故寛容に出来なかったのだと言う人もいるだろう。
でも、彼の家族に好かれたいと願っていた令嬢にとって、好かれたい人に拒絶される辛さはどれほどのものだったのだろうか。
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