乙女ゲームの正しい進め方

みおな

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 トリヤとアゼリア様の婚約について、私が口を挟むことは出来ない。

 これはダフォディル家とリンデン家の問題であって、身内でもない私には何も出来ることがないのだ。

 これがよくある乙女ゲームのように、一緒に通う学園内で起きていることなら、何か手出しもできたかもしれないけれど、私もアゼリア様もまだ学園に通えていない。

 アゼリア様が伯爵夫妻に何も話していないということもあるし、一度アゼリア様と話してみるべきかもしれない。

 リンデン伯爵家に訪問しても良いんだけど・・・

「シスル様は、ダフォディル様と、子爵令嬢のこと、どう思われます?」

 エルム兄様に連れて行かれたサフィニア様と入れ替わるように、私の隣でお茶を飲んでいるシスルに尋ねた。

 エルム兄様は、トリヤはヒロインを選ぶことはないって言ってたけど。

 それはそれで、ヒロインとしてどうなのかなとは思うけど。

「何でそんなこと聞くの?」

「アゼリア様のことが心配で。私としては、ダフォディル様がどなたと恋仲になろうと、婚約しようと、どうでもいいのですが。ああ、でも、エルム兄様の側近になられるのでしたら、その婚約者があの方というのは少々・・・」

 シスルは、少し不機嫌そうに眉を顰めていたが、私の答えを聞いて表情を緩めた。

 基本シスルは無表情(私相手以外)とされてるけど、婚約者になってから、少しずつ解るようになってきた。

「トリヤは・・・甘いんだよ。幼馴染だというあの女を切り捨てられない。恋愛感情じゃないくせに、拒否することができない」

「そう・・・ですか」

 シスルは無表情で、キツい物言いをするけど、冷たい人間ではない。

 共にエルム兄様を支える予定の、トリヤのことを友人として大切に思っているのだと思う。

 確かに幼馴染が頼って縋ってきたら、切り捨てるのは苦しいだろう。

 だけど、トリヤは伯爵令息でダフォディル伯爵家の嫡男だ。

 王太子殿下の護衛騎士で伯爵家を継ぐ者が、親しい間柄だからといって、厳しい判断ができないようでは駄目だ。

 もちろん、アゼリア様とは婚約者候補にしかすぎないのだから、デイジーを選ぶことは可能だ。

 とりあえずは子爵令嬢であることだし、身分的には問題ない。

 デイジーが乙女ゲームのヒロインのように、真摯に伯爵夫人となるべく努力するのなら、トリヤも護衛騎士の任に就けるだろう。

 だけど、態度や考えを改めないのなら。
そして、改めないデイジーを選ぶのなら、トリヤはエルム兄様の護衛騎士にはなれない。

 不貞を働きかねない人間を、王族に近づけるわけにはいかないのだ。
 





 
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