乙女ゲームの正しい進め方

みおな

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 なんでこんなことになっているのか。

 隣に立つシスルの笑顔が怖い。
離れたいくらい怖いけど、ここで離れるのが悪手ということくらい私にも分かっている。

 発端は、アゼリア様の一言だった。

「婚約者候補の皆様と、殿下の側近候補の皆様とで、我がリンデン領に遊びに来られませんか?」

 リンデン伯爵領は果物の名産地で、今の時期だとカルルというすももに似た果物が食べ頃なのだそうだ。

 暑くなって来たし、避暑を兼ねて来ませんか?とエルム兄様に会いに王宮へ来ていたアゼリア様から誘われた。

 お父様たちも行ってきていいと言ったのだけど、問題はシスルである。

 シスルもエルム兄様の側近候補だから一緒に行くのには違いないんだけど、シスルはどうも他の人と私が一緒なのが嫌いなのである。

 家族や他のご令嬢なら、シスルが一緒にいればそんなにご機嫌を損ねないが、異性がいると話は別。

 五歳も年下の子供を彼らは恋愛対象には見ない。

 そんなことは言えない。だって「僕は君をそういう対象として見てるんだけど?」って絶対言われる。

 私も学習するのである。

 アゼリア様に言われて、行ってみたいと即答したのが駄目だったのか。

「あの・・・シスル様?」

「なに?」

 うゔ、怖い。

「勝手に決めてごめんなさい」

 相談してからにすればよかった。アゼリア様なら、シスルに聞いてからって言っても待ってくれたはずなのに。

 しゅんと眉尻を下げた私に、シスルはハァと息を吐いた。

「別に怒ってないよ」

「本当に?」

「・・・一番最初に、フロックスの領へと招待しようと思ってたんだよ。それに、リズの可愛い普段着を他の奴らに見られたくないだけ」

「私は、シスル様の普段着・・・楽しみです」

 攻略対象たちは、皆さんイケメンである。
 さすがにエルム兄様は兄としてしか見てないけど、みんなかっこいいと思う。

 推しの普段着!
寝起きの顔も、お風呂上がりなんかも見れちゃうかもしれない。

「僕のなんてなんの面白みもないよ」

「面白みなんて求めてません。シスル様は、その・・・何を着てらしても素敵ですから」

「・・・・・・殿下より?」

「エルム兄様?」

 ゲームの中のエルムはかっこよかったというか、王道の王子様だな~とは思ったけど、この世界に転生して妹になってから、兄をかっこいいと思ったことはないわ。

 私はブラコンじゃないもの。

「兄様の服は侍女が選んでますから、エルム兄様がおしゃれかは分かりません。でも、王子ですからそれなりにかっこいい部類だとは思いますよ」

 ジニア様たちがそう思ってくれてるかはわからないけど、その他大勢にはかっこいいと思われてると思うわ。




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