28 / 51
27
しおりを挟む
「え?」
婚約は、解消とか出来ないから、お互いをよく知ってからでしょう?
私の反応が気に入らなかったのか、シスルがずいっと近づいて来る。
「何?嫌なの?」
黒い。黒い!黒い!笑顔なのに、めっちゃ怖い!
「い、嫌なわけありません!わ、私はシスル様のことが好きですから!」
「好き?」
「はい!」
「そう。なら婚約しても良いよね」
私は、シスルは推しだったし、どんなシスルでも嫌いになることはないと思う。
でも、シスルは良いの?
ヒロインは、シスルを選ぶかもしれないのに。
「シスル様は・・・よろしいのですか?私はシスル様より五歳も年下で。シスル様に相応しい方は他にいらっしゃるかもしれないのに」
せめて同い年や一つ下くらいなら、王女という身分もあるし、アイリスは最近表情筋も多少働き出したから、他の人に譲ったりしないけど。
五歳って大きいと思う。
「一年待てば、その年の差縮まるの?」
「え?いえ、縮まりませんけど」
「じゃあ、今するのも一年先にするのも変わらないよね。むしろ早くしたほうが、もっと仲良くなれるでしょ」
それはそうかもしれないけど・・・
シスルは一年先も私を婚約者に望んでくれるの?
「シスル様は、私を選んで後悔しませんか?」
「なんで?こっちから申し込もうと思ってたところに、まさかの王家からの申し込みだよ?殿下や他の横槍が入る前に、さっさと僕のものにしちゃわなきゃ駄目でしょ」
え?今こっちから申し込もうと思ってたって言った?
あ、でもフロックス公爵家なら、王女の降嫁先としては最適よね。
フロックス公爵家としても、シスルが想いを寄せているご令嬢がいないのなら、王女を娶るのは好手だわ。
確かに、婚約者候補の時期が長いと、お父様やエルム兄様が騒ぎそう。
婚約してしまった方が、あの過保護なのがマシになるかもしれないわ。
「シスル様に少しでも私で良かったと思っていただけるように、精進しますわ」
「・・・全く伝わってる気がしないけど・・・まぁ、いいか。これからじっくり教えていけば良いし」
「シスル様?」
「なんでもない。さ、婚約することにしたって伝えに行こうか」
小声過ぎて聞こえなかったから聞き返したけど、なんでもないと言われたわ。
エスコートのために手を差し出してくれた表情は普通だったから、本当になんでもなかったのね。
手のひらにそっと手を重ねると、シスルは指を絡めるように、ぎゅっと握った。
「シスル様ッ」
「恥ずかしい?慣れてね」
赤くなった頬を隠すように、俯いて歩く。
婚約者候補の打診の日に、即婚約だなんて、お父様とエルム兄様、卒倒するんじゃないかしら。
婚約は、解消とか出来ないから、お互いをよく知ってからでしょう?
私の反応が気に入らなかったのか、シスルがずいっと近づいて来る。
「何?嫌なの?」
黒い。黒い!黒い!笑顔なのに、めっちゃ怖い!
「い、嫌なわけありません!わ、私はシスル様のことが好きですから!」
「好き?」
「はい!」
「そう。なら婚約しても良いよね」
私は、シスルは推しだったし、どんなシスルでも嫌いになることはないと思う。
でも、シスルは良いの?
ヒロインは、シスルを選ぶかもしれないのに。
「シスル様は・・・よろしいのですか?私はシスル様より五歳も年下で。シスル様に相応しい方は他にいらっしゃるかもしれないのに」
せめて同い年や一つ下くらいなら、王女という身分もあるし、アイリスは最近表情筋も多少働き出したから、他の人に譲ったりしないけど。
五歳って大きいと思う。
「一年待てば、その年の差縮まるの?」
「え?いえ、縮まりませんけど」
「じゃあ、今するのも一年先にするのも変わらないよね。むしろ早くしたほうが、もっと仲良くなれるでしょ」
それはそうかもしれないけど・・・
シスルは一年先も私を婚約者に望んでくれるの?
「シスル様は、私を選んで後悔しませんか?」
「なんで?こっちから申し込もうと思ってたところに、まさかの王家からの申し込みだよ?殿下や他の横槍が入る前に、さっさと僕のものにしちゃわなきゃ駄目でしょ」
え?今こっちから申し込もうと思ってたって言った?
あ、でもフロックス公爵家なら、王女の降嫁先としては最適よね。
フロックス公爵家としても、シスルが想いを寄せているご令嬢がいないのなら、王女を娶るのは好手だわ。
確かに、婚約者候補の時期が長いと、お父様やエルム兄様が騒ぎそう。
婚約してしまった方が、あの過保護なのがマシになるかもしれないわ。
「シスル様に少しでも私で良かったと思っていただけるように、精進しますわ」
「・・・全く伝わってる気がしないけど・・・まぁ、いいか。これからじっくり教えていけば良いし」
「シスル様?」
「なんでもない。さ、婚約することにしたって伝えに行こうか」
小声過ぎて聞こえなかったから聞き返したけど、なんでもないと言われたわ。
エスコートのために手を差し出してくれた表情は普通だったから、本当になんでもなかったのね。
手のひらにそっと手を重ねると、シスルは指を絡めるように、ぎゅっと握った。
「シスル様ッ」
「恥ずかしい?慣れてね」
赤くなった頬を隠すように、俯いて歩く。
婚約者候補の打診の日に、即婚約だなんて、お父様とエルム兄様、卒倒するんじゃないかしら。
25
お気に入りに追加
304
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
悪役令嬢が攻略対象の幸せを願っては駄目ですか?
こうやさい
恋愛
乙女ゲームの最萌えルートの義妹かつ悪役令嬢に転生している事に気づいた。
・細切れです
・三話目までは一日一話投稿します
・その後は順次最新話のしおり数が前話のしおり数を超えるかつ五以上あるときに予約します
・投稿時間の変更は今回予定しておりません
・確認も予約も手動なので状況によっては条件を満たしていても遅れる事があります
・今後の参考にするために考えたやり方なので非実在他の読者のために読んでないのにしおりを付けたり進めたりする事はご遠慮下さい
・二週間経っても前話のしおり数を超えない、最新話のしおり数が五に満たない、その他これ以上参考にならないと判断した場合、あるいは運営に怒られた場合はこの更新方法は中止します。その後の更新をどうするかは未定です
・内容的にはいつものです
・一応完結しているシロモノですが、途中で問題を見つけた場合、上記の条件に関係なく更新停止する可能性があります
・条件を満たさない間に他の話を更新をする可能性があります
本編以外はセルフパロディです。本編のイメージ及び設定を著しく損なう可能性があります。ご了承ください。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ
朝霞 花純@電子書籍化決定
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。
理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。
逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。
エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。
嫁ぎ先は悪役令嬢推しの転生者一家でした〜攻略対象者のはずの夫がヒロインそっちのけで溺愛してくるのですが、私が悪役令嬢って本当ですか?〜
As-me.com
恋愛
事業の失敗により借金で没落寸前のルーゼルク侯爵家。その侯爵家の一人娘であるエトランゼは侯爵家を救うお金の為に格下のセノーデン伯爵家に嫁入りすることになってしまった。
金で買われた花嫁。政略結婚は貴族の常とはいえ、侯爵令嬢が伯爵家に買われた事実はすぐに社交界にも知れ渡ってしまう。
「きっと、辛い生活が待っているわ」
これまでルーゼルク侯爵家は周りの下位貴族にかなりの尊大な態度をとってきた。もちろん、自分たちより下であるセノーデン伯爵にもだ。そんな伯爵家がわざわざ借金の肩代わりを申し出てまでエトランゼの嫁入りを望むなんて、裏があるに決まっている。エトランゼは、覚悟を決めて伯爵家にやってきたのだがーーーー。
義母「まぁぁあ!やっぱり本物は違うわぁ!」
義妹「素敵、素敵、素敵!!最推しが生きて動いてるなんてぇっ!美しすぎて眼福ものですわぁ!」
義父「アクスタを集めるためにコンビニをはしごしたのが昨日のことのようだ……!(感涙)」
なぜか私を大歓喜で迎え入れてくれる伯爵家の面々。混乱する私に優しく微笑んだのは夫となる人物だった。
「うちの家族、みんな君の大ファンなんです。悪役令嬢エトランゼのねーーーー」
実はこの世界が乙女ゲームの世界で、私が悪役令嬢ですって?!
えーと、まず、悪役令嬢ってなんなんですか……?!
【完結】不倫をしていると勘違いして離婚を要求されたので従いました〜慰謝料をアテにして生活しようとしているようですが、慰謝料請求しますよ〜
よどら文鳥
恋愛
※当作品は全話執筆済み&予約投稿完了しています。
夫婦円満でもない生活が続いていた中、旦那のレントがいきなり離婚しろと告げてきた。
不倫行為が原因だと言ってくるが、私(シャーリー)には覚えもない。
どうやら騎士団長との会話で勘違いをしているようだ。
だが、不倫を理由に多額の金が目当てなようだし、私のことは全く愛してくれていないようなので、離婚はしてもいいと思っていた。
離婚だけして慰謝料はなしという方向に持って行こうかと思ったが、レントは金にうるさく慰謝料を請求しようとしてきている。
当然、慰謝料を払うつもりはない。
あまりにもうるさいので、むしろ、今までの暴言に関して慰謝料請求してしまいますよ?
私を追い出した結果、飼っていた聖獣は誰にも懐かないようです
天宮有
恋愛
子供の頃、男爵令嬢の私アミリア・ファグトは助けた小犬が聖獣と判明して、飼うことが決まる。
数年後――成長した聖獣は家を守ってくれて、私に一番懐いていた。
そんな私を妬んだ姉ラミダは「聖獣は私が拾って一番懐いている」と吹聴していたようで、姉は侯爵令息ケドスの婚約者になる。
どうやらラミダは聖獣が一番懐いていた私が邪魔なようで、追い出そうと目論んでいたようだ。
家族とゲドスはラミダの嘘を信じて、私を蔑み追い出そうとしていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる