乙女ゲームの正しい進め方

みおな

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 婚約の話はフロックス公爵家へと伝わり、今日私は改めてシスルと会うことになった。

 今日から最長で一年、婚約者候補としてお互いを知るために毎日交流することになる。

 というのも、この世界、いやこの国では婚約解消が認められない。
 当然のことながら、離婚も駄目。

 そのための、お互いを知る期間らしい。
つまりは、この期間のうちにお互いを見極められなかったら、それはお互いのミスであり、己の失敗は自分で責任を持て、ということらしい。

 死別したら再婚は認められるけど、死因に関してはものすごく調べられるそうだ。

 候補の間は、相手が他の人と交流することを止める権利はない。
 ただし、友人以上の接触は禁止。
ま、そりゃそうだ。エスコートで触れる時も、手袋着用。

 一年待たなくても、お互いがいいなら直ぐに婚約者になることは可能らしい。

 そんなことを頭の中で考えながら、シーラに髪を結ってもらう。

 正式なものになるから、ちゃんとしたドレスを着て、お父様お母様とフロックス公爵夫妻同伴での顔合わせだ。

 シスルの髪や瞳の色を纏うのは、婚約者になってから。
 それまでは、他に誤解を与えないためにも、相手の色を纏うのは禁止。

 なので今日は、淡い藤色のドレスに、髪はハーフアップにして藤色のリボンをつけてもらった。

「あら、いつも以上に可愛いわね、アイリス」

「ありがとうございます、お母様。お父様?」

「可愛いアイリスに婚約者ができるのは嫌だが、アイリスが選ばれないのも腹が立つし・・・」

 うん?
なんだか妙なことを口走ってるから、放置しよう。

 お母様を見上げたら、それはそれは冷ややかにお父様を睨んでいた。

 扉の前の騎士が室内に声をかけて、扉を開く。

 身分が上の者が後から入室するのは、この国では常識。

 室内では、フロックス公爵、公爵夫人、そしてシスルが立ち上がって、頭を下げていた。

「待たせた、フロックス公爵」

「いえ」

 立ったまま、公爵様、公爵夫人様、そしてシスルと自己紹介をし、お父様、お母様、そして私が名乗りをする。

 向かい合うように席につき、侍女によりお茶が配られたところで、ようやく婚約者候補の話になった。

「もし、他に婚約する予定のご令嬢がいるなら、そう言ってくれ」

「いえ。現在の時点で、シスルに婚約者候補はいません」

 ゲームの中でも、攻略対象たちに婚約者はいなかった。
 候補がいたかどうかはわからないけど。

「それでは、今日から最長で一年後までに、お互いを婚約者として望むか、よく分かり合うように」

 お互いの家長と本人同士のサインを書類にして、お互いが一部ずつ保管する。

 これが正式な婚約となると、教会と王家に正式書面が保管されるのだが、まだ候補なのでお互いのみだ。
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