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ヒロインであるディジーの話を聞いた日から、エルム兄様のヒロインに対する愚痴を毎日聞くことになった。
ある日は、後ろから駆け寄ってくるのを察知して避けたら、盛大に廊下で転げたこと。
ある日は、水やりをしている園芸部員の前をわざわざ通って、びしょ濡れになっていながら、近づいて来ようとしたこと。
ある日は、自分で破いた教科書を持って、何か言いたげに放課後の教室に残っていたこと。
「本当、鬱陶しいよ。何がしたいのやら」
「・・・」
何がしたいのか。
それは多分、兄様に興味を持ってもらって、攻略しようとしてるんだと思う。
というか。
ヒロインって、もしかして転生者?どう考えても、乙女ゲーム『花盗人の日記』の正統派ヒロインじゃないよね?
そしてやってることが、最終的にざまぁされるヒロインみたいなんだけど。
悪役令嬢いない乙女ゲームで、そんな演出しても意味ないでしょ。
心の中で叫びながら、兄様に話を聞く。
「もしかしたら、兄様と仲良くなさりたいのかもしれませんよ」
いや。絶対そうだと思うけどね。
大丈夫かな、ヒロイン。このままだと兄様ルートはバッドエンドだよ?
案の定、エルム兄様はその綺麗な顔を顰められた。
「あんなのと仲良くなるくらいなら、道端の犬とでも仲良くしたほうがマシだ」
「あら?兄様は犬派ですの?私は猫が好きですわ」
「い、いや、アイリスが好きなら・・・僕も猫の方が」
兄様がモゴモゴと何か言っているが、私はヒロインのことを考えていて、聞いていなかった。
野良犬の方がマシだと言われるヒロインってどういうこと?
私のお気に入りの乙女ゲームに、何してくれてんのよ。
目の前に正座させて、小一時間ほど説教してやりたいわ。
なんとか正規ルートに戻せないものか。
まだ、ゲームは序盤。
個別に攻略を進めるのは、学年が上がってからである。
と、ふと気付いた。
「兄様。もうすぐ交流祭がありますよね?」
「あれ?アイリスに交流祭の話をしたっけ?」
あ。しまった。
交流祭のことは、前世のゲームの記憶だ。
「ま、前にお聞きしましたわ」
「そうだっけ?で、交流祭がどうかした?」
「私、兄様の学園生活が見てみたいです」
交流祭とは、まぁいうならば学園祭みたいなもので、学園に入学したばかりの生徒たちが、お互いの交流を深めるのと、身内に学園での生活の様子を見せるために行われる。
二日間行われるそれは、クラスの催し物や学年別の対抗なんかもあって、まさに前世でいうところの学園祭だった。
ある日は、後ろから駆け寄ってくるのを察知して避けたら、盛大に廊下で転げたこと。
ある日は、水やりをしている園芸部員の前をわざわざ通って、びしょ濡れになっていながら、近づいて来ようとしたこと。
ある日は、自分で破いた教科書を持って、何か言いたげに放課後の教室に残っていたこと。
「本当、鬱陶しいよ。何がしたいのやら」
「・・・」
何がしたいのか。
それは多分、兄様に興味を持ってもらって、攻略しようとしてるんだと思う。
というか。
ヒロインって、もしかして転生者?どう考えても、乙女ゲーム『花盗人の日記』の正統派ヒロインじゃないよね?
そしてやってることが、最終的にざまぁされるヒロインみたいなんだけど。
悪役令嬢いない乙女ゲームで、そんな演出しても意味ないでしょ。
心の中で叫びながら、兄様に話を聞く。
「もしかしたら、兄様と仲良くなさりたいのかもしれませんよ」
いや。絶対そうだと思うけどね。
大丈夫かな、ヒロイン。このままだと兄様ルートはバッドエンドだよ?
案の定、エルム兄様はその綺麗な顔を顰められた。
「あんなのと仲良くなるくらいなら、道端の犬とでも仲良くしたほうがマシだ」
「あら?兄様は犬派ですの?私は猫が好きですわ」
「い、いや、アイリスが好きなら・・・僕も猫の方が」
兄様がモゴモゴと何か言っているが、私はヒロインのことを考えていて、聞いていなかった。
野良犬の方がマシだと言われるヒロインってどういうこと?
私のお気に入りの乙女ゲームに、何してくれてんのよ。
目の前に正座させて、小一時間ほど説教してやりたいわ。
なんとか正規ルートに戻せないものか。
まだ、ゲームは序盤。
個別に攻略を進めるのは、学年が上がってからである。
と、ふと気付いた。
「兄様。もうすぐ交流祭がありますよね?」
「あれ?アイリスに交流祭の話をしたっけ?」
あ。しまった。
交流祭のことは、前世のゲームの記憶だ。
「ま、前にお聞きしましたわ」
「そうだっけ?で、交流祭がどうかした?」
「私、兄様の学園生活が見てみたいです」
交流祭とは、まぁいうならば学園祭みたいなもので、学園に入学したばかりの生徒たちが、お互いの交流を深めるのと、身内に学園での生活の様子を見せるために行われる。
二日間行われるそれは、クラスの催し物や学年別の対抗なんかもあって、まさに前世でいうところの学園祭だった。
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