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モブ、呆れる。

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「僕は・・・」

 ヴェルハルトは、一旦言葉を切り、だけど意を決したように、イレーヌの顔を見つめた。

「イレーヌ。いや。イレーヌ・レジスタ公爵令嬢。僕は君のことが好きだ。僕は、君が側にいてくれることが当たり前だと思ってた。だから、君がそばに居なくなる、他の男のそばで、微笑む日が来ることを考えたら、胸が苦しくなった。君が・・・君が僕のことを好きでなくても、少しでも好きになってもらえるように努力する。君の隣に立つに相応しくなれるように。だから、婚約解消などと言わないで欲しい。イレーヌ、頼む」

 隣で聞いていても、ヴェルハルトの告白は誠実だと思えた。

 少なくとも、私が作った攻略対象に近いと思う。

 告白されたイレーヌはー

 その美しい顔に、ポロポロと涙をこぼしていた。

「殿下・・・ヴェル、ハルト様・・・」

「い、イレーヌ・・・な、泣かないで?ろ、ローラン嬢、どうしよう?」

「どうしようじゃありませんよ、殿下。こんなところで、イレーヌ様の可愛らしいお姿を他の方にお見せしていいのですか?ほら、早くお連れになって下さい」

 気丈なイレーヌの涙に、オタオタしているヴェルハルトをさっさと追いやる。

 こんな衆人の中では、イレーヌだってヴェルハルトの告白に応えることはできないだろう。

 私は、こういう告白を見たからといってなんとも思わない。なんたって現世にはドラマも漫画もなんならフラッシュモブみたいな告白劇もあった。

 だけど、周囲のクラスメイトは、何を見せられているんだ的な、目のやり場に困るみたいな顔をしていた。

 イレーヌの公爵令嬢としての立場を考えても、ここは場所を移させるべきだろう。
 私の言葉に、ヴェルハルトは頷いて、イレーヌの手を取り、教室から出て行った。

「アイル様」

「カレリア様。イレーヌ様のお気持ちが殿下に届いたみたいで、本当に良かったですよね」

「ええ。本当に」

 カレリアと微笑み合う。
ヴェルハルトは、イレーヌの大切さに気付いた。そして、普段は気丈なイレーヌの可愛らしさを見たことで、きっと惚れなおしたはずだ。

 来年にヒロインが現れても・・・
イレーヌから心を移さないのではないか。
 イレーヌが悪役令嬢な行動をするとは思えないし。

 チラッとオリバーを見る。
彼は、まだ呆然とそこに立ち、ヴェルハルトたちが出て行った入口を見つめたままだった。

 さて、この場をどうするべきか。
考えていると、復活したオリバーと目が合う。

「俺は、まだ認めていないからな!」

「君の頭の中は、相変わらず筋肉なんだね」

 何言ってんだ、こいつ!と思っていたら、涼やかな声が後ろから聞こえて来た。
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