上 下
46 / 65

第三十八話

しおりを挟む
 お父様の抗議のお手紙を受け、ブレンディ侯爵ご夫妻とイーサン様の弟君が我が家にいらっしゃいました。

 何故、当人のイーサン様がいらっしゃらないのかしら。

 いえ、別に会いたくはありませんけど。

 どうせ会っても反省するどころか、私を罵りそうですし。

 さすがに私の両親と、ご自身のご家族の前ではそこまではなさらないかしら?

「父上!」

「・・・も、申し訳ございませんでした」

「息子に促されなければ出来ない謝罪など、なんの意味もないな」

 お父様、本当のことを言ってはいけませんわ。

 馬鹿・・・阿呆・・・愚か・・・ええと、わ、悪い方ではないのでしょうけど、貴族当主としては能力不足ですわね。

 イーサン様のあの馬鹿な行動を監視もせず、国王陛下の手のひらの上で転がされ、ブレンディ侯爵家の未来に暗雲をもたらしたのは、間違いなく現侯爵様ですわ。

 さっさとイーサン様を再教育なさるか、私との婚約を解消してイーサン様を廃籍なさるかすれば、良かったんですわ。

「国王陛下相手に逆らえないのは仕方ないと思うが、息子の監視すら出来ないようではな。言っておくが、あんな愚か者を我が家で面倒を見るつもりはないぞ。爵位が継げないとはいえ、あまりに酷すぎだ」

「そ、それは・・・」

「そもそも、ブレンディ侯爵家の融資のための婚約なのに、何故あんな愚者を引き受けねばならんのだ?ヤツは最初から我が娘を見下していたぞ?すぐには婚約の解消はできんからな、様子を見ていたが悪化する一方だ」

「・・・いや、あの・・・」

 お父様。もうこの際だからと、言いたいことを全ておっしゃってますわね。

 まぁ、ドロシー王女殿下とアルバート様の婚約のことがなければ、私はすぐにでも婚約の解消をしたいくらいですし、気持ちは同じですけど。

 今回は、国王陛下と王妃殿下にも責任をとって退位していただく予定ですから、まどろっこしいですわね。

「今回は謝罪を受け入れて融資は続けるが、今度あの愚か者が何か問題を起こしたら、手を引かせてもらう」

「そっ、そんな・・・今カリスタ伯爵家からの融資がなくなれば、我が領地は・・・」

「なら、息子をちゃんと管理すればいいだろう?問題さえ起こさなければ融資続けてやる」

 さすがにブレンディ侯爵家の領民を見捨てるのは後味が悪いですが、侯爵様たちには爵位を返上して王家の管轄領にしてもらうしかありません。

 え?弟さんですか?
どこかのお馬鹿さんと違って、努力家で優秀だと噂ですし、がありますから、養子に迎える案がありますのよ。

 
しおりを挟む
感想 261

あなたにおすすめの小説

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

石女を理由に離縁されましたが、実家に出戻って幸せになりました

お好み焼き
恋愛
ゼネラル侯爵家に嫁いで三年、私は子が出来ないことを理由に冷遇されていて、とうとう離縁されてしまいました。なのにその後、ゼネラル家に嫁として戻って来いと手紙と書類が届きました。息子は種無しだったと、だから石女として私に叩き付けた離縁状は無効だと。 その他にも色々ありましたが、今となっては心は落ち着いています。私には優しい弟がいて、頼れるお祖父様がいて、可愛い妹もいるのですから。

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ
恋愛
 「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」  それが両親の口癖でした。  ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。  ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。  ですから私決めました!  王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。  

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

王家の面子のために私を振り回さないで下さい。

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ユリアナは王太子ルカリオに婚約破棄を言い渡されたが、王家によってその出来事はなかったことになり、結婚することになった。 愛する人と別れて王太子の婚約者にさせられたのに本人からは避けされ、それでも結婚させられる。 自分はどこまで王家に振り回されるのだろう。 国王にもルカリオにも呆れ果てたユリアナは、夫となるルカリオを蹴落として、自分が王太女になるために仕掛けた。 実は、ルカリオは王家の血筋ではなくユリアナの公爵家に正統性があるからである。 ユリアナとの結婚を理解していないルカリオを見限り、愛する人との結婚を企んだお話です。

もう愛は冷めているのですが?

希猫 ゆうみ
恋愛
「真実の愛を見つけたから駆け落ちするよ。さよなら」 伯爵令嬢エスターは結婚式当日、婚約者のルシアンに無残にも捨てられてしまう。 3年後。 父を亡くしたエスターは令嬢ながらウィンダム伯領の領地経営を任されていた。 ある日、金髪碧眼の美形司祭マクミランがエスターを訪ねてきて言った。 「ルシアン・アトウッドの居場所を教えてください」 「え……?」 国王の命令によりエスターの元婚約者を探しているとのこと。 忘れたはずの愛しさに突き動かされ、マクミラン司祭と共にルシアンを探すエスター。 しかしルシアンとの再会で心優しいエスターの愛はついに冷め切り、完全に凍り付く。 「助けてくれエスター!僕を愛しているから探してくれたんだろう!?」 「いいえ。あなたへの愛はもう冷めています」 やがて悲しみはエスターを真実の愛へと導いていく……  ◇ ◇ ◇ 完結いたしました!ありがとうございました! 誤字報告のご協力にも心から感謝申し上げます。

愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた

迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」  待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。 「え……あの、どうし……て?」  あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。  彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。 ーーーーーーーーーーーーー  侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。  吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。  自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。  だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。  婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。 ※基本的にゆるふわ設定です。 ※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます ※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。 ※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

処理中です...