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第十話

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 呆れたことに、イーサン様は第二王子殿下の婚約者であり、宰相閣下のご息女であり、公爵令嬢のダイアナ様のことを下に見ているらしいです。

 ダイアナ様の発言に、激昂したような声を上げました。

「この俺を愚弄するつもりかっ!」

 なんていうか、もう証拠集めとか必要なくないですか?

 王子殿下の婚約者である公爵令嬢に、こんな口の利き方をする方、王女殿下の近衛にしていていいのですか?

 国王陛下たちは、唯一の姫君に甘いらしいとお聞きしましたけど、他国に嫁がせるのならそれは悪手だと思います。

 いくら二人の王子殿下とその王子殿下の婚約者が優秀でも、ドロシー王女殿下とその近衛であるイーサン様の言動で、国が衰退するかもしれませんわ。

 しかし、もしイーサン様がダイアナ様に危害を加えるようなことがあってはいけません。

 会いたくはありませんが、静止した方が。

 そう思って教室を出ようとした私に、冷ややかな声が聞こえました。

「何を騒いでいる」

「ッ!が、学園長・・・」

 驚愕に掠れたイーサン様の声に、どうやら事態が治りそうだとホッとします。

 どうやら、この学園の学園長が現れたみたいです。

「ドロシー王女殿下に、ブレンディ侯爵令息か。君たちのクラスはここではないだろう。ここで何をしている」

 バートン学園長は、王弟殿下、つまりはドロシー王女殿下の叔父にあたる方です。

 ですが、身内贔屓するような方ではなく、むしろ身内にこそ厳しい方だと噂に聞きますわ。

「お、叔父様・・・」

「学園内では学園長と呼びなさい、クレメンタイン嬢」

「・・・ご、ごめんなさい」

「・・・再度言おう。ここは君たちのクラスではない。学園では問題行動を起こせば、身分に関係なく処罰を与える。そのことをよく理解したまえ」

 ドロシー王女殿下は、叔父様である学園長のことが苦手みたいですね。

 学園長は、実力主義というか身分による格差を嫌う方との噂なので、身分重視の王女殿下とは合わないのでしょう。

 学園が身分ではなく成績でのクラス分けなのも、学園長の主義に沿っているということだと思います。

 イーサン様も身分重視のお考えの方なので、さすがに王弟殿下に何かを言うことは出来ないみたいですね。

 学園長の圧で、お二人は教室の前から逃げるように立ち去って行ったみたいです。

「お手を煩わせて申し訳ございません、学園長」

「学園内の揉め事を治めるのは、学園長である私の仕事だ。特にカタロニア嬢やカリスタ嬢は標的にされやすい。まぁ、カリスタ嬢は毎日登校するわけではないから、君に集中するだろう。何かあればすぐに言いなさい」

 確かに第二王子殿下の婚約者であるダイアナ様に、あの物言いですもの。

 でも、学園長が目を光らせていて下さるなら、少しは安心でしょうか。
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