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5歳

11ページ目:誰かのために何かをする幸せ

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 あの魔力鑑定の失敗の翌日から、私はエミリーと一緒に、王宮図書室へと毎日赴くことにした。

 図書室で、魔法について自分で色々と調べるためだ。

 これも転生チートなのか、異国の言葉である文字は日本語として読め、5歳児では読めないはずの難しい漢字も安易に読むことが出来た。

 良かった。英語とかに翻訳されてなくて。英語、学生時代から苦手だったのよね。

 ただ、5歳児が難しい書物を余裕で読んでるのを他人には見せれないので、エミリーに読んでもらったりして、誤魔化した。

 知りたいことが書いてそうなやつは、あとでゆっくり読み返した。

 図書室に行くときは、絶対エミリーが一緒だけど、出来る侍女であるエミリーは、私が望めば私が見える範囲で離れて控えていてくれる。

 最初の頃こそ、読んでもらったりして誤魔化していたけど、最近は離れて読ませてくれるので、気になったタイトルのは手当たり次第読んでいる。

 あかりの時は、本を読むのがとても好きだった。
 だから、魔法書とはいえ、読むことになんの苦痛も感じない。

 1日のうち、半日を図書室で過ごす。
あとは食事と、家族との語らい、そしてお母様とのお勉強の時間である。

 カーテシーが出来なかったこともあって、私はお母様に淑女教育をお願いしたのだ。

 カーテシーに関しては、知識だけはあるから、体が成長すればできるようになるだろう。
 ただ、淑女教育はお辞儀の仕方だけではない。

 ダンスに刺繍、食事のマナーなど多岐にわたる。

 王女ということは、いずれはダンスもしなければならない。
 正直言って、あかりの運動神経は壊滅的であった。

 ならば、幼い頃から地道に続けていくしかない。
 幸いにも、転生チートで疲れ知らずである。練習を重ねれば、それなり程度にはなれるだろう。

 刺繍も、5歳の短い指では、中々キツいものがある。

 目新しい物好きで、刺繍もパッチワークも編み物も、ひと通りやった記憶がある。
 手先は、それなりには器用だった方だ。
ただ・・・飽きやすかった。

 お母様は、淑女教育の先生の場合も、私にとても甘かった。

 もちろん間違いは指摘されるけど、まず誉めて、それから間違いを指摘するという教え方で、私的にお母様のことがもっと好きになる先生ぶりだった。

 お父様と兄様には、刺繍ができたら、プレゼントして欲しいと強請られた。
あんまりしつこいので、了承した。

 枚数が違うと、あとで揉めそうなので、同じ枚数、同じ図柄にすることにした。

 我がクロムウェル家の紋章は、太陽と月と剣だ。
 簡単な柄だけど、5歳児には枠を押さえるのも、針を進めるのも難しい。

 それでも、誰かのために何かをすること。それを望んでくれている人がいること。
 それを素直に嬉しいと思った。
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