40 / 56
断罪が終結しても、私はあなたを許しません
しおりを挟む
「どうして、どうしてよっ!私はヒロインなのよっ!シオン!シオン!!」
シオン様の、闇の魔法の拘束から逃れることも出来ず、ジュリアが髪を振り乱して叫んでいる。
私は、立たせたルティシアを、クロードへと預けると、そんな彼女達へと歩みを進めた。
まずは、エンハルト。
「エンハルト様。魅了にかかってしまったことは、私は仕方のないことだと思います。ですが、仮にも騎士を目指している方が、令嬢を押さえつけるなど、私には許容できません」
「なっ!!そ、それは、ジュリアが危害を加えられたら、と」
「あなたは頭まで筋肉なのですか?もし、ルティシアが魔法で危害を加えようとしたなら、押さえつけることなど無意味ですし、そうでないなら、あなたが片手で押さえつけられる少女の危害など、防ぐことが可能でしょうに」
そうなのだ。魔法は口を塞がない限り発動できる。もしも、ルティシアが危害を加えようと思ったのなら、魔法を使えば可能なのだ。
まぁ、うちの天使はそんなことしないけれど!
そして、押さえつけずとも、襲いかかってきたとしても、庇うことなど容易かっただろう。
結局は、エンハルトは、か弱いルティシアを押さえつけるという愚行で、自分の残虐心を満たしたに過ぎないのだ。
そんな人間が、騎士?ふざけないでいただきたい。
私は、隣に視線を移す。クラウス、クラウド兄弟。
この2人は、ずいぶん早いうちから、ジュリアに傾倒していた。
「宮廷魔道士の御家系が、魅了の術にかかるなど、情けなくはないのですか?」
「なにを!!お前になにが分かる!!」
「何もわかりませんわ。努力も何もなさらない方の気持ちなど。シオン殿下を、レインハルト殿下をご覧になって?重責に耐えながら、どれほど努力されているか、その程度も分からなくて、忠臣と言えまして?」
前回のレインハルト様は、酷かったけど、今回、前回の記憶があると聞いたから分かる。
彼は、自分の過ちを悔い、王家に、いや、陛下や兄であるシオン様の力になろうと、努力をしていた。
そして、シオン様は、闇魔法使い。あれほどの巨大な力を扱うのは、並大抵の努力であるはずがない。
その程度のことすらわからないから、侯爵に愚息と呼ばれるのよ。
私は、キーキー喚き散らしてあるジュリアを見て、ため息をつく。あんまり話したくないなぁ。話、通じなさそうだし。ああ、でも、これだけは言っておくか。
「ジュリア・チェルシー。私はあなたを、ヒロインとは認めませんわ」
「うるさい!うるさい!!うるさい!!!お前のせいだ!だから、ストーリー通りにいかないんだ!!私はヒロインなのよ!!みんなも、シオンも、私の・・・」
「常闇の眠り」
シオン様の声が響き、ジュリアがピタリと黙り込んだと思うと、そのまま眠ってしまった。
「シオン様」
「すまない。だが、その女の戯言を耳にするのは不愉快だ」
仕方ない。言いたいことは、まだあったけど、1番言いたかった認めない宣言は出来たし、話ら通じなさそうだしね。
「さて、それではこの度の騒ぎを起こしたお前達に処罰を下す。全員、魔封じの枷をつけ、地下牢へ。1人ずつ分けておけ!」
「はっ!」
陛下の命に、騎士の手によって、3人が会場から引きずられていく。
それを横目で見ながら、私はルティシアの元へと戻って行った。
「ルティシア、大丈夫?痛かったでしょう?」
女の髪を引っ張るなんて、ホントあの騎士もどき、許せないわ。
ルティシアは、クロードに抱かれながら、その顔に天使の笑みを浮かべる。
「平気よ、レティシア。それより、クロード様の迫真の演技に驚いちゃった。ねぇ、クロード様、あれ、もしかして本気だったりする?」
「なっ、そんなわけないだろう!殿下!!だから、俺は嫌だと申し上げたではないですか!」
ルティシアに愛情を疑われ、クロードはシオン様に文句を言っている。
あら?あれはシオン様の案だったのね。
それと、クロード。ルティシアは疑ったりしてないわよ。あれは、甘えてるだけだと思うわ。
クロードやルティシアの様子に、私は思わず微笑ってしまう。
「ふふっ」
「レティシア嬢も、微笑ってないでなんか言ってくれよ」
「情けないこと言ってないで、しっかり甘やかせてあげれば?ルティシアは疑ってなんてないわよ」
「レティシア!!」
ルティシアが、真っ赤になる。そんなルティシアの顔と、私を見比べて、クロードは納得したように、ルティシアの頬にキスを落とした。
あらあら。
微笑ましそうに私たちを見る陛下の眼差しに、私はようやく、断罪が終わったのだと思えたのだった。
シオン様の、闇の魔法の拘束から逃れることも出来ず、ジュリアが髪を振り乱して叫んでいる。
私は、立たせたルティシアを、クロードへと預けると、そんな彼女達へと歩みを進めた。
まずは、エンハルト。
「エンハルト様。魅了にかかってしまったことは、私は仕方のないことだと思います。ですが、仮にも騎士を目指している方が、令嬢を押さえつけるなど、私には許容できません」
「なっ!!そ、それは、ジュリアが危害を加えられたら、と」
「あなたは頭まで筋肉なのですか?もし、ルティシアが魔法で危害を加えようとしたなら、押さえつけることなど無意味ですし、そうでないなら、あなたが片手で押さえつけられる少女の危害など、防ぐことが可能でしょうに」
そうなのだ。魔法は口を塞がない限り発動できる。もしも、ルティシアが危害を加えようと思ったのなら、魔法を使えば可能なのだ。
まぁ、うちの天使はそんなことしないけれど!
そして、押さえつけずとも、襲いかかってきたとしても、庇うことなど容易かっただろう。
結局は、エンハルトは、か弱いルティシアを押さえつけるという愚行で、自分の残虐心を満たしたに過ぎないのだ。
そんな人間が、騎士?ふざけないでいただきたい。
私は、隣に視線を移す。クラウス、クラウド兄弟。
この2人は、ずいぶん早いうちから、ジュリアに傾倒していた。
「宮廷魔道士の御家系が、魅了の術にかかるなど、情けなくはないのですか?」
「なにを!!お前になにが分かる!!」
「何もわかりませんわ。努力も何もなさらない方の気持ちなど。シオン殿下を、レインハルト殿下をご覧になって?重責に耐えながら、どれほど努力されているか、その程度も分からなくて、忠臣と言えまして?」
前回のレインハルト様は、酷かったけど、今回、前回の記憶があると聞いたから分かる。
彼は、自分の過ちを悔い、王家に、いや、陛下や兄であるシオン様の力になろうと、努力をしていた。
そして、シオン様は、闇魔法使い。あれほどの巨大な力を扱うのは、並大抵の努力であるはずがない。
その程度のことすらわからないから、侯爵に愚息と呼ばれるのよ。
私は、キーキー喚き散らしてあるジュリアを見て、ため息をつく。あんまり話したくないなぁ。話、通じなさそうだし。ああ、でも、これだけは言っておくか。
「ジュリア・チェルシー。私はあなたを、ヒロインとは認めませんわ」
「うるさい!うるさい!!うるさい!!!お前のせいだ!だから、ストーリー通りにいかないんだ!!私はヒロインなのよ!!みんなも、シオンも、私の・・・」
「常闇の眠り」
シオン様の声が響き、ジュリアがピタリと黙り込んだと思うと、そのまま眠ってしまった。
「シオン様」
「すまない。だが、その女の戯言を耳にするのは不愉快だ」
仕方ない。言いたいことは、まだあったけど、1番言いたかった認めない宣言は出来たし、話ら通じなさそうだしね。
「さて、それではこの度の騒ぎを起こしたお前達に処罰を下す。全員、魔封じの枷をつけ、地下牢へ。1人ずつ分けておけ!」
「はっ!」
陛下の命に、騎士の手によって、3人が会場から引きずられていく。
それを横目で見ながら、私はルティシアの元へと戻って行った。
「ルティシア、大丈夫?痛かったでしょう?」
女の髪を引っ張るなんて、ホントあの騎士もどき、許せないわ。
ルティシアは、クロードに抱かれながら、その顔に天使の笑みを浮かべる。
「平気よ、レティシア。それより、クロード様の迫真の演技に驚いちゃった。ねぇ、クロード様、あれ、もしかして本気だったりする?」
「なっ、そんなわけないだろう!殿下!!だから、俺は嫌だと申し上げたではないですか!」
ルティシアに愛情を疑われ、クロードはシオン様に文句を言っている。
あら?あれはシオン様の案だったのね。
それと、クロード。ルティシアは疑ったりしてないわよ。あれは、甘えてるだけだと思うわ。
クロードやルティシアの様子に、私は思わず微笑ってしまう。
「ふふっ」
「レティシア嬢も、微笑ってないでなんか言ってくれよ」
「情けないこと言ってないで、しっかり甘やかせてあげれば?ルティシアは疑ってなんてないわよ」
「レティシア!!」
ルティシアが、真っ赤になる。そんなルティシアの顔と、私を見比べて、クロードは納得したように、ルティシアの頬にキスを落とした。
あらあら。
微笑ましそうに私たちを見る陛下の眼差しに、私はようやく、断罪が終わったのだと思えたのだった。
33
お気に入りに追加
589
あなたにおすすめの小説
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
乙女ゲーのモブデブ令嬢に転生したので平和に過ごしたい
ゆの
恋愛
私は日比谷夏那、18歳。特に優れた所もなく平々凡々で、波風立てずに過ごしたかった私は、特に興味のない乙女ゲームを友人に強引に薦められるがままにプレイした。
だが、その乙女ゲームの各ルートをクリアした翌日に事故にあって亡くなってしまった。
気がつくと、乙女ゲームに1度だけ登場したモブデブ令嬢に転生していた!!特にゲームの影響がない人に転生したことに安堵した私は、ヒロインや攻略対象に関わらず平和に過ごしたいと思います。
だけど、肉やお菓子より断然大好きなフルーツばっかりを食べていたらいつの間にか痩せて、絶世の美女に…?!
平和に過ごしたい令嬢とそれを放って置かない攻略対象達の平和だったり平和じゃなかったりする日々が始まる。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
【完結】 悪役令嬢は『壁』になりたい
tea
恋愛
愛読していた小説の推しが死んだ事にショックを受けていたら、おそらくなんやかんやあって、その小説で推しを殺した悪役令嬢に転生しました。
本来悪役令嬢が恋してヒロインに横恋慕していたヒーローである王太子には興味ないので、壁として推しを殺さぬよう陰から愛でたいと思っていたのですが……。
人を傷つける事に臆病で、『壁になりたい』と引いてしまう主人公と、彼女に助けられたことで強くなり主人公と共に生きたいと願う推しのお話☆
本編ヒロイン視点は全8話でサクッと終わるハッピーエンド+番外編
第三章のイライアス編には、
『愛が重め故断罪された無罪の悪役令嬢は、助けてくれた元騎士の貧乏子爵様に勝手に楽しく尽くします』
のキャラクター、リュシアンも出てきます☆
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
悪役令嬢に転生したと思ったら悪役令嬢の母親でした~娘は私が責任もって育てて見せます~
平山和人
恋愛
平凡なOLの私は乙女ゲーム『聖と魔と乙女のレガリア』の世界に転生してしまう。
しかも、私が悪役令嬢の母となってしまい、ゲームをめちゃくちゃにする悪役令嬢「エレローラ」が生まれてしまった。
このままでは我が家は破滅だ。私はエレローラをまともに教育することを決心する。
教育方針を巡って夫と対立したり、他の貴族から嫌われたりと辛い日々が続くが、それでも私は母として、頑張ることを諦めない。必ず娘を真っ当な令嬢にしてみせる。これは娘が悪役令嬢になってしまうと知り、奮闘する母親を描いたお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる