恋とはどんなものかしら

みおな

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偽りの約束

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 閉じた目蓋の向こうに、光を感じた。

 眩しさに、意識が急浮上する。うっすらと目を開けると、引かれたカーテンの向こうの太陽は、随分と高い位置にあるようだ。

 見慣れぬ部屋の調度品に、疑問を持つものの、もう少しまどろんでいたい。

 もうちょっとだけ、と寝返りをうつと、温かな何かに触れた。

 なんだか、いい匂いがする。

 すん、っと鼻を鳴らしてすり寄ると、ビクッとそれが震えた。

 「?」

 重いまぶたをあげると、白いシャツと、外されたボタンの奥の、引き締まった肌が目に入る。

 恐る恐る視線をあげると、形のいい顎、薄い唇、黒髪から覗く黒曜石の瞳が、ジッと私を見下ろしていた。

 「シオン・・・さま?」

 「レティシア・・・」

 シオン様の声が、かすれている。その、黒曜石の瞳が揺れ、ポタリポタリと涙が溢れてくる。

 「レティシア・・・レティシア」

 シオン様が、すがりつくように、私を抱きしめてくる。

 ああ、そうか。

 あの日、ドラゴンと対峙した後の記憶がない。きっと、私は、彼をものすごく心配させてしまったんだ。

 「シオン様・・・あれからどうなったのですか?」

 「レティシアは何も覚えてないの?」

 「はい」

 私がうなづくと、シオン様は、私の髪をゆっくりと撫でながら、話始めた。

 「あの日、ドラゴンの前で、レティシアはある魔法を使った。それは、自分の生命力を魔法に変換したもので、それによって、ドラゴンは正常化し、姿を消した。ここまでは、わかった?」

 シオン様の言葉に、はい、と答える。

 「その魔法によって、レティシアは昏睡状態になっていたんだ。あれから10日間、ずっと意識が戻らなかった」

 シオン様は、そこで言葉を切ると、抱きしめていた腕を外し、私を組み敷くように、ベッドに押さえつけてきた。

 「シオン様?」

 「レティシア、わかる?君を失うかもしれないと、そう思った僕が、どれだけおそろしかったか・・・」

 シオン様の声が震えている。

 「君を失ったら、生きている意味なんかない。目覚めない君に、僕がどれだけの恐怖を感じたか。ねぇ、レティシア、わかる?」

 ゔ。わかって、やったんじゃないんです!私だって、シオン様を失いたくなくて、ただ、夢中だったんですーっ!

 そう、反論したいけど、見下ろすシオン様の瞳が揺れているから、言えない。

 「ごめんなさい」

 「絶対、2度としないって約束して?」

 「わかりました。2度としません」

 私が、そううなづくと、シオン様は上から覆いかぶさってきて、私をギュッと抱きしめた。

 ごめんなさい。シオン様。
 だけど、同じことが起こったら、どうやったのかは覚えてないけど、私はまた同じことをしてしまうと思います。
 あなたが危機に陥ったら、私は、私の全てを持って、それに立ち向かわずにいられない。
 私にとっても、あなたは全てなんです。

 



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