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呆れた元婚約者

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「・・・それで、お家に帰られていないってどうしてですの?」

「侯爵夫妻が相当怒っているからね。軟禁するつもりらしい。それで、逃げ回っているようだよ」

 お父様のお話になられた内容に、唖然としてしまいます。

 叱られるから?幼い子供じゃあるまいし。

 そもそも、叱られるような言動をなさっておいて、馬鹿なのかしら。

 ああ。馬鹿でしたわね。
自国の王女殿下の顔も分からない、馬鹿。

 つける薬もありませんわ。

 そんなお話をしておりましたら、お兄様がお帰りになりました。

「おかえりなさいませ、お兄様」

「ああ。ミリムもユリウス殿も、着いていたのか。長旅で疲れただろう」

「大丈夫ですわ。それよりも、デルモンド侯爵子息様のこと、お聞きしましたわ。陛下達は、何と?」

 お兄様のことですから、注意喚起だけでなく何か策を考えていらっしゃるはず。

 そして国王陛下たちはそんなお兄様のことを、とても好ましく思っていらっしゃいます。

 お兄様は腹黒ですけど、人間的にはとても素晴らしい方なのは否定しませんわ。

 どこかの誰かのような、人として問題ある考えを持ったりしませんし。

「ああ。あの馬鹿は今、ダリー伯爵家の別邸にダリー家の三男と一緒にいるようだ」

「ダリー伯爵家?ミリムに婚約を申し込んできていなかったか?」

「ええ。その、ダリー伯爵家です。あまり良い噂の聞かない放蕩息子ですよ」

「お父様、お兄様。その、婚約とは?私、お聞きしていませんが?」

 私が紹介されたのは、セルフィー殿下とユリウス様だけですわ。

「ああ。釣書はたくさん届いていたのだが、全てがヒルトによって却下された。今回はヒルトに任せていたからな、お断りしたのだよ」

「そのダリー伯爵家の方からも届いていた、と。そしてその方と一緒にデルモンド様がいらっしゃるのですね?」

 もうなんだか、悪い予感しかしないのですが。

「そのダリー伯爵家は、他の方はなのですか?」

「ああ、残念ながら二人の兄もそれぞれだ。あそこは夫人はマトモなんだが、伯爵が男尊女卑を地で行っているんだ」

「まぁ!そんな方と関わり合いたくもないですわ」

 男尊女卑なんて!
ヴァルフリーデ王国は、女性でも爵位が継げる国だというのに。

「もしかして今回の件で、まとめて片付けようと考えていらっしゃるの?」

「ミリムにはお見通しか?」

「生まれた時からずっと、お兄様の妹をしてきましたからね。考えそうなことは想像できますわ。でも、そうですわね。その伯爵夫人をお救いしなければなりませんわね」

 そんな男に限って、奥様がいなければ何も出来ないんですわ。
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