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王女殿下はご機嫌だった

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「ふふっ。ふふふっ」

 王宮に出向いたお父様と一緒に、ラナリス王女殿下が我が家に来られました。

 そして、とてもご機嫌な様子で笑っていらっしゃいます。

「ラナリス様。随分とご機嫌ですね」

「ふふふっ。だって、あの屑とミリムの婚約が白紙撤回されたのよ。今日は祝杯をあげなくちゃ」

「・・・デルモンド侯爵家の方がいる前では、ご子息を屑とか言わないで下さいね?」

「ミリム。もう遅い」

 お父様の苦虫を噛み潰したような様子に、王宮で何があったのか想像がつきました。

 デルモンド侯爵様の前で、言いましたのね?ご子息を屑と。

 侯爵様も愚息とおっしゃっていましたけど、それでもご自身の血を分けたご子息。
 ですが、さすがに王女殿下の発言に異議は唱えられなかったのでしょうね。お可哀想に。

「ラナリス様。お気持ちは嬉しいですけど、デルモンド侯爵様にとってはどんなに愚かでもご子息なのです。少しは気遣ってあげてください」

「だってぇ」

「だってじゃありません。叱られますわよ」

「ゔっ。分かったわ!次から気をつけるから、お願い、内緒にして?」

 両手を合わせてお願いポーズをするラナリス様に、苦笑してしまいます。

「今回だけですよ?それで、私の婚約は白紙撤回されたのですか?」

「ああ。陛下が白紙撤回を認めてくださった。ミリムの頼み通りに、デルモンド侯爵家はお咎めなしとお願いしたよ。ただし、本人には罰が与えられる」
 
 まぁ、それは仕方ありません。

 一国の王女殿下に、人違いだとはいえ酷い言葉を投げかけ、婚約破棄を宣言したのですから。

「罰は決まったのですか?」

「ふっふっふ。決めるの!お父様も私の好きなようにして良いって」

 ハァ。また陛下は・・・
国王陛下夫妻は、唯一のお子様で、遅くにできた子供であるラナリス様のことをそれはそれは、そうまさに目に入れても痛くないほど可愛がっておられるのです。

 我儘になりがちのラナリス様をお止めするのは、婚約者の役目で。

「何にするのか決めたら、決行する前に私に話してくださいね」

「えーっ。大丈夫よ?ちゃんとお仕置きしておくから」

「言ってくださいね?話さずに決行したりしたら、お兄様に言いつけますわ」

「ぴっ!言う。言います!」

 これで、行き過ぎた罰にはならないでしょう。

 ラナリス様は『お兄様』には弱いのです。

 ああ。私の血の繋がった兄ですわ。
五歳年上の兄は、ラナリス様の婚約者なのです。

 国王陛下夫妻が開いた、ラナリス様の婚約者候補を集めたお見合いの場で、ラナリス様が兄に一目惚れされたのですわ。
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