拝啓、婚約者様。婚約破棄していただきありがとうございます〜破棄を破棄?ご冗談は顔だけにしてください〜

みおな

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婚約破棄は喜んで!

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「何とか言ったらどうだっ!」

 ランドル・デルモンド様の怒声に、ハッとします。

 ああ。すっかり他のことに気を取られていましたけど、まだ続いていましたわ。

「・・・ねぇ、ミリムお姉様。あり得ますの?」

「冗談で言ってるようには見えませんから、あり得るんじゃないですか?」

「・・・おそろしい」

 セシリア様が、おぞましいモノを見るように、ランドル・デルモンド様を見ています。

 そのお気持ち、私もものすごく分かります。
 周囲の方々も少し距離を置かれています。

 ひきつった様子の方もいらっしゃいますわ。

「何とか・・・ですか。そうですわね、婚約破棄は喜んで承りましたわ」

「よ、喜んでだとっ!その上から目線の話し方。子爵令嬢風情が。この、礼儀知らずめっ!」

「あら?こんな場所で婚約破棄を宣言し、しかも婚約者、いえ元婚約者と言うべきかしら?名前を呼び捨てにした挙句にお前呼びする方に、礼儀を説かれるなんて。わたくしも、まだまだですわね」

 正論です。
ですが、こういう場面での正論は、相手を激昂させるものです。

「・・・絶対に、遊んでいらっしゃいますわよね?」

「・・・お気持ちは分かります。だって、普通に考えたらあり得ませんもの」

 セシリア様と話す内容は、私たちだけの気持ちではありません。

 周囲にいる、ほとんどの貴族のご令嬢やご子息も同じ気持ちだと思います。

 ここにいらっしゃるのは、ジャグリング公爵令嬢であるセシリア様のお誕生日をお祝いに来た高位貴族の方々です。

 まぁ、ご実家の爵位だけを見ればデルモンド様も高位貴族ですけれど。

 あの方がこの場に招かれたのは、私婚約者だったからです。

 デルモンド様は理解していらっしゃるのでしょうか?

 セシリア様を溺愛といってもいいほどに大切にしていらっしゃる、ジャグリング公爵夫妻にこのことが伝わったら、どうなるのかを。

 いえ。確実に伝わっていますけどね。
ジャグリング公爵家の使用人の方々も、愛らしいセシリア様のことを大切なお嬢様だと思ってますもの。

 公爵夫妻が今ここに乱入して来られないのは、にお任せしているからでしょう。

「ねぇ、お姉様。本当にあれは冗談ではありませんの?だって、絶対にあり得ないことだと思います。デルモンド侯爵家ではどんな教育をされているんでしょう」

「あの方、剣の訓練はお好きだったみたいですけど、お勉強はお嫌いだったのでは?よく知りませんけど」

 噂ですけど、そう聞いたことがありますわ。
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