悪役令嬢と転生ヒロイン

みおな

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愚かにも程があるわ

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「殿下。わたくしに何か?」

 背筋を伸ばし、凛として立つヴァイオレット様を、王子は睨みつける。

「何と太々しい態度だ!俺はここにヴァイオレット・マディソンとの婚約を破棄し、新たに聖女エリィとの婚約を宣言する!」

「嬉しい!リオルド様っ!」

 ハァ。
どうして断罪シーンって、いっつもこうなんだろう?

 太々しいって、呼びつけるから何の用だ?って聞いてるだけでしょうが。

 貴族の令嬢なのよ?しかも公爵家。
その令嬢が、綺麗にカーテシーして挨拶することのどこが太々しいの?

 それから、家と家、しかも王家と公爵家の婚約を、当人とはいえ勝手に破棄できるわけがないことに、どうして気づかないの?

 それに、その聖女。
聖なる力を一度でも見せたわけ?

 仮に本当に聖女としても、その子は平民なのよ?

 平民が王族の伴侶になれるわけがないでしょうが。

 そんなことができるのは、乙女ゲームや物語の中だけよ。

 貴族や王族っていうのは、血を大切にするの。

 それはそうでしょ?
基本的に、貴族は魔力持ちが多いの。そこに、平民の血が混じれば、薄くなるわ。

 前世持ちの私には理解し難い考えだけど、平民や下位貴族を下にみる考えも確かにあるの。

 それを聖女というだけで、王族の血に混ぜる?

 大体、貴族としての教養も資質も何もない平民なのよ?

 王族の一員にできるわけがないじゃない。
 王子が廃籍して、平民になるのなら、理解できるけど。

 エリィさんは、リオルド王子の腕に胸を押し付け、ヴァイオレット様に視線を向ける。

 本人は申し訳なさそうにしてるつもりなのかもしれないけど、馬鹿にしてるのが見え見えよ。

「ごめんなさい、ヴァイオレット様。私、リオルド様のことが好きなんです。ヴァイオレット様はリオルド様をお好きだから、私にあんなことをしたんでしょうけど、謝って下さい。そしたら、許しますから」

「・・・」

「何とか言ったらどうだ!慈悲深いエリィがこう言っているんだぞ!」

 慈悲深いも何も、その女の勝ち誇った表情を見てみなさいよ。

 それに、高位貴族の許可もなく勝手に話しかけ、しかもお名前を呼ぶだなんて。

 躾のなっていない犬と同じだと、周囲が呆れていることに気付かないの?

 あなたたちの味方なのは、後ろに立つ教皇子息と、宰相子息だけよ?

 分かっていないようだけど、長引かせるつもりはないわ。
 せっかくのパーティーだもの。

 ヒロインが悪役令嬢の役割っておかしいかしら?
 でも、ヴァイオレット様にそんな役目をさせられないわ。
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