悪役令嬢と転生ヒロイン

「こ、これは・・・!」

 鏡の中の自分の顔に、言葉をなくした。
そこに映っていたのは、青紫色の髪に瞳をした、年齢でいえば十三歳ほどの少女。

 乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』に出てくるヒロイン、そのものの姿だった。

 乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』は、平民の娘であるヒロインが、攻略対象である王太子や宰相の息子たちと交流を深め、彼らと結ばれるのを目指すという極々ありがちな乙女ゲームである。

 ありふれた乙女ゲームは、キャラ画に人気が高まり、続編として小説やアニメとなった。

 その小説版では、ヒロインは伯爵家の令嬢となり、攻略対象たちには婚約者が現れた。
 この時点で、すでに乙女ゲームの枠を超えていると、ファンの間で騒然となった。

 改めて、鏡の中の姿を見る。
どう見ても、ヒロインの見た目だ。アニメでもゲームでも見たから間違いない。

 問題は、そこではない。
着ているのがどう見ても平民の服ではなく、ドレスだということ。

 これはもしかして、小説版に転生?
 
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