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ヒロインの攻略対象

わからない気持ち《プリシア視点》

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 前世での私の最推し、エルンスト・ケルドラード皇太子殿下。
 濡羽色の髪と黒曜石の瞳、お国柄のせいか女性蔑視な発言をされていたけど、ヒロインと知り合うことで、女性蔑視はどこに行ったの?ってくらいヒロインを愛してくれる人。

 私も、この世界が乙女ゲームの世界でないことは分かっています。いくらゲームの中の攻略対象と同じ名前で同じ容姿でも、目の前のエルンスト皇子は、私の最推しのエルンスト皇子とは違う・・・

 目の前に存在するエルンスト皇子が私に興味を持ってくれているのは、私が光の聖女だから。
 魔法の存在しないケルドラード皇国の利になるから。

 あとは多分、アリス様に興味を持たれないように、王子殿下やサードニクス様が話されたのかもしれない。

 私も、アリス様が闇の聖女だと気づかれたら面倒なことになるとわかります。

 婚約者であるアリス様とサードニクス様。
 アリス様が闇の聖女だと分かれば、強引にエルンスト皇子との婚約話が持ち上がる可能性があります。

 アリス様はビスクランド伯爵家のご令嬢。ビスクランド伯爵家はフォレスト王国筆頭の資産家です。
 国家予算の半分以上をビスクランド伯爵家が納めているという噂があるくらいです。
 そんな伯爵家のご令嬢なら、皇太子妃としても遜色はありません。

 ですが、サードニクス様がアリス様を手放されるはずがありません。
 いえ。サードニクス様だけではありません。
 アリス様のお兄様であるルイス様も妹君を溺愛なさっていて、そのルイス様は次期女王陛下の王配になられることが決まっているのです。

 レイモンド王子の婚約者である侯爵家ご令嬢のリーシャ様も、ダートン公爵令息様も、騎士団長のご子息も、魔法省長官ご子息も、みんなアリス様のことを大切に思っています。

 そのアリス様を、無理矢理サードニクス様から引き離したりしたら、この国とケルドラード皇国は戦争になるでしょう。

 だから、光の聖女である私に興味を向けるようにしたのだと思います。

 それは構いません。
私も、アリス様のことが大切です。アリス様の幸せのためになら、エルンスト皇子といくらでもお話します。

 だけど。

 もしもゲーム通りに、エルンスト皇子がを婚約者にと望んだら?
 私は確かに光の聖女だけど、プリシア・ダウニーという1人の人間です。

 前世での最推しといえど、目の前の人はゲームのキャラクターではありません。

 生きて、話して、考えて、自分の意志で行動する人間なんです。

 私は、目の前にいるエルンスト皇子本人を好きなのでしょうか?
 私はそのことをよく考えてみなければならないと思います。
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