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アメジストの姫君

普通がいいと思います

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「アリスは可愛いから、こっちのフリルいっぱいのが似合うと思う」

 ブティックでフリルたくさんのどピンクドレスをルイスお兄様に差し出され、こんなの着れるか!とブチ切れそうなアリス・ビスクランドです。

 マジでドン引きです。センスなさすぎです。そのセンスで彼女にドレス贈ったら、絶対フラれます。

 お母様もデザイナーさんも微笑ましそうに見ている場合じゃありません。ダメ出ししてやって下さい。

 私が言ってもいいなら言いますよ?「そんなのヤダ」って。
 多分それ言うと、泣きますよ、シスコンは。いいんですか?

「アリスお嬢様はとても可愛いですから、シンプルな方がお嬢様の可愛らしさが際立ちますよ」

 そう言って、水色のドレスを差し出してくれるのは、デザイナーさんのお弟子さんです。ナイスです。それに、シンプルだけどレースがあしらわれていてすごい素敵です。

「私、これがいいです」

 お弟子さんのおすすめのドレスを手に取ります。あ。ルイスお兄様が膨れっ面になってます。めんどくさいですね。

「お兄さま、見て?似合う?」

 ドレスを当てて、小首を傾げます。私の見た目は超絶美少女なので、こういうあざとさが効果てきめんです。

「アリス、すっごい可愛い」

「お兄さま、だいすき」

「僕もアリスが大好きだよ」

 ご機嫌は治ったようです。はぁ。めんどくさいです。
 大好きなんて言ったら、シスコンが加速しそうですが、機嫌が悪いとこっちも居た堪れないので仕方ありません。

 結局、ドレスは全部で7着買いました。各色取り揃えです。
 パステルカラーのドレスはシンプルだけど可愛らしさや上品さもあります。
 良かったです。中身アラサーとしては、可愛いドレスというのは精神的にキツイものがあります。

 まぁ、見た目は子供なのですが。
某『見た目は子供、頭脳は大人』な方は普通にショートパンツとか着てましたけど、あれ恥ずかしくないんですかね。私には無理です。

 前世の私は、スカートとは敵対関係にありました。ええ。敵です。
 あんな、ヒラヒラふわふわしたものが似合わない、そんな社畜な日々でした。

 ジーンズにくたびれたTシャツでパソコンと睨み合い、外部と会うときだけパンツスーツに分厚い化粧でクマを隠す日々でした。

 スカートを最後に履いたのはいつだったでしょう。
 そんな女を恋人と思えなかったのは仕方ないことだったのかもしれません。
 金づる扱いは許せませんけど。もう少しちゃんと着飾っていたら、あんな風に言われなかったかもしれませんね。

 この世界では、ドレスは戦闘服だとライトノベルに書いてありました。
 そんな疲れることはできればお断りしたいです。ドレスも買ったし、早くお屋敷に戻りたいと思います。

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