上 下
64 / 88
第2章

乙女ゲームの終わり

しおりを挟む
 結論から述べると、ヒロインはアゼルを攻略できなかった。

 イベント自体が発生せず、ヒロインのキャンディは普通にアゼルに好きだと告白するしかなかった。

 アゼルは、彼女が平民だからとかではなく、彼女がサイードと共にいて、諸々で私をサイードが責めたということがシスコンとしては許せなかったらしい。

 大切な妹を傷つけた存在を好きになることはないと、はっきり告げたようだ。

 私としては、別にヒロインに傷つけられてもいないし、サイードに関しても全く興味もないので、ヒロインには申し訳なかったが、彼女はそれで納得したようだ。

 サイードとベッタリだったことで、周囲の貴族令嬢から睨まれていたヒロインだが、サイードとは距離を置いたことと、私やリアーネが話しかけることが増えたことで、その確執も徐々に減ってきたようだ。

 今では、同じ平民や男爵家子爵家のご令嬢ご令息たちと、仲良くやっているようである。

 ヒロインは平民だ。
もし、サイードや他の攻略対象と結ばれても、決して貴族や王族になれないし、そうなると結果として幸せな未来が来る可能性は低かっただろう。

 乙女ゲームとしてはバッドエンドかもしれないが、キャンディという少女としては、正しい結末を迎えたのではないだろうか。

 同じ転生者としては、これから、身分相応の相手と幸せになってもらいたいと思う。

 同じ転生者といえば、リアーネはサイードと婚約した。

 リアーネは婚約を結んだ後、サイードにはっきりと自分はサイードのことを慕っていると宣言したらしい。

 サイードは真っ赤になって戸惑いながらも、自分もリアーネとキチンと向き合うことにしたようだ。

 サイードは、ヒロインとのことや私との婚約解消があって、色々と考えることがあったみたいだ。

 別にサイードは下衆なわけではない。
ちょっとばかり劣等感がある、平凡な第2王子だ。
 その劣等感も、婚約者が私からリアーネに変わったことで、少しはマシになるのではないだろうか。

 ヴィヴィは魔力量はもちろん、成績でもサイードを軽く圧倒していた。
 リアーネにももちろん魔力はあるし、成績もいいが、ヴィヴィほどではない。

 これからお互い助け合って、上を目指していけば良いのではないだろうか。

 何より、リアーネは転生者としての知識もある。上手くサイードを導いて、王子妃としてやっていくだろう。

 立太子は、サイラスになると思う。
サイード自身もそう望んでいると聞いた。

 サイードは優秀な上に努力の人の兄に劣等感を抱いているが、同時に尊敬もしている。
 今のサイードなら、きっとサイラスを支えて、王子としてやっていけるだろう。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と

鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。 令嬢から。子息から。婚約者の王子から。 それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。 そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。 「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」 その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。 「ああ、気持ち悪い」 「お黙りなさい! この泥棒猫が!」 「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」 飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。 謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。 ――出てくる令嬢、全員悪人。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

【完結】愛してなどおりませんが

仲村 嘉高
恋愛
生まれた瞬間から、王妃になる事が決まっていたアメリア。 物心がついた頃には、王妃になる為の教育が始まった。 父親も母親も娘ではなく、王妃になる者として接してくる。 実兄だけは妹として可愛がってくれたが、それも皆に隠れてコッソリとだった。 そんなある日、両親が事故で亡くなった同い年の従妹ミアが引き取られた。 「可愛い娘が欲しかったの」 父親も母親も、従妹をただただ可愛いがった。 婚約者である王太子も、婚約者のアメリアよりミアとの時間を持ち始め……? ※HOT最高3位!ありがとうございます! ※『廃嫡王子』と設定が似てますが、別のお話です ※またやっちまった、断罪別ルート。(17話から)  どうしても決められなかった!!  結果は同じです。 (他サイトで公開していたものを、こちらでも公開しました)

悪意か、善意か、破滅か

野村にれ
恋愛
婚約者が別の令嬢に恋をして、婚約を破棄されたエルム・フォンターナ伯爵令嬢。 婚約者とその想い人が自殺を図ったことで、美談とされて、 悪意に晒されたエルムと、家族も一緒に爵位を返上してアジェル王国を去った。 その後、アジェル王国では、徐々に異変が起こり始める。

乙女ゲームで婚約破棄をリアルに体験するのはごめんだ

いつき
恋愛
身近に最上の推しがいたら、例え結ばれなくても人参をぶら下げた馬にでもなると言うものですよね? 両親を喪い平民から貴族になると同時に、前世で見た乙女ゲーム系アニメの最推しが義兄になったレンファラン 貴族の子女として家の為に婚姻? 前世の記憶で領の発展に貢献? 推しの役に立ちたいし、アニメ通りの婚約破棄だけは避けたいところだけれど…

侯爵令嬢は罠にかかって

拓海のり
恋愛
ラシェルは候爵家の一人娘だったが、大人しくて地味な少女だった。しかし、どういう訳か王太子アーネストの婚約者に内定してしまう。断罪もざまぁもない地味な令嬢のお話です。設定は適当でふんわり設定です。 他サイトに投稿していた話です。

愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。 母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。 婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。 そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。 どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。 死ぬ寸前のセシリアは思う。 「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。 目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。 セシリアは決意する。 「自分の幸せは自分でつかみ取る!」 幸せになるために奔走するセシリア。 だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。 小説家になろう様にも投稿しています。 タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

悪役令嬢が行方不明!?

mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。 ※初めての悪役令嬢物です。

処理中です...