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第1章
騎士団長子息の攻略
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攻略対象の1人、騎士団長子息のラグヌス・フリーレは、簡潔に言うなら脳筋である。
それは自他ともに認めていて、乙女ゲーム内では補習授業を受ける姿が見られていた。
騎士としての力も、兄であるラスルには敵わず、自暴自棄になるところをヒロインの甘い言葉で癒される、という展開だ。
あの脳筋、剣の腕は悪くないんだけど、戦術というものがさっぱりなのだ。剣筋とかだけなら、ラスルを上回るんだけど。
侯爵家の次男であるラグヌスにも、当然のことながら婚約者がいる。
ラーナ・イヴェータ伯爵令嬢。
燃えるような紅い癖毛に、鈍い錆色の瞳の、とても溌剌としたご令嬢だ。
フリーレ侯爵が騎士団長で、イヴェータ伯爵が副団長である。
その関係か、2人の婚約も幼い頃から決まっていたということと、ラーナも女性ながら女性騎士を目指せるほどの腕前だということは説明書にあった。
だからこそ、兄と婚約者に対して卑屈になったラグヌスは、ヒロインに傾倒していくのだ。
「ラグヌス様は最高に強い騎士です」なんて言われて、図に乗った挙句に、ラグヌスは婚約者であるラーナに斬りつけるのだ。
ラーナはその時の傷が原因で、領地に引きこもってしまう。
はっきり言って、屑である。
騎士ともあろう者がヒロインの戯言を裏も取らずに信用して、無実の婚約者に剣を向けるなど、騎士の風上にも置けない。
もちろんラーナにも、婚約を継続させたいか、解消したいかを確認するつもりだ。
もっとも、どちらにするにしても、鼻っ柱はへし折らせてもらう。
ヒロインに攻略されるのは構わないが、断罪イベントなど起こさせるつもりはない。
ラーナにはどちらを選んだとしても、幸せになってもらわなければならない。
例え婚約を解消したとしても、彼女なら引く手数多だろう。
私はラーナが常にいると言う、騎士団の訓練場に向かった。
ちなみに今の時点では、ラグヌスも一緒に訓練中である。
「お疲れ様ですわ、イヴェータ様」
タオルを差し出しながら近付くと、ラーナが驚いたように目を見開いた。
「ヴァレリア様っ。私、何かお約束してましたでしょうか?ヴァレリア様に、このような所にまで足をお運びいただくなんて」
「いいえ。お約束はしておりませんわ。それに、イヴェータ様の勇姿を拝見できて、とても嬉しいですわ」
「あっ、ありがとうございます。ヴァレリア様にそう言っていただけるなんて光栄ですっ」
うーん。さっきから何かラーナの反応がおかしい気がするけど、気のせい?
その頬が赤らんでるのは、訓練したせいだよね?
それは自他ともに認めていて、乙女ゲーム内では補習授業を受ける姿が見られていた。
騎士としての力も、兄であるラスルには敵わず、自暴自棄になるところをヒロインの甘い言葉で癒される、という展開だ。
あの脳筋、剣の腕は悪くないんだけど、戦術というものがさっぱりなのだ。剣筋とかだけなら、ラスルを上回るんだけど。
侯爵家の次男であるラグヌスにも、当然のことながら婚約者がいる。
ラーナ・イヴェータ伯爵令嬢。
燃えるような紅い癖毛に、鈍い錆色の瞳の、とても溌剌としたご令嬢だ。
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その関係か、2人の婚約も幼い頃から決まっていたということと、ラーナも女性ながら女性騎士を目指せるほどの腕前だということは説明書にあった。
だからこそ、兄と婚約者に対して卑屈になったラグヌスは、ヒロインに傾倒していくのだ。
「ラグヌス様は最高に強い騎士です」なんて言われて、図に乗った挙句に、ラグヌスは婚約者であるラーナに斬りつけるのだ。
ラーナはその時の傷が原因で、領地に引きこもってしまう。
はっきり言って、屑である。
騎士ともあろう者がヒロインの戯言を裏も取らずに信用して、無実の婚約者に剣を向けるなど、騎士の風上にも置けない。
もちろんラーナにも、婚約を継続させたいか、解消したいかを確認するつもりだ。
もっとも、どちらにするにしても、鼻っ柱はへし折らせてもらう。
ヒロインに攻略されるのは構わないが、断罪イベントなど起こさせるつもりはない。
ラーナにはどちらを選んだとしても、幸せになってもらわなければならない。
例え婚約を解消したとしても、彼女なら引く手数多だろう。
私はラーナが常にいると言う、騎士団の訓練場に向かった。
ちなみに今の時点では、ラグヌスも一緒に訓練中である。
「お疲れ様ですわ、イヴェータ様」
タオルを差し出しながら近付くと、ラーナが驚いたように目を見開いた。
「ヴァレリア様っ。私、何かお約束してましたでしょうか?ヴァレリア様に、このような所にまで足をお運びいただくなんて」
「いいえ。お約束はしておりませんわ。それに、イヴェータ様の勇姿を拝見できて、とても嬉しいですわ」
「あっ、ありがとうございます。ヴァレリア様にそう言っていただけるなんて光栄ですっ」
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