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第1章

ヴァレリア公爵家

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 ヴァレリア公爵家ー

 カムシーナ王国にある3つの公爵家のうちの1つで、父親であるアルファード・ヴァレリアは国王陛下の幼馴染。
 母親のジーナ・ヴァレリアは隣国の王女だった人。

 嫡男のアベル・ヴァレリアは父親譲りの銀髪を肩より少し長めに伸ばしていて、襟足で纏めている。

 次男のアゼル・ヴァレリアは母親譲りの金髪で、魔力量の多いヴァレリア公爵家の中で、母親のジーナの血が強いせいかほとんどと言っていいほど魔力がない。
 そのせいで、兄のアベルに強い劣等感を抱いている。

 そして唯一の娘であるヴィヴィ・ヴァレリア。
 父親アルファードも母親ジーナも、そして長男であるアベルも、ヴィヴィのことを溺愛している。

 攻略対象の1人である次男のアゼルも、ヒロインに出会うまでは同じように妹を溺愛していた。

 それが、ヒロインと出会い、彼女との距離が近くなればなるほど、ヴィヴィを遠ざけるようになるのだ。

 ヴィヴィはアベルと同じく父親の血を濃く継いでいるために、魔力量も多い。

 そんな妹にアゼルが距離を置き始めたのは、ヴィヴィが第2王子の婚約者に決まった頃からだ。

 元々、優秀な兄に劣等感を感じていたアゼル。
 それでも、勉強も剣技も魔法も、全てに優れている兄を尊敬し、本人なりに努力していた。

 アゼルに魔力がほとんどないことは、母親であるジーナが他国の出身で、その血を強く引いているからだと家族も本人も理解している。

 貴族でも、下位貴族になれば平民と婚姻することもあるので、魔力を持たない貴族もいる。

 高位貴族の場合はほとんどが魔力持ちだが、嫡男以降の場合は他国の貴族や王族を妻に迎えていることもあるため、魔力量の少ない人間も稀にいた。

 だから、アゼルが魔力をほとんど持たなくても家族がそのことを問題視することもなかったし、兄と隔てなく育てていたのである。

 むしろ嫡男である分、アベルの方が厳しく育てられていた方だろう。

 だが、ヴィヴィの魔力量がアベル以上だということで、第2王子との婚約が王家から申し込まれる。

 その辺りから、アゼルは兄を妹を、父と母を避けるようになっていく。

 自分には何故、魔力がないのか。
同じように母から生まれた兄と妹にはあるというのに。

 そんな劣等感に苛まれていくアゼルを、ヒロインは優しく癒すのだ。

 貴方はとても頑張っている、と。
自分は貴方のお兄さんや妹さんのことは知らないけど、貴方が誰よりも頑張って、優れていることは分かる、と。

 その言葉に、アゼルはヒロインに傾倒していくのであるー

 乙女ゲームの説明書に書かれていた兄のキャラ設定と、ゲームの展開を思い出して、私はため息を吐いた。

 魔力がないことは、かわいそうだとは思う。だけど、勝手に劣等感抱くのも、勝手に家族から距離を取るのも、それこそ好きにしてくれれば構わないけど、ヒロインに傾倒した挙句に、実の妹を断罪するのは許せない!

 アゼルがヒロインと出会うのは、ヒロインが学園に入学してからである。

 それまでに、兄の劣等感を矯正しよう!私はそう決意した。


 

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