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第1章

乙女ゲームの世界

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 乙女ゲームの世界に転生する。
最近ライトノベルでよく見る、ベタな展開だと思う。

 9割くらいが悪役令嬢に転生して、攻略対象の婚約者に婚約破棄されるけど、ヒロインと婚約者にざまぁするという展開。
 残り1割は、ヒロインに転生して、攻略対象ではなく他の優良物件と婚約して幸せになるというものだ。

 基本的に転生している場合、乙女ゲームのストーリーを知っているわけで、よほどの馬鹿でない限りストーリー通りに行動したりしない。

 転生ヒロインが何故ああも馬鹿なのかは分からないが、普通の人間なら逆ハーレムを目指したり、婚約者のいる攻略対象にベタベタしたり、魅了の魔法を使うような真似はしない。
 だって断罪ざまぁされるから。

 当然、私もそんな真似はしない。もっとも、私はヒロインではないけれど。

 乙女ゲーム『秘密の恋~あなたの愛に溺れて~』は平民のヒロインが、街で知り合った攻略対象と恋人になり、学園に入学してからその恋を深めていく話である。

 攻略対象は5人。
まずは王道、舞台となるカムシーナ王国の第2王子、サイード・エトワール。
次に宰相の次男、ユサール・シュルファス。
騎士団長の次男、ラグヌス・フリーレ。
魔術師団の次男、ブラン・ビゼット。
公爵家の次男で第2王子の婚約者の兄、アゼル・ヴァレリア。

 何故、全員次男かというと、第2王子の側近候補だからである。
 当然、長男は全員が第1王子の側近である。

 ここでヒロインであるキャンディが第1王子や長男たちを攻略できないのは、彼らがであるからだ。
 婚約者がいながら、しかも高位貴族でありながら、平民の少女と普通に交際しようとすることがおかしいのである。

 カムシーナ王国では王族のみ側室を持つことが許されているが、それでも正妻が子を成せず3年経ってからでないと側室は持てない。

 そして、王族に嫁げるのは、公爵家か侯爵家の令嬢。高位貴族に嫁げるのは伯爵家以上の令嬢だけである。

 そのため、政略結婚であることは否めない。だが、それが王族や高位貴族の役目なのだ。

 だというのに、平民に熱を上げ、婚約者を蔑ろにするようなことが、普通にできると思うことがおかしいのだ。

 乙女ゲームの世界だから仕方ないと思うところもあるが、それも自分が関わらない場合である。

 乙女ゲーム『秘密の恋~あなたの愛に溺れて~』の第2王子ルートの悪役令嬢であるヴィヴィ・ヴァレリアに転生した身としては、頭の痛いことであった。

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