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塩対応
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リリーが攻略対象たちと出会った。
やっぱりここは乙女ゲームそのものではなくても、それに似通った世界なのかも。
そんなことを思いながら、リリーと攻略対象たちを眺める。
「リラっ!」
騎士団長子息のロキ・アルスタンと、公爵家嫡男のギルク・ビブラートの手を振り払うように、リリーが私に駆け寄って来る。
「リリー。慌てないで。転んでしまう」
手を差し出そうとして、自分が誰かに抱き止められていたことを思い出した。
両肩に置かれた手に、戸惑って後ろに立つ人を見上げる。
「あの・・・」
「・・・あ、すまない」
すぐに離れた手を、少し寂しいと思うのは、きっとこの人が前世の最推しだからだ。
推しと会えて言葉を交わせるなんて、なんて眼福。
じゃなくて!
リリー。なんでもないとこで、普通に転びかねないんだから!
「リラぁ。大丈夫?具合悪い?怪我してない?」
「ありがとう、リリー。大丈夫。転ばないように支えてくれたから。リリーこそ大丈夫?」
「私は平気!転び慣れてるもん」
にっこり笑ったリリーは、私の後ろに立つハルト・グレイン様を威嚇するように、睨んでいる。
珍しい。誰にでも隔たりなく接するヒロインがこんな態度。
「リリー、転ぶのに慣れないで。それから、グレイン様は助けてくださったの。そんな顔しないで?」
「ゔー。リラがそう言うなら」
「グレイン様、ありがとうございました」
「・・・うん」
最推し様は頷くと、攻略対象たちを無視して、さっさと講堂の方へと立ち去って行く。
わー。
あの塩対応な感じも、いい!
ん?でもなんで、私さっき抱き止められたんだろう?
リリーが転びそうなの、助けようと思ったのに。
私がまた転びそうだと錯覚した?
私がハルト様の後ろ姿を目で追っていると、リリーがぷぅーっと頬を膨らませた。
「リリー?」
「リラってば、あの人のこと好きなの?」
「へ、は?」
「確かにかっこいい人だとは思うけどぉ。でもなんか無口だったし!勝手にリラの肩とか触ってたし!」
いや、触ってたというか、単に支えてくれてただけだし。
それより、攻略対象たちにお礼言わないと!
さっきからじーっとリリーを見てるし。
乙女ゲームなら、ここでリリーは彼らにお礼を言って、攻略対象たちにエスコートされて講堂に向かうんだけど・・・
そこは私がいるせいで無理かもだけど、お礼は言わないと。
相手はみんな王族と高位貴族なんだから。
「リリー。皆様にお礼言わないと」
「え、あー。ありがとうございました」
「・・・い、いや。無事で良かった」
戸惑ったように、王子がそう言ったけど、すみません、すみません!
うちのリリー。どうやら私以外には塩対応みたいです。すみません!
やっぱりここは乙女ゲームそのものではなくても、それに似通った世界なのかも。
そんなことを思いながら、リリーと攻略対象たちを眺める。
「リラっ!」
騎士団長子息のロキ・アルスタンと、公爵家嫡男のギルク・ビブラートの手を振り払うように、リリーが私に駆け寄って来る。
「リリー。慌てないで。転んでしまう」
手を差し出そうとして、自分が誰かに抱き止められていたことを思い出した。
両肩に置かれた手に、戸惑って後ろに立つ人を見上げる。
「あの・・・」
「・・・あ、すまない」
すぐに離れた手を、少し寂しいと思うのは、きっとこの人が前世の最推しだからだ。
推しと会えて言葉を交わせるなんて、なんて眼福。
じゃなくて!
リリー。なんでもないとこで、普通に転びかねないんだから!
「リラぁ。大丈夫?具合悪い?怪我してない?」
「ありがとう、リリー。大丈夫。転ばないように支えてくれたから。リリーこそ大丈夫?」
「私は平気!転び慣れてるもん」
にっこり笑ったリリーは、私の後ろに立つハルト・グレイン様を威嚇するように、睨んでいる。
珍しい。誰にでも隔たりなく接するヒロインがこんな態度。
「リリー、転ぶのに慣れないで。それから、グレイン様は助けてくださったの。そんな顔しないで?」
「ゔー。リラがそう言うなら」
「グレイン様、ありがとうございました」
「・・・うん」
最推し様は頷くと、攻略対象たちを無視して、さっさと講堂の方へと立ち去って行く。
わー。
あの塩対応な感じも、いい!
ん?でもなんで、私さっき抱き止められたんだろう?
リリーが転びそうなの、助けようと思ったのに。
私がまた転びそうだと錯覚した?
私がハルト様の後ろ姿を目で追っていると、リリーがぷぅーっと頬を膨らませた。
「リリー?」
「リラってば、あの人のこと好きなの?」
「へ、は?」
「確かにかっこいい人だとは思うけどぉ。でもなんか無口だったし!勝手にリラの肩とか触ってたし!」
いや、触ってたというか、単に支えてくれてただけだし。
それより、攻略対象たちにお礼言わないと!
さっきからじーっとリリーを見てるし。
乙女ゲームなら、ここでリリーは彼らにお礼を言って、攻略対象たちにエスコートされて講堂に向かうんだけど・・・
そこは私がいるせいで無理かもだけど、お礼は言わないと。
相手はみんな王族と高位貴族なんだから。
「リリー。皆様にお礼言わないと」
「え、あー。ありがとうございました」
「・・・い、いや。無事で良かった」
戸惑ったように、王子がそう言ったけど、すみません、すみません!
うちのリリー。どうやら私以外には塩対応みたいです。すみません!
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