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阿呆なだけだと言われました

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 聖女がいないと世界が滅ぶとありますが、聖女が亡くなっても次の聖女を女神様が選ぶのですよね?

 だから、世界は滅ばないわけで・・・

 あれ?前回私が処刑されたことで、世界は滅ぶはずだったということですか?

 あれ?でも、女神様が他の人を聖女に選べば滅ばないのですよね?

 駄目です。
頭の中が混乱してきました。

 私が書物を持ったまま固まっていると、優しい声が頭の上から降ってきました。

「どうした?何か分からないところでも出てきたか?」

 ヴィンセント様です。

 私は思考の海に潜っていたようで、目の前ではノワール様がお茶の準備をしてくれています。

「あ。ヴィンセント様・・・」

「お茶を飲んで休憩しよう」

「はい」

「それで、何を考え込んでいたんだ?」

 ヴィンセント様の隣に座り、紅茶のカップを手に取ったのを見て、ヴィンセント様が改めて尋ねてこられました。

 考え込むというほどのことでもないのですが。

「聖女について考えていたのです。聖女が死ねば新たな聖女を選ぶのなら、世界が滅ぶことはないのでは?と思いまして」

「そうだな。そのあたりのことがどうなっているのかは、神に尋ねなければ分からないだろう。ただ俺としては、その女神とやらがルディアを生き返らせてくれたことを心から感謝する」

「わっ、私も、生き返れてヴィンセント様の婚約者になれて嬉しいですっ!」

 この国に居れることが、何よりも嬉しいと思えます。

 やり直しても、ネモフィラ王国で暮らすくらいなら死んだ方がマシだと、今なら思ってしまいます。

 そのくらい、このメルキオール王国での暮らしは幸せなのです。

 私の言葉に、ヴィンセント様はとても嬉しそうに笑ってくださいました。

 私の言葉ひとつで、こんなに喜んでもらえることが嬉しくて仕方ありません。

「しかし、過去に聖女を生き返らせたという伝承はありませんね」

 ノワール様の言葉に、ヴィンセント様も頷かれます。

「そもそも、聖女を殺すような阿呆がそうそういるわけがない」

「確かにおっしゃる通りですね」

 まぁ、普通は殺さないと私も思います。

 だって、新たな聖女が生まれるにしてもすぐに見つかるとは限りませんし、今回の私のように他国に生まれていたらどうするつもりだったのでしょうか。

 ネモフィラ王国は、聖女の結界に頼り切っていたと思うのですが。

 それとも私が知らないだけで、魔物を倒せるほど、騎士様たちは鍛錬していたのでしょうか。

 まぁ、どちらでもいいですよね。
もう関わり合うことのない国ですし。
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