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魔王様とお会いするそうです

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 魔王の居城?
いえ、それも問題ですけど、婚約者って言いました?

 どういうことですか?
私、聖女なんですよね?女神様もそう言ってましたし、間違いないですよね?

 どうして聖女の婚約者が魔王なんですか?

 ある意味、対極にある存在ではないですか。

 女神様に問い詰めたいのに、もうお声は聞こえて来ません。

 まぁ、他の人がいる前で女神様と会話するわけにはいきませんけど。

「魔王・・・様ですか?」

「はい。覚えて・・・おられないのですか?」

「すみません。自分がどうして気を失っていたのかもわからないのです」

 多分、時間が巻き戻ったせいだと思いますが、の記憶が全くありません。

「す、すぐに陛下にお知らせいたします!ルディア様はこちらでお待ちくだ・・・先にお着替えをなさいますか?寝巻き姿でお会いしても大丈夫ですか?」

「着替えを・・・お願いできますか?いくら婚約者とはいえ、恥ずかしいので」

「はい!すぐに準備いたします。目眩などはありませんか?」

「大丈夫です」

 こんなに丁寧に扱われたことがないから、ものすごく申し訳なく感じてしまいます。

 でも、魔王様の婚約者で、ここは魔王様の居城だと言っていましたから、気を遣わないでというのも駄目な気がします。

 そのメイドと思しき女性は、テキパキと私に顔を洗わせ、着替えをさせ、髪を整えてくれました。

「お待たせいたしました。それでは陛下を呼んで参ります。その後、朝食にいたしますが、何か食べられない物はありそうですか?」

「好き嫌いはありません」

 私がそう答えると、女性は礼をして出て行きました。

 鏡に映った自分をマジマジと見ます。

 髪の色と瞳の色、そして名前だけは間違いなく以前の私と同じです。

 女神様は、時を巻き戻したとおっしゃいました。

 つまりは以前の私と今の私は同じ・・・
 いえ、別のルートに移したともおっしゃっていました。

 その別のルートというのがよく分からないのですが、その別のルートというもののせいで私の容姿が変わったのかもしれません。

 正直言って・・・
可愛く健康的になったのは、とても嬉しいです。

 過去の私は、平民だった頃より聖女になってからの方が酷い有様でした。

 私だって年頃の少女です。
綺麗に着飾ったり・・・までは出来なくても、せめて普通でありたいと思っていました。

 ですが、聖女としての務めを放棄したいと思うほど、あのネモフィラ王国での私の扱いは酷いものでした。

 食事は一日一回、固いパンと野菜屑のスープ。
 湯浴みなどさせてもらえず、冷たい水とタオルが渡されて、それで体を拭くしかありませんでした。

 髪も体を拭いた残りの冷たい水で洗うので、ゴワゴワでした。

 おそらく処刑されなくても、長くは生きられなかったと思います。
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