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ルディアだけどルディアではない

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 混乱する私に、女神様のお声が聞こえて来ました。

 聖女として、お力を授けていただいた時にもお聞きしたお声です。

 聞き間違えることはありません。

『ルディア、ごめんなさい』

「女神様、この姿はどういうことでしょうか?私は処刑されたのでは?」

『処刑を止められなくて、本当にごめんなさい。わたくしの力でルディアの時間を巻き戻しました。その際に、二度とあのような者たちにわたくしの愛し子が利用されないよう、別の人生のルートへと移したのです』

 女神様のおっしゃることは難しく、愚鈍な私には理解しかねます。

 巻き戻したということは、やっぱり私は死んだということで間違いなさそうです。

 ですが、別の人生のルートというのはなんでしょう。

『今のルディアは、処刑されるまでのルディアとは違うの。魂は同じだけど、今度こそルディアが幸せになれる道を選んだわ。本来なら、聖女は幸せな一生を送るはずだったのよ。それなのに・・・』

「女神様・・・」

 女神様が悪いわけではありません。
あれは、あの王太子殿下が勝手にしたことです。

 王太子殿下はそれほどまでに、私のことが嫌いだったのでしょう。

『ルディア。私はもう手を貸してあげることが出来ません。どうか幸せを掴んでください』

「女神様」

『聖女としてでなく、ルディアというひとりの人間として、どうか幸せに』

「女神様?女神様・・・ありがとうございます」

 女神様のお声は、もう聞こえて来なくなりました。

 それでも、私の声は届いているはずです。

 心からの感謝を込めて、祈りを捧げます。

 聖女としてでなく、ひとりの人間として幸せに。

 そうです。
私を殺した国のために、祈る必要はありません。

 あの後彼らがどうなったのかは知りませんが、聖女だと見つかる前にさっさとネモフィラ王国から出て行きましょう。

 というか、それ以前にここはどこなのでしょうか?

 鏡に映った姿から察するに、ちょうど前回の私が聖女の力を授かった年齢くらいだと思います。

 コンコン!

 扉が小さくノックされ、静かに開きました。

 入って来たお仕着せを着た女性は、私が立っているのを見て驚いた様子で近付いて来ました。

「ルディア様、お目覚めになったのですか?どこか苦しかったり痛かったりしませんか?」

「だ、大丈夫です。あの・・・ここは?」

「ここは、ルディア様の婚約者である魔王ヴィンセント・メルキオール様の居城です。ルディア様は十日間も目覚められなくて、ヴィンセント様が城にお連れになったのです」

 はい?

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