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最終話
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私の夫、ルーカス様の願いは「私より先に生涯を終えること」だ。
彼曰く、私のいない世界で一分も生きていられない、のだそうだ。
ルーカス様は、私を心から愛してくれた。
結婚式の後、他国を一緒に旅をして、時々フロラリアや家族に会いに帰国し、また旅に出るを繰り返したけど、ルーカス様が文句を言うことは一度もなかった。
私とルーカス様の間には子供を授かることは出来なかったけど、ルーカス様は「ユースティティア様を独占出来て幸せです」と言ってくれた。
子供が出来ないことは、結婚して少し経ってから・・・気付いた。
人ではあるけど、女神でもある私は子を成すことができない、と。
別に子供が欲しかったわけではない。
だけど、ルーカス様やルーカス様のご両親に子供を孫を抱かせてあげられないのは・・・ちょっと堪えた。
そう。
そう思える程度には、私はルーカス様のことを好きになっていた。
ルーカス様達が「妹(フロラリア)の子供を抱けるから、気にしないで」と言ってくれたのも救いだった。
実際、ルーカス様のご両親は、旅をしている私よりも頻繁に、フロラリアの子供と会ったり贈り物をしたりしてくれていた。
フロラリアの子供、つまり私の甥っ子姪っ子は、第三のお祖父様お祖母様と言って、二人に懐いていた。
ちなみに第一がユースティティアの両親で、第二がエモンド様のご両親だ。
どちらも、というか孫は可愛いものらしく、贈り物があり過ぎるとフロラリアが喚いていた。
そしてエモンド様がフロラリアを宥めるというのが、日常茶飯事らしい。
フロラリアは、結婚翌年に女の子を。その三年後に男の子を。そしてその二年後に男の子を産んだ。
長女の姪っ子と長男の甥っ子は、見た目も性格もフロラリア似の、言いたいことははっきり言う、しっかり者だ。
次男の方はエモンド様似で、おっとりとしていて優しく穏やかな甥っ子だ。
甥姪というものは・・・
可愛いものだ。
「ユースティティア伯母様。伯父様を困らせていませんか?お祖父様お祖母様のためにも、もっと頻繁に戻って来て下さい。親孝行はできる時にするべきですよ」
なんて、クソ生意気なことを言ったとしても、その正論にやり込められたとしても、うん。可愛い。
自分の子供を産めないことが残念だと、寂しいと思える程度には。
ちなみに、聖女の子供が聖女になるわけではない。
聖女はあくまでも、女神が選んで力を与えるだけだ。
そのことは王家にもちゃんと伝えて、王太子殿下・・・ジュリアーノ様のお兄様である第一王子殿下が色んな対策をしていた。
災害がない国では、弱くなってしまう。
災害が起きても、被害を小さくし復興を早くできるようにすることが大事なのだ。
魔物が現れなければ、騎士団も育たない。
加護を与えることは、いいことばかりではない。
そのことを殿下はちゃんと理解して、フロラリアが亡くなる前までに地盤を固めていた。
ちなみに、ジュリアーノ様が更生施設から出てくることはなかった。
あの人らしいと言えば、らしいのかな。
ルーカス様は・・・
姪孫の顔を見た数日後に、川で溺れた子供を助けて、亡くなった。
私はルーカス様の《願い》通りに、その翌日に人としての生を終えた。
これは神様にお願いしておいたことで、フロラリアにもエモンド様にも伝えてあった。
そして現在。
私は女神として、マクシミリアン王国を見守っている。
人の愛情というものは・・・
本当に温かくて優しい。
*****end*****
彼曰く、私のいない世界で一分も生きていられない、のだそうだ。
ルーカス様は、私を心から愛してくれた。
結婚式の後、他国を一緒に旅をして、時々フロラリアや家族に会いに帰国し、また旅に出るを繰り返したけど、ルーカス様が文句を言うことは一度もなかった。
私とルーカス様の間には子供を授かることは出来なかったけど、ルーカス様は「ユースティティア様を独占出来て幸せです」と言ってくれた。
子供が出来ないことは、結婚して少し経ってから・・・気付いた。
人ではあるけど、女神でもある私は子を成すことができない、と。
別に子供が欲しかったわけではない。
だけど、ルーカス様やルーカス様のご両親に子供を孫を抱かせてあげられないのは・・・ちょっと堪えた。
そう。
そう思える程度には、私はルーカス様のことを好きになっていた。
ルーカス様達が「妹(フロラリア)の子供を抱けるから、気にしないで」と言ってくれたのも救いだった。
実際、ルーカス様のご両親は、旅をしている私よりも頻繁に、フロラリアの子供と会ったり贈り物をしたりしてくれていた。
フロラリアの子供、つまり私の甥っ子姪っ子は、第三のお祖父様お祖母様と言って、二人に懐いていた。
ちなみに第一がユースティティアの両親で、第二がエモンド様のご両親だ。
どちらも、というか孫は可愛いものらしく、贈り物があり過ぎるとフロラリアが喚いていた。
そしてエモンド様がフロラリアを宥めるというのが、日常茶飯事らしい。
フロラリアは、結婚翌年に女の子を。その三年後に男の子を。そしてその二年後に男の子を産んだ。
長女の姪っ子と長男の甥っ子は、見た目も性格もフロラリア似の、言いたいことははっきり言う、しっかり者だ。
次男の方はエモンド様似で、おっとりとしていて優しく穏やかな甥っ子だ。
甥姪というものは・・・
可愛いものだ。
「ユースティティア伯母様。伯父様を困らせていませんか?お祖父様お祖母様のためにも、もっと頻繁に戻って来て下さい。親孝行はできる時にするべきですよ」
なんて、クソ生意気なことを言ったとしても、その正論にやり込められたとしても、うん。可愛い。
自分の子供を産めないことが残念だと、寂しいと思える程度には。
ちなみに、聖女の子供が聖女になるわけではない。
聖女はあくまでも、女神が選んで力を与えるだけだ。
そのことは王家にもちゃんと伝えて、王太子殿下・・・ジュリアーノ様のお兄様である第一王子殿下が色んな対策をしていた。
災害がない国では、弱くなってしまう。
災害が起きても、被害を小さくし復興を早くできるようにすることが大事なのだ。
魔物が現れなければ、騎士団も育たない。
加護を与えることは、いいことばかりではない。
そのことを殿下はちゃんと理解して、フロラリアが亡くなる前までに地盤を固めていた。
ちなみに、ジュリアーノ様が更生施設から出てくることはなかった。
あの人らしいと言えば、らしいのかな。
ルーカス様は・・・
姪孫の顔を見た数日後に、川で溺れた子供を助けて、亡くなった。
私はルーカス様の《願い》通りに、その翌日に人としての生を終えた。
これは神様にお願いしておいたことで、フロラリアにもエモンド様にも伝えてあった。
そして現在。
私は女神として、マクシミリアン王国を見守っている。
人の愛情というものは・・・
本当に温かくて優しい。
*****end*****
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