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96.王女殿下の駆け落ち

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「お姉様っ!」

 そう言って私に抱きついてきたのは、クライゼン王国までやって来たミリア王女殿下。

 後ろにはミリア様の専属侍女と、婚約者のシェリエメール帝国の第二皇子殿下がいらっしゃる。

 びっくりしたわ。
いきなり「お姉様にお会いしに行って良いですか?」とお手紙が来るのだもの。

 公式な、王女としてクライゼン王国を訪問するわけではないにしても、他国の王族二人をお迎えするわけだもの。

 すぐに王太子殿下に許可をとったわよ。

 ちなみにその王太子殿下は、婚約者のアンブレラ王国第五王女殿下のエヴァリーナ様と仲睦まじくお茶をしてらしたわ。

 王女殿下の王太子妃教育の息抜きですって。

 仲睦まじくて、大変よろしいわ。

 そのこともあって、我が家というか私の王家からの評価はとても高いのよね。

 なんていうか・・・絶賛?

 まぁ、王太子殿下の婚約者選びには苦労していたみたいだから、あんな可愛らしくて優秀な王女殿下を紹介したのだもの、無理ないかしらね。

「お久しぶりですわ、ミリア様」

「お姉様、酷いですわ!私に何の断りもなく亡命なさるだなんて!」

「ごめんなさいね?亡命に関しては、私もお父様から突然聞かされたのよ。私はミリア様が女王になられるのなら、フローレンス女公爵としてお支えするつもりだったのだけど」

 国王陛下とウィリアム殿下がした判断が、亡命のきっかけになったのよね。

 それはミリア様もご理解されているのか、深々とため息を吐かれた。

「本当に愚かとしか言いようがありませんわ。お姉様のような素敵な方と婚約しておきながら浮気をした王太子殿下も。息子の愚かさを理解していながら、それを嗜めきれなかった国王陛下も!ですから!私もシェリエメール帝国に嫁ぎます!と書き置きして国を出て来ましたの!」

「「え?」」

 私とリュカの声が重なった。

 今ものすごく変な言葉が聞こえた気がしたけど・・・気のせいよね?

 書き置きして国を出て来たとか、冗談よね?

 視線でシェリエメール帝国の皇子殿下に問いかけると、それはそれはとても良い笑顔で・・・

 頷かれた!

 嘘でしょ。いえ、ミリア様が国を継ぐ気がないのは理解っていたけど、王女殿下の嫁入りなのよ?

 そんな駆け落ち同然みたいなことして、大事になるんじゃないの?

 クライゼン王国に迷惑かけることにならない?

 せっかく好意的に受け入れていただいているのに!

「大丈夫です!お姉様!クライゼン王国に寄っていることはバレていませんから。お姉様の元気なお姿を拝見したかっただけで、本当にシェリエメール帝国に向かうので!」

「・・・ごめんなさい。私も、ミリア様に会いたかったわ。でも、そんな駆け落ち同然みたいなことして大丈夫なの?」

「平気です。お母様の許可はいただいています。というか、お母様も後で追いかけて来ますから」

 え?
側妃様も?
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