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91.善行はしておくもの

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 私はクライゼン王国の王太子殿下、アンブレラ王国の第五王女殿下、そしてアンブレラ王国の国王陛下王妃殿下に謁見していた。

 公爵家の娘として、マデリーン王国の王太子殿下の婚約者として、王族の方々とお会いする機会はそれなりにあったから、緊張はしないけど・・・

「この度はお時間を取っていただき、ありがとうございます」

「いや、こちらこそ我が娘エヴァリーナのために良縁を繋いでいただき礼をいう。ありがとう、フローレンス公爵令嬢」

「私の方も、弟のことで迷惑をかけたのに、このような才女を紹介していただき、礼の言いようがない。本当にありがとう」

 アンブレラ王国国王陛下と、クライゼン王国王太子殿下から頭を下げられた。

 偶然サウスフォード王国王太子殿下の浮気現場を目撃し、王太子付きの近衛からアンブレラ王国側からの婚約解消をお願いされ、解消ついでに婚約者を探しているクライゼン王国の王太子殿下を紹介した。

 うん。別に頭を下げられるようなことはしていないわ。

 たまたま偶然が重なっただけだもの。

 それでも、あのままエヴァリーナ様がサウスフォードの王太子と結婚していたら、浮気者の夫に苦労しただろうし、もしかしたら国家同士の問題になったかもしれない。

 クライゼンの王太子殿下とは歳の差があるけれど、王太子殿下は誠実な方だし、今見る限りとでもお似合いだと思う。

 うん。大したことはしていないけど、いい仕事はしたわね!

「あの・・・クライゼン王国王太子殿下にお願いがございます」

「なんだろうか?私にできることなら何でも言ってもらいたい」

「フローレンス公爵家は、マデリーン王国から亡命いたしました。クライゼン王国で受け入れて下さいませんか?出来れば、男爵の爵位をいただければと・・・」

「え?亡命を?」

 そうよね。驚くわよね。
公爵家が亡命なんて、普通はあり得ないもの。

「実は、王太子殿下が私との再婚約を言い出したようなのです。ですが、私はそれをお受けするつもりはありません。王命を使われる可能性があり、両親は望んだ使用人たちを連れて亡命したそうなのです。両親と私だけなら平民でもいいのですが、使用人たちもおりますので、可能なら下位の爵位をいただければ、と」

「す、すぐに父上たちに話そう。しかし、領民はどうされたのだ?」

「フローレンス公爵家の子供は私だけなので、私が王太子殿下の婚約者となった時から、領地の分配を始めていたそうです。領民も他の公爵家や侯爵家にお願いしてあるそうです」

「クライゼン王国が無理なら、うちで引き受けよう。無理そうなら言ってくれ」

 アンブレラ王国の国王陛下の言葉に、私は深々と頭を下げた。

 やっぱり善行はしておくものね。
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