２度目の人生は好きにやらせていただきます

番外編：リセットボタン〜ユリア視点〜

　ラノベ『清廉の姫巫女』の世界に転生して、ちゃんと王太子のエリックの婚約者になって・・・

　このまま幸せになりました。めでたし、めでたし。のはずだった。

　なのに、奴隷ってどういうことよ？
悪役令嬢のアリスティアが『姫巫女2』のジークハルトと婚約って！

　絶対、あの女も転生者なんだ！
だから、断罪されるのを回避しようと動いたんだ。

　やめてよ！
悪役令嬢は悪役令嬢らしく、大人しく断罪されればいいのよ！

　だってこの世界は、ヒロインのための世界なんだから！

　なのに、結局奴隷として連行された。

　エリックは荷物運び。私は、ここにいる奴隷みんなの食事を作る係ですって。

　最初にやらされたのは、出来た料理を皿に盛って、名前の札を付ける仕事だった。

　人によって、料理の内容や量が違うのよ。肉がある人もいれば、ほとんどおかずがない人もいる。

　私は、ペアを組まされている二十歳過ぎくらいの奴隷の目を盗んで、出来た料理を口に放り込んだ。

　だって、一週間ちゃんと働いたけど、私の食事はご飯に質素なおかずだけなんだもん。

　料理の味見をするのは自然なことよね？

　なのに、すぐにバレて配膳係から下準備へと回された。

　しかも食事抜きの刑よ！
きっとあのペア組んだ女が告げ口したんだ。

　女ってすぐ、私の可愛さに嫉妬して意地悪なことをするのよね。

　だって、下準備の係から奴隷みんなが寝る部屋の掃除。トイレやお風呂、作業部屋などの掃除と次々に仕事内容がしんどくて汚いものに変わっていくのよ。

　なんか教育係だとかいうおばさんが「ちゃんと働かなきゃ、堕ちるとこまで堕とされる」とか言ってたけど、もう十分底辺じゃない！

　どうして物語のヒロインの私が、奴隷たちが使うトイレやお風呂の掃除なんかしなきゃならないのよ！

　エリックは全く役に立たない。

　配膳係から下準備に回された時、エリックに慰めてもらおうと会いに行った。

　そしたら「仕事の邪魔をしないでくれ」ですって！

　はぁ？邪魔するな？
ふざけないでよ！アンタなんか王太子じゃなきゃ何の魅力もないんだから！

　あー。『姫巫女２』のヒロインに転生出来てたら良かったのに。

　エリサはジークハルトの攻略に失敗したみたいだけど、私ならきっとジークハルトに愛されるわ。

　何の役にも立たないエリックなんかより、他の力のある奴隷に媚びて、あの教育係とやらを外してもらおう。

　そう思ったのに！

　私は奴隷の男たちの『処理係』にされた。

　媚薬を飲まされて、だんだん思考すらできなくなっていく。

　どうしてこんなことになったの？
リセットボタンを押さなくちゃ・・・